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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

恋愛占い師ルミナスの館ー変態相談者達の恋愛模様に脳が拒否反応を示している件ー

恋愛占い師ルミナスの館〜ご令嬢がドSに目覚めるのは想定外です〜

作者:

ここはルミナスの館。愛を占う恋人達のパワースポット。


今日ここに訪れたのはーーーとある、純粋で実直なご令嬢。


彼女は深い青の瞳を潤ませてこう告げた。


「婚約者に捨てられそうなんです……。でも私はあの方を愛しておりますの……! なんとかやり直せないでしょうか?」


「なるほど、婚約者に捨てられそう……何か心当たりがおありですか?」


正直よくある相談だと思う。だが侯爵ともなれば家のこともある。そう簡単に婚約解消など出来るわけがない。


「わからないんです……。最近、色々なご令嬢と2人きりでお茶をしたり、彼が他の人を口説いているという噂が回ってきたり……」


うーーーん、思ったより明確にアウトだなこれ。勘違いで誤魔化せるレベル超え始めてるね、境界線で反復横跳び決めてる感じ。


「私、怖くて彼に聞けなくて。しかも彼が『俺が他の女と懇意にしてもなんとも思わないんだな』って、凄く怖い顔で言うんです……私、もう彼の気持ちがわからなくて」


さめざめと泣くご令嬢。


いやそれただの嫉妬待ちじゃね?


わざわざそこでバラしてくると言うことは、何か反応が欲しいのだろう。自分から浮気しといてなんて面倒臭い男なんだ……!


正直やめておけと言いたい。他に男はいないのかと。


しかしここはルミナスの館。


そんなシフォンの布よりペラッペラのメンヘラクソ男が相手だろうが、相談人の恋を成就させるのが私の仕事である。


「わかりました……占ってみましょう」


水晶に魔力を込め、占術魔法を発動させる。


「ふむ……見えました。推してダメなら引いてみろ、本の知識が貴女を救う、男性の幼馴染を頼りなさい。……とのことです」


出てきたのは至極真っ当な内容だった。


おそらく幼馴染とのラブロマンス小説を読んで、それに従ってダメ男を諦めろ、そちらの方が幸せになれる。……と言ったところだろう。


「本の知識、幼馴染……! わ、わかりましたわ! 私頑張ります。ありがとうございます、ルミナス様!」


彼女は深々と頭をさげ走り去る。桃色の髪の毛がふわりと揺れ、遠くなっていく。


私は天才占い師ルミナス。この程度は朝飯前だ。


なのにーーーこめかみがズキズキと痛むのは、なんでだろう。


ーーーー2週間後ーーーー


「ルミナス様! 私、彼と仲直りできましたわ! もう2度と他の方を見ないと約束してくださったの!」


頬を赤く染め、きゃっきゃとはしゃぐご令嬢。その笑顔はまるでカーネーションの花束のように可愛らしい。


とりあえず万事解決か。幼馴染君は可哀想だし、その男で大丈夫なのか不安が残るけど。


「本を参考にと言われましたので、巷で噂のロマンス小説をメイドに借りましたの」


ご令嬢が取り出したのは一冊の文庫本。

私はそこに書かれたタイトルを見て目を見開く。


『悪女に手綱を握られてー今日から貴女は私の狗ー』


いやそれお耽美ドS女子系ティーンズラブ小説じゃん!?


えっ、それの何を参考にしたの?? そしてなに誇らしげな顔でそれを他人に見せつけてるの!?


……あかん、もう悪い予感しかしない。


「この本に他の殿方との関係を匂わせてみるといいと書いてありましたの。なので私一度彼から距離をとって、幼馴染と毎日お茶をするようにしましたわ」


うーーーん繋がっちゃったなぁ占いと!

でも多分そうじゃない気がするんだよなぁ!!


「そしたら、彼とても狼狽して『もうあの幼馴染とは会うな』とおっしゃいまして」


いや自分は好き勝手してたのにどの口で言うんだそれ? 自分のこと神棚にあげすぎでは?


「なので私、本に従って『私の愛が欲しいなら、然るべき態度をとってくださいませ』って言って去ったんです」


なるほど……その地点で相手は冷めそうだけど、そうはならなかったんだな。


案外、素直になれないだけで愛情深いやつなのか……?


「そしたら彼が、泣きながら私の足元に縋り付いて来たんです。そんな姿、私見たことなくて……驚いてしまって……その姿が、その……」


瞳を揺らし俯くご令嬢。

なるほど、つい可哀想になって許してしまったわけか。


「ーーー凄く、可愛らしくて」


待って今なんつった??


ご令嬢は顔を赤らめながら、両頬を手で包むようにしてモジモジと身をくねらせる。


「足先がビリビリと痺れるような感覚でしたわ。彼が、私を求めてくれてる。縋り付く情けない姿をみてーーーもっと、意地悪したくなってしまって」


いやダメでしょそれ!

かんっっっぜんに目覚めちゃってるよ!


えっ、あの大人しそうなご令嬢はどこに行ったの? いや占って導いた犯人私なんだけどさぁ……!


「本に書いてあるセリフが、ふと頭を過って……『私が欲しいなら、跪いて愛を誓いなさい』と、つい、言ってしまったんです」


「それで相手が跪いてきたと?」


「そうなんです!! 顔を真っ赤にして、『お前がいないと俺はもうダメなんだ、誓うから捨てないでくれお願いだ』って!」


いや完全にそいつも堕ちてるしお似合いカップルか??

いつか「堕ちたメンヘラ婚約者ー僕の居場所は貴女の足元ー」とか本出しそうなレベルじゃん……!


「ルミナス様のお陰ですわ」


嬉しそうな彼女の顔。それなのに、もう純粋な気持ちでは見られない。


ふと彼女の口元に、妖艶な笑みが宿る


「私、もっと彼と仲良くなれる気がしますの」


その声は、とても熱っぽく艶やかだった。


私は天才占い師ルミナス。……とりあえず、恋は成就したからもういいや。


ここはルミナスの館。恋を成就させる場所。


それが例え、歪んだ形であったとしても。

お読みいただきありがとうございます。


ルミナスシリーズ2作目です!

いつか長編で作品置き場になります。リアクション&ブクマいただけると励みになります。

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