リボンを掛けた小箱
日曜の朝、ガラス窓からコツコツと音
(また司だ。垣根をくぐって来たんだな。やだなぁ。)
美咲、寝たふり
司:美咲、美咲、起きてんだろ?ちょっと話があるんだよ。ここ開けてくれよ。
美咲:・・・
司:美咲!おいってば!
美咲:うるさいなっ!今度は何!?トカゲも蜘蛛も要らないからねっ!
昨日、私のステンドグラスの箱壊したのも許してないから!
もう、話なんてしたくないし、顔も見たくない
大っ嫌い
司:え…、あ、うん、そう…。もう、二度と顔合わせなくなるけどな。
美咲:・・・ん?
司:あのさ、俺、今日引っ越すんだ。昨日は大事な箱割っちゃって、悪かったよ。
だから、これ。
司、リボンの掛かった小箱を差し出す
美咲:な、なによ。また、ビックリ箱じゃないでしょうね?
美咲、小箱を受け取る
司:美咲、あのさ、俺、ホントはさ。あのさ。
・・・・
俺も、明日からお前の顔見なくてせいせいするからよ。
ばーか。
司、隣の自宅へと走り去る
美咲、びくびくしながら箱を開ける
美咲:これ…!ガラスの天使じゃない!
しかも、歌歌ってるやつ
誰にも欲しいって言ったことなかったのに
なんで、司が?
私が欲しがってること知ってた?
偶然… だよね?
あ。(司が引っ越すと言っていたことを思い出す)
隣家から、トラックの音
美咲、窓から飛び出して隣家に向かって走る
美咲:司ー!司っ!あのっ、これありがとう。
司:クスッ、顔も見たくねーんじゃなかったっけ?
美咲:もう、ちゃかすの止めてよ。それはそれ。お礼は言うの。
司:そっか。美咲だもんな。
美咲:ねぇ、どうして、これくれたの?
私がこれ欲しいって、知ってたの?
司:知るわけないだろ、たまたまだよ、たまたま。
美咲:でも。
司:お前ってさ、キラキラしたもん好きだよな~。
箱もそうだし、ガラス細工の人形とかさ。カラスかよ。
美咲:ひどっ。
司:なぁんてな。ホントはさ。知ってた。
俺…、ずっと、お前のことばっか見てたからさ…。
お前、いっつもその人形のこと見てただろ?
ショウ・ウィンドウにへばりつくようにしてさ。
だから、好きなんだろうなって。
引っ越し記念に渡してやろうと思って。
美咲:うそ…。
司:お前さ、お前とろいから、他のやつにいじめられんなよ?
俺、いなくなるけどさ。
お前のことかまっていいのは俺だけなんだからなっ!
じゃあなっ。
美咲:あの、つ、つか…
司を乗せた車、走り去る。美咲の手には歌う天使
「つーかーさーの… ばぁ~~~~かぁ~~~~っ!!」
涙声で叫ぶ、美咲