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韓朝半島破壊

東シナ海 津島沖

大勢の陸軍精鋭部隊をのせた海軍の艦艇が、日本西端の津島に到着しようとしていた。

「まずは津島を占領して前線基地とし、日本の各都市がミサイル攻撃で混乱している間に九州に上陸。そのまま東京まで攻め上ってやるニダ」

大韓朝国を指揮する将軍は、憎い日本を征服する野望に燃えていた。

「しかし、いいニダか?北句麗国との協定では、ウリらは西日本の占領までのはずニダ」

「関係ないニダ。北句麗軍はミサイルはともかく海軍は貧弱で、とても日本海、いや東海を渡る力はないニダ。奴らが手をこまねいている間に、日本全土を大韓朝国が支配するニダ。ウリは李俊臣以来の救国の英雄になるニダよ」

そういって悦に入る将軍に、部下からの報告が入る。

「津島が見えてきたニダ。なんの警戒もしてないようで、自衛隊の姿は見えないニダ」

「よし!まずはオードブルニダ。津島を占領。日本人などいくら殺してもいいニダ。奪え!犯せ!破壊しろ!」

「おう!」

大韓朝国の兵士たちは、欲望に目をぎらつかせて津島を凝視する。

その時、何かの光が艦艇に降り注いできた。

「眩しい……なんだニダ?」

次の瞬間、ドーンという音が響き渡り、すべての艦艇のエンジンルームが爆発した。

「な、何がおこったニダ!」

「わかりません。ですが、おそらく日本の先制攻撃です。エンジンルームが撃ち抜かれました」

その報告を受けた将軍は、帽子を床にたたきつけて憤慨する。

「ニダ!日本から先制攻撃を仕掛けるとは、卑怯者め!平和憲法はどうした!戦争放棄があきれるニダ!」

日本に理不尽な怒りをぶつける将軍の元に、さらなる凶報がもたらされる。

「大変ニダ!北句麗軍が38度線を越えて、大韓朝国に攻め込んできたニダ!」

「ニダ?」

それを聞いた将軍は、真っ青になる。

「まずいニダ。陸軍のかなりの数がこの艦艇にのって、大韓朝国から離れているニダ。残っている軍では防衛できないニダ。すぐ戻るニダ!」

そう部下に命令するが、彼らは黙って首を振った。

「さっきの光でエンジンを打ちぬかれているニダ!艦艇を動かせないニダ!」

「ニダ!」

大韓朝軍は、国難の時に動くこともできなくなり、虚しく海上をさまようのだった。


いきなり戦端を開いた北句麗軍は、本土にのこっていた大韓朝軍の抵抗をうちやぶり、首都ソェルを占領した。

「ざまぁみろニダ。李大統領は東端の都市、プーサンまで逃げていったニダ。あとは少しずつ国土を蹂躙し、いずれは我が国で半島の統一を……」

長年の悲願に王手をかけるところまできて、ご機嫌な銀正怨だったが、部下の言葉に眉を顰める。

「ですが……他国はどう思うでしょうか?大韓朝国に味方して、国連軍を結成して攻めてくるかも」

「気にしなくていいニダ。この時のために、核ミサイル開発をしていたニダ。もし半島情勢に口をだすなら、核攻撃を開始するとな」

銀正怨将軍は機嫌よくつぶやく。

「今回の件で、我が国の実行力を世界中が思い知ったニダ。我らはやるときはなんでもやるのだとな。くくく、いずれは日本にも攻め込んでやるニダ。核ミサイルの抑止力があれば、やりたい放題ニダ」

そういって悦に入る銀正怨将軍だったが、そう思い通りにはいかなかった。

「大変です。我が国の核ミサイルを保有しているすべての軍事基地との連絡が途絶えました。報告によると、何か不可視の力で覆われて、出ることも入ることもできなくなったそうです」

「ニダ?」

報告を受けた銀正怨将軍は、何のことかわからなくて首をかしげるのだった。

同時刻、北句麗国の核施設の上空では、引力魔法の結界を張ることができる魔石が浮かんでいた。

「よし。これで基地を封じ込めることができたな」

結界を張った太郎は、会心の笑みを浮かべる。

「核ミサイルは確かに大きな脅威だが、発射前に基地の周囲を引力魔法の壁で覆われてしまえば、ただのガラクタに過ぎなくなる。無理に発射したら、結界内で爆発して基地ごと自滅するだけだ」

北句麗国の切り札となる核ミサイルを使用不能にした太郎は、いまいましげにつぶやく。

「戦争なんて、やりたい奴が好きなだけやっていればいいんだ。その間に俺たちは、シャングリラ王国に忠誠を誓う人間を安全に移住させよう」

部下の騎士や貴族に命じて、飢餓に瀕している貧しい農村や都市部で炊き出しをおこない、移民を募集する。

北句麗国の民を顧みないミサイル開発のせいで貧しい暮らしをしていた人民は、喜んでシャングリラ王国へのゲートを潜るのだった。


韓朝半島でおきた戦乱は、こうして膠着状態に陥る。

中華国は大韓朝国と同盟関係のユナイテッド共和国を巻き込んだ大戦争に発展することを恐れて静観を決め込み、またユナイテッド共和国は北句麗国の核ミサイルが太郎の力で無力化されたことを知って、介入に二の足を踏む。

結果、大韓朝国と北句麗国という弱小国同士の泥沼の戦が延々と続けられることになった。

日本の低市首相からは、どうすればいいかと指示を求められたが、太郎は相手にしない。

「ほっとけ。手を出すだけ無駄だ。どっちが勝とうがどうでもいいさ。ただ戦乱に巻き込まれた無力な民は、シャングリラ王国に避難させてやるけどな」

こうして、民族ごとに隔離されている島への移民だけを受けいれ、半島の騒乱については無視するのだった。

その結果、戦争で国力を消耗し、多くの国民に去られた両国は衰退の一途をたどり、相打ちの形で滅亡への道を歩んでいくのだった。

両国の末路を目の前にした各国は、『魔法』という現代文明では対抗できない力をもつシャングリラ王国に恐れを抱く。

「シャングリラ王国に手を出すと、核ミサイルを保管している基地を封鎖され、無力化させられてしまいます。そうなると、我が国の国防に大きなダメージが与えられます」

「ぐぬぬ……仕方がない。シャングリラ王国が持つ引力コントロール技術の習得はあきらめよう。下手に刺激して、韓朝半島のようなことになれば目も当てられない」

報告を受けたユナイテッド共和国の大統領は、そういってシャングリラ王国への手出しを諦める。

「では、今後のシャングリラ王国との国交はどのように樹立させるべきだね?」

「そのことですが…我が国と国交を結んでいただけるように交渉したのですが、拒否されてしまいました」

秘書官は、太郎からのメッセージを大統領に伝える。

「わがシャングリラ王国は、いかなる国とも国交を持つ気はない。なぜなら、すべての国家に対して中立のスタンスを貫くためだ。よって、我が国と交渉したいのなら、まず属国である日本を通すように」

太郎は、属国である日本以外の国交をもたない鎖国政策を宣言して、世界にはかかわらないことを表明した。

「なるほど。今後は属国である日本を通じて交渉しろと言われているわけだな。戦後70年で築いた日本の世界に対する国際的影響は大きい。自ら他国と交渉するよりも、日本を使ったほうが効率的だというわけか。わかった」

各国は、シャングリラ王国の後ろ盾を持つ日本を無碍に扱うことができなくなり、日本はこれからも世界に対して一定の影響力を維持しつづけることになるのだった。


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