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異世界恋愛+α(短編)

ヒッキー魔女の南恋物語

作者: いのりん

 南海


 日光の届く浅海に、人魚の国はあった。


 自生する七色の珊瑚、ゆらゆらたなびく海藻、群れを成し泳ぐ熱帯魚に、単独でゆっくりと泳ぐ大きな鯨。


 そんな美しい海の都から少し離れたところに、人魚族の魔女サッチーは住んでいた。



「トラフグ、イモガイ、アマモ……いい実験材料が、沢山手に入りましたね。」


 おかげで今月も赤字ですがフフフ、とにやけ笑いをする彼女は、知識欲がありすぎてちょっとアレな人魚だった。


 ちなみに彼女、少女体型でジト目でちょっとだけ口が悪くて無愛想。人付き合いの煩わしさと研究に集中したいことから、魚里から離れた場所に居を構え引きこもっている。


 しかし、彼女は天才で、様々な実験の副産物である発明品や薬の効能は本物。ゆえに来客はしばしば訪れる。そして今日の客はなんと、王女だった。


「ねぇ魔女ー!人間になる薬をだしてよー!」

「げっ!?アリエル様…」


 部屋に突撃してきたピンク髪の人魚を見て、露骨に嫌そうな顔をするサッチー。

 『おばか淫乱ピンク』の通称を持ち、様々なトラブルを起こすお騒がせ第十一王女。その悪い噂は千海里を泳いでいたのだ。


「一体全体、どうしてそんな話に……」

「きいてよ!真実の愛をみつけたの!」




 アリエルは語る。


 父、ポセイドンの神槍を持ち出して、遊び半分に立派な船を沈めてみたら、立派な装飾品を身につけた王子がその重さゆえに溺れてしまい焦ったこと。


 慌てて岸に引き上げ介抱したら、癖のある王子の顔が凄く好みで、一目で恋に落ちてしまったこと。


 目覚めた彼と目があったが、恥ずかしくて、なんだか息苦しくて慌てて海に逃げてしまったこと。


「きっと向こうも、助けてくれた私に惚れて、恩だって感じているだろうし、私が人間になって王妃になればハッピーエンドよね!」

「ひでぇマッチポンプだ……」


 息苦しいのはエラ呼吸だからだよ。だいたいアンタ、一目惚れするの何十回目だよ。と呆れるサッチーだったが、アリエルは取り合わない。何故ならアホだから。


 ありえない?

 アリエールでしょ。


「で、本当はあるんでしょう。人間になる薬……ほらほら、ちょっとドルフィンジャンプしてみなよ。」

「なんですかその不良ノリ。まあ、ありますけど…正直、お勧めはしませんよ」


 サッチーはインフォームドコンセントを行った。アホのアリエルはどうせ碌に理解できないだろうから、お供のヤドカリに書面で記録するように言い含め、念入りに。



 まず、人間になると一時的に声を失う。エラ呼吸が肺呼吸になるからだ。訓練すればおそらく話せるようにはなるが、沢山練習が必要だ。


 また、薬はとても高価である。興味本位で作ってみたが、材料費だけで魚民の年収くらいかかったからだ。


「幸い、バベルの塔の建築が中止になったお陰で人魚の国も人間の国々も言語は同じらしいですが、アリエル様筆談とかできます?あとお小遣いで薬代払えますかね?」

「文字は書けないけど、目と目で通じ合えるから問題ないわ!お金もツケで大丈夫、だって王子と結婚して王妃になれば、国庫から使い放題でしょう?」


 ダメだこいつ、早くなんとかしろ……

 そう思い護衛をみたが、さっと目を逸らされた。まあいい、インフォームドコンセントは確かに行ったからな。債務不履行なら国に薬代を請求してやる。




 そう思っていたのに。



「貴様か、娘を誑かした邪悪な魔女は!」

「げっ、ポセイドンさま……」


 翌日、アリエルの父親が乗り込んできた。

 露骨に嫌そうな顔をするサッチー。


 彼も大昔は『海神』と呼ばれる立派な王だったらしい。

 しかし、年がいってから妾の蛸との間に出来たアリエルのことを溺愛する彼は、今では立派な毒神(モンペ)だ。


 また、ゼウスと兄弟なだけあって種族を問わず手をだしては子供を作りまくる彼。国魚たちからは陰で『下半神』と呼ばれ「ヘソから下には人格がない王」としてその求心力は今やマリアナ海溝の底まで沈んでいる。


「いやいや、私はちゃんとインフォームドコンセントしましたよ。ほら書面の控えもあります。」

「アリエルたんがそんなもの理解できるはずが無かろう!貴様がしっかり止めんか!」


 ダメだこいつ、早くなんとかしろ……

 そう思い護衛をみたがさっと目を逸らされた。


「薬の製造者責任として、貴様も人間になれ!そしてアリエルたんを無事に海底まで連れ戻してこい!」


 そういうポセイドンに無理矢理残っていた薬を飲まされ、人間にされたサッチーは、通信用の魔道具と共に南海王国の浜辺に打ち捨てられた。





 人間世界をサバイブするため、サッチーはまず南海王国の社会システムについて二日ほど情報収集に努めた。

 そしてある結論に達した。



(無銭飲食で捕まろう……)



 今のサッチーの立ち位置は

 『住所不定無職の異国女。なお言葉も喋れない』

 である。


 幸い、国交はフリーで密入国にはならないようだが、自分であればこんなクレイジー案件は絶対に雇いたくない。そしてやはり雇ってもらえなかった。食事も寝床もなく限界だった。


 一方で南海王国は人権意識が先進的であり、犯罪者でも衣食住は保障される。のみならず必要に応じて就労支援まで行ってくれるという。


 

『悪即斬、ただし身内にはゲロ甘』の人魚の国とは大違いである。きっと統治者の差だ。





(う、うまっ……!2日ぶりの食事、うまっ!手がとまらない。無銭のくせに、たらふく食べてごめんね店長さん。発声できて、働けるようになったら、必ずお詫びと支払いにくるから……)



 飲食店のカウンター席でそんなことを思いながらひたすら食べていると、隣の席の客から声をかけられた。


「やあ、いい食べっぷりですねお嬢さん。顔立ちを見るに異国の人かな?この国の食べ物は気に入ってくれましたか。」


 見ると、人の良さそうな若い男性である。顔立ちは平凡だががっしりした体格に綺麗な身なりをしており、一見お金持ちのように見える。さて、声が出ないのでどう答えたものだろうか。


[失礼、もしかして耳が聞こえませんでしたか?メニューも指差しで注文していましたね。この伝え方ならわかりますか]


 驚いた。こちらが一瞬とまどったのをみて、男は瞬時に手話(ハンドサイン)で話しかけてきたのだ。


[ありがとうございます。耳は聞こえるのですが、喉に問題があって暫くの間、発声が出来ないのです。筆談ならできるのですが……ところで、手話が出来るのすごいですね。お医者さんとかですか?]


 同じく手話で質問を返すサッチーに男は一瞬驚いた表情をした後、苦笑した。その様子に一瞬違和感を覚えたサッチーだったが、それ以上に、その後の話題に興味を惹かれる。


[いえ、雨が降ると仕事にならない職業です。]



 その後、手話での会話は弾んだ。サッチーにとって男の話は知的で新鮮で面白く、また相手からしても同様だったようだ。


 なんでも男は現在、海洋調査と鉄道事業の研究開発を手がけている者らしい。現在、二つほど悩ましい出来事が重なり、気晴らしに酒でも飲もうと立ち寄った飲食店で思わぬ掘り出し物に出会えたと喜んでいる。


[暫くこの国に逗留するつもりなら、事業の臨時アドバイザーとして貴女のことをスカウトさせてくれませんか。給金は弾むし、前払いとしてここの食事代も奢らせてもらいますよ。]


 サッチーにとっては正に『渡りに船』の話だった。



 就職先の事務所はかなり大きく、泊まり込みもできるようになっていた。その一室を特別に融通してもらい、そこで寝泊まりしながら、サッチーは様々な知識を吸収していった。


 また事業メンバーが困っていたら「何とかなりますよ!」と様々な知見を筆談でアドバイスをしていくサッチー。

 

 彼女は瞬く間にチームの人気者になった。




「ノームさん、今回も本当にいい拾い物したなぁ」

「流石は『ノーム再生工場』だな」


 暫くすると、そう言われる事も増えてきた。今回も、とはどういうことか聞いてみると、サッチーをスカウトしたノームという男は、過去にも『訳ありで燻っているが実は有用な人材』を何度か発掘・スカウトしてきたことがあるらしい。


 そしてその相手にあった工夫を個別に施し、即戦力として活躍させているそうだ。


 確かに、すぐに筆談や、異国の女性職員として必要なあれこれをすぐに手配してくれたなとサッチーは思った。


(そうですか、それで手際がよかったんですね。なるほど、私以外も、へぇ、ほぉ、ふぅーん……)


 何故かちょっとモヤっとするサッチー。



「それな、しかも今回は初の女性メンバー」

「サッチーは、今では随分ノームさんに気にいられているみたいだぜ。」

「お熱いねぇ、羨ましいこった。」


 人間になって初めて成功した発声は、驚きの余り発した「えっ…!?」という言葉であった。





 さらにもう少し月日が流れた。スムーズに発声ができるようになった頃、サッチーはノームに惹かれはじめていた。


 ノームは美形とは言えないし、性格だって快活とは言い難いが、彼は知的で紳士的だった。その一方で負けず嫌いで、仕事に対して挑戦的な一面もあり、そう言った点も気に入っていた。


 仕事では思う存分研究・開発ができて、やりがいもあり自分としても楽しい。そんな訳でサッチーは、南海王国にきた当初の目的もすっかり忘れて現状を満喫していた。


 ポセイドン達から連絡用に持たされた、王家の秘宝である携帯通信魔道具も一度も使うことがなく、こんな暮らしがずっと続くといいなと思っていた。


 

 しかし……




「おい、きいたかよ。ノームさんが婚約したらしいぜ。」

「あの仕事一筋の朴念仁がなぁ……でもまあ、めでたいことだよな。祝ってやろうぜ。」


 仕事場でそんな噂を聞いて、サッチーは固まった。へぇ、ほぉ、ふぅーん……まあ、おめでたいことですよね。なんて思いながらお茶を飲もうとしたら、だばだば溢して皆に心配されてしまった。



 また、悪いことは続くもので……


 ノームは以前と比べて仕事で精彩を欠くようになった。一定の基準はクリアしているのだが、以前の超一流の働きぶりを知っているサッチーからしたら、色ボケしているように見えて面白くない。


 それで、ある日言ってしまった。


「ノームさん。仕事に私情を持ち込まないで下さい。迷惑です。」

「……っ!それは!……いや、そうだな。すまない。君のいう通りだ。申し訳ない、すこし頭を冷やしてくる……」


 ノームは一瞬、怒りの表情を見せたがすぐに冷静になり、その後とても傷ついた表情で研究室を出ていった。

 他のメンバーはあちゃーという表情をしている。サッチーには訳がわからなかった。




 そして、丁度そのタイミングで、ポセイドンから持たされていた通信用の携帯魔道具から、呼び出し音が鳴った。





 優秀なノームは、仕事仲間を萎縮させないように普段自分のことを『ノームさん』と気安く呼ばせている。

 また、サッチーにはまだ本当の身分を明かしていない。

 しかし実は彼、南海王国の王子だった。


 努力と、アイデアと、膨大なデータの活用で、今まで様々な成果を出してきたノームだったが、現在彼には二つの大きな悩みがあった。



 一つ目の悩みは、支持率や知名度で他国の王子に大きく水をあけられていることだ。


 過日、飲食店で出会ったサッチーが、異国人であるとは言え自分の顔を知らなかった時には思わず苦笑してしまった。


 この地上には12の国があり、各国の主だったニュースは定期的に世界新聞で報道される。その中で話題になるのは、殆どがセ界の盟主である巨人帝国の二人の天才王子のことであった。


 南海王国からみて東に位置する大国、巨人帝国。そこの第一王子チョウサンと、第二王子ワンチャン。


 彼らは情熱、思想、理念、頭脳、気品、優雅さ、勤勉さ、そして速さまで備えたまごう事なき英傑。

 また、既に様々な事業で成果をだしてきた人気者であり、快活なイケメンで、大有名人でもあった。


 ただ、一方のノームもまた別種の天才で、国力に劣る南海王国というハンデがあるにもかかわらず、実は同じくらいの成果をだしてきた……のだが、全然新聞で話題になってくれない!


 イケメンや快活さがないからダメなのだろうか。チョウサンが向日葵だとしたら、ノームはせいぜい月見草と言った風である。だが、それで諦めたくもない。


 王子の人気や知名度が無いとその国には優秀な人材が集まりにくい。それにやはり男たる者、他国の王子には負けたくないし、いい仕事をして歴史に名前を残したいものだ。


 以前、海洋調査中に不慮の事故で船を沈めてしまったときは、散々新聞に悪口を書かれてしまった。


 それで、挽回すべくサッチー達と頑張り、先日仕事でなかなかの成果を出した……というのに、国際新聞の一面は『チョウサン、蕎麦を食べに行き、店主と熱いそば談義を交わし、蕎麦打ちの腕前を見せてもらって感心した後、注文したのはカツ丼!』だった。これにはほとほと参ってしまった。




 そして、もう一つの悩みは


「もう、ノームったら!今日も遅かったじゃない!婚約者に寂しい思いをさせるなんて、ダメよりのダメよ!」

「アリエルさん……」


 頭ピンクのおばか婚約者についてである。


 船が沈んだ時、ノームは溺れて人魚に介抱されたことを覚えていた。それで、王宮に単身乗り込んで兵士に捕縛された女がいたという報告をうけ、見覚えのある顔を見た時、聡明なノームはある仮説を立てた。


 きっとこのピンク髪の女は元人魚だ。人間族とは交流のない、伝説の『人魚の国』で自分を助けた事が問題となり追放されたのだろう。命の恩人だし、保護しなくては。


 半分合っていて、半分外れである。ひどいマッチポンプがあった事までは、聡明なノームも想像できなかった。


 そして、王宮の一室で我儘放題を尽くし、やがて話せるようになったアリエルは「自分は命の恩人だ。結婚しろ。」と主張し始めた。


 ノームは、困ってしまった。

 彼女は恩人だし、その父親は伝説の海神でもあるので無碍には出来ない。しかし、おばかピンクは恋愛対象外だし、国母にするなど国が傾く。


 それに、じつは最近、彼は聡明で、面白くて、つえー女でもあるサッチーに心動かされはじめていた。


 それで現在はアリエルに『婚約者』という立場を与えてのらりくらりとかわしてている……だが、不誠実という自覚はあるし、どうするべきか正解がわからない。


 ちなみに惚れっぽく冷めやすいアリエルは、半月も放置すれば次の運命の相手にお熱になるのだが……


 


 アリエルをあしらった後、部屋で一人ノームは呟く。


「俺、王子やめて音楽で食っていこうかな……」


 ここで「いいんじゃないですか、ははは」と答えてくれる側近でもいればサッチーへの自作ラブソングを作るところなのだが、あいにくノームにそんな側近はおらず、そういえば音楽も苦手だった。


 そうやって落ち込むノームに、来客があった。夜遅いが緊急案件があるらしい。男は言った。


「サッチーが、大至急お伝えしたい事があると言っています。申し訳ありませんが、事務所まで来て頂けませんか?」



 この後、ノームはサッチーから衝撃的な話を聞かされることになる。


 そしてーー




 晴天。鴎が飛んでいる。


 海の上に、何かが浮かんでいる。


 長い長い、とても長いものだった。


 それは木の板の上に2本の鉄線をつけたもの。


 それは鉄道の『レール』であった。


 レールが振動する。


 海上を列車が走ってきた。


 水飛沫が上がり、通った後には虹ができる。


 その列車の前面部分には鷹の意匠。


 南海王国の紋章だった。






 この列車は現在試運転中。

 その特等席には今、二人の男女がいた。


「無事、『海列車』が完成してよかったですね」

「全部、君のおかげだよ」

「いえ、きっかけは私だったかも知れませんが、実現できたのはチームの皆で頑張ったからですよ。」


 ありがとう、と答えるノーム。

 その隣にいるのはサッチー。




 あの日、サッチーの魔道具に連絡を寄越してきたのはポセイドン……ではなく、その正妻である女神アンピトリテだった。


「夫が迷惑をかけてごめんなさい。賠償もきちんとするし、いつでも戻って来ていいからね。」


 という連絡だった。


 海のように広い慈愛の心の持ち主あるアンピトリテは長らくポセイドンの好きにさせていたが、『最近のあの人、流石に調子に乗って国魚に迷惑をかけすぎよね』と実の子供達と共にクーデターを起こし、王座を奪取したらしい。




 また、仕事仲間からノームの正体と、二つの悩み事についても聞いたサッチー。


 そこで「その婚約者、アリエルじゃん……」と気づき、自分も元人魚である事を明かした上で、真実をノームに伝え、婚約を破棄させた。


 また、アンピトリテには賠償がわりにノームの事業への若干の協力と、海の安全保証を約束してもらった。


 それから南海王国研究開発チームのみんなで頑張って実現したのが、このパリグ海域の島々を繋ぐ『海列車』である。





 ちなみ、アホのアリエルは現在、人間になる薬代や沈めた船の莫大な借金を返す為に、歓楽街に沈んでもらい「泡姫」として働かせている。


 なお、そこで大きく心身を病む事もなく、存外きちんと働けているらしい。流石は元人魚、沈んでもなんもないぜ!

 というよりは、アホで惚れっぽくて冷めやすい下半神の血がいい方向に作用しているのだろうか、アホの淫乱ピンクにも天職ってあるんだなぁ。



 なお、ポセイドンの末路としては神槍を押収された上で海溝深部の沈み込み帯に埋められた(幽閉ざまぁ)らしい。


 え…実質処刑じゃんとサッチーは思ったが、アンピトリテが言うには「いやねぇ、神だから多分()()()()わよ。相当痛くて熱い生き地獄だけど。たぶん数十万年後には反省して、発散境界からひょっこり出てくるんじゃないかしら?」とのこと。実は怒らせると一番怖いのは、この女神のようだ。



閑話休題



「これからも、研究開発チームの一員として……そして、次期王妃としても、私の事を支えてくれるかな。」

「勿論、まだまだやりたい研究も沢山ありますしね!その為には何と言っても潤沢な予算が必要です。帝国を超える勢いで、じゃんじゃんバリバリ稼ぎましょう!」



 その為に次は、通信用に持たされていた人魚の国の秘宝を、研究のために分解して……と鼻息を荒くするサッチーにノームは思う。


 次期王妃の方に反応して欲しかったんだけどなぁ。


 過日、プロポーズした時は顔を真っ赤にしてあわあわしていたのに、もうこれだよ。せっかく二人きりになれるよう手配したのに、あんまり新婚旅行って感じじゃないんだよなぁ……



 知識欲がありすぎてちょっとアレなところがある妻は、これから新聞で国母らしくないとか悪女とか、心ない悪口を書かれる事もあるかもしれない。でも自分にとっては最高の女性だ。絶対に守ってみせる。


 それに絶対に浮気の心配もないから安心して家を空けられる。仕事人間の自分にとってこれ以上の妻はいない。彼女が側にいてくれたら、いい人生を送れそうだ。


 本当はここで『愛してる』とでもいう場面なのだろう。しかし、奥手なノームはそんなキザなセリフ、とても口に出来ない。


 だから、かわりにこう言った。


「ねぇ、サッチー。できれば死ぬときは一緒に手をつないで逝きたいね。」






「えっ、嫌ですよ。何言ってるんですか、私達、まだまだこれから沢山生きて楽しくやって行くんですから。」


 それよりも、通信用魔道具がね……というサッチーに、「ウチのカミさんには敵わないなぁ」と再び苦笑するノーム




 この後、二人は海列車と共に、『愛フォン』という画期的な携帯通信魔道具までも世界中に普及させ、鷹の紋章をもつ王国が十二国の次の覇者となるのだが……


 それはもう少し未来のお話。

はい、野球界ネタです。


????さんのボヤき

「女性上位の国が栄える。夫婦というバッテリーも、奥さん主導のほうが間違いなくうまくいきますよ。」



「アンタ、私のためにさっさと次回作も書きなさいよ!」と作者の尻をたたくつもりで、ポイントや感想など頂けますと嬉しいです(*´ω`*)


6/17追記


先程、面白すぎる感想を頂いたのでアリエル関係の本文をすこし修正しました。あと、別の方から頂いた感想を参考に、じゃんじゃんバリバリ高評価を頂ける願いをこめてタイトルも修正。


素敵な感想をくださったお二方、どうもありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
う~ん、生々しい人魚国の実態。 そうだよね。あのゼウスの兄弟であるポセイドンの娘なら、こんなアッパラパーにもなるよね…。天職が見つかって良かったね、これからも人の男達をスッキリ洗浄(意味深)するお仕事…
泡姫と書いてアリエルって子供いますからね。 サッチーとノームでまさかのあの夫婦と思ったらそのとおりでなんだか嬉しかったです。
これが作者様が告知してくださった「海のお話」!ファンタジーかと思いきや(いや、ファンタジーではありますが)、こちらの想像を軽く超えてきますね、さすが! 主人公の名前がサッチー、私の中では「あのサッチー…
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