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シャングリラ王国建国

リポーターは、最後の夜をタワーマンション内に作られたホテルで過ごす。そこで、太郎のハーレムメンバーと噂されている三人の女性にインタビューする機会に恵まれた。

「あなたたちは、太郎……さまに囚われて、無理やり奴隷にされてしまったんですか?」

そう聞かれた女性たちはお互いに顔を見合わせ、笑って首を振った。

「私は違いますね。自分の意思で太郎さんの愛人になったんです。その方が、面白い人生送れると思ったんで」

「ボクは……愛人枠なんだろうか?まあ、タローにぃとはもともと家族みたいなもんだし、こうなったら一生養ってもらうよ」

「囚われたって失礼ですね。私はタロウ様にシャングリラ世界から嫁いできた王妃ですわ」

それぞれ反応は違うが、共通しているのは太郎を慕っているということは伝わってきていた。

「……太郎……さまは日本国民を奴隷にすると言っていますが、今後さらに彼のハーレム入りを強要される女性が増えると思いますか?」

リポーターが一番聞きたかったことを聞くと、3人は首を横に振った。

「どうかしら。私たちだけで手いっぱいなんじゃない?」

「タローにぃは、元々モテモテハーレム作ってウハウハ人生なんてタイプじゃないしね。どっちかといえば、偽結婚式で裏切られてむしろ女嫌いの傾向があるよね」

「シャングリラ世界にいたころも、勇者としてどんなに女性に慕われていても、心を開くことはありませんでしたからね。私たちを受け容れてくれたのだって、ずいぶん優しくなったなと驚いているぐらいですわ」

それぞれの感想を聞いて、リポーターは少なくとも奴隷にされた女性がハーレム入りを強要されることはないと安心した。

「あの……この島の住人の生活を見たのですが、とても奴隷待遇とは思えなかったのですが、日本人に対してはどのような対応になるのでしょうか」

リポーターは、次に奴隷にされる日本人についてどう扱われるのかを聞いてくる。

そう問われて、3人は安心させるような笑顔を浮かべた。

「大丈夫よ。太郎さんが奴隷って言っているのは、ただケジメはつけろ、立場はわきまえろって釘を刺しているだけ。ちゃんと賃金も払われるし、強制労働を強いられるといったこともないわ」

真面目で清純そうな美女からそう言われて、テレビの前の視聴者たちもほっとする。

「タローにぃって、以前はブラック工場でこきつかわれて苦労したみたいよ。だから国民になった人の労働環境には配慮しているのよね。ボクも以前はブラック会社で苦労したなぁ。今の生活の方がよっぽど楽しいし、やりがいがあるよ」

ボーイッシュな美少女は、そういってうんうんと肯いた。

「タロウ様は民を背負う国王です。だからこそ、民が増長しないように奴隷として接する厳しい態度で臨むこともあるのです。しかしその根底にあるのは、国を愛し民を慈しむ慈愛の精神ですわ」

3人は太郎を信頼した様子で、そう告げる。それを聞いた視聴者たちは、奴隷にされても実際はひどい扱いをうけることはないとほっと胸をなでおろすのだった。

その後、シャングリラ王国への移住希望者が殺到することになる。彼らの中で金が欲しいものは新鬼ヶ島、レベルアップしたいものはリーフ島、技術を身につけたい者はケルン島、のんべんだらりと生きたい者はケモノ島、そして起業して成り上がりたい者はシャングリラ島へと移住していくのだった。


そして日本の未来を決める総選挙が行われる。

それまでの年金・公務員や会社員の給与は一応銀行口座にデータとして振り込まれているが、現金紙幣での引き出しが制限されているという異常な状況下での選挙だった。

自由民心党はあくまで日本の独立を保ち、テロリスト山田太郎と徹底抗戦を続けるという政策。

国民協和党は太郎と講和し、通貨発行権を返還してもらおうという政策だった。

自由民心党が勝利したら、今後も勝利するまでは銀行から現金の引き出しが制限されると思った国民は、国民協和党に投票する。

選挙の結果、圧倒的多数で国民協和党が勝利し、太郎との講和が結ばれることになった。

「こんなの間違っている!大和男子たちよ!目を覚ませ!太郎を倒しに戦場にいくんだ!きっと神風が吹いて日本を救ってくれる!進め日本軍!」

選挙結果が出た直後、岸本首相は発狂して訳の分からない発言を繰り返し、テレビの前で錯乱する。

その後、戦後長く日本を支配してきた自由民心党は解散し、岸本首相は精神病院に収納されるのだった。


シャングリラ王国と日本の間で結ばれた講和条約の内容は、以下の通りである。

・太郎を国王とするシャングリラ王国の成立を認め、その主権を尊重する

・本州以南の排他的経済海域のすべてをシャングリラ王国に割譲(伊豆諸島・小笠原諸島の有人島を含む)

・シャングリラ王国と日本の市民は、相互に自由な移住が許可される。

・日本はシャングリラ王国の『貴族』に対し、治外法権と不逮捕特権を認める。

・日本国内の純資産100億越えの企業、10億越えの個人に対し、その超過分の半分をシャングリラ王国に供出

・毎年1万人の30歳以下の日本の若者を「奴隷」としてシャングリラ王国に差し出すこと。その選出は日本政府の責任において行われ、シャングリラ王国側から指定された人材には拒否権ば認められない。

・日本国内のすべての産業においての特許・技術をシャングラ王国は無償使用を許可

・今後、日本の貿易はシャングリラ王国の認可の元に行われること。貿易自主権の喪失。

・シャングリラ国民の日本国内における無制限の経済活動の認可

・今後、安全保障税として年間二兆円を提供

・シャングリラ王国発行通貨『アーク』を公認し、王国が指定したレートで日本円との交換を政府が保証


いずれもシャングリラ王国に有利なものであり、この日以降、日本は王国の半属国となってその下風に立たされることになるのだった。


そして一か月後、シャングリラ王国の建国式典が開催される。同時に国王と三人の王妃との結婚式も執り行われることになり、シャングリラ島の住民たち全員参加の祭典が開催された。

「……なんだか、ちょっと信じられませんね。ただの婦人警官だった私が王妃になるなんて」

清楚なドレスに身を包んだ美香が、頬をそめながらつぶやく。

「ち、ちょっと緊張してきた。ボク、本当に王妃さまなんかになっていいんだろうか……」

文乃は緊張のあまり、ちょっと足が震えている。

「私たちは王妃として民を導くもの。萎縮していると、民たちに不安を与えてしまいますわ。お二人とも、堂々としていればいいのですわ」

元王女であるルイーゼは豪華な式典に慣れているようで、年上の二人をたしなめた。

「さあ、皆さん。行きましょう。タロウ様がお待ちになられています」

ルイーゼを先頭に、三人の美女が赤い絨毯が敷き詰められた会場を歩いていく。両側に並んだ貴族や騎士たちから、盛大な拍手が沸き起こった。

この映像はテレビとインターネット動画で世界中に放送され、全世界の注目の的となっている。

「なんか…豪華だな」

「出席者たちも、人間だけじゃなくてエルフや鬼たちもいる。多民族どころか他種族国家だな」

人間の前に公然と現れた、あきらかに人間とはちがう種族の存在を目の当りにして、世界中の視聴者たちは複雑な感情を抱くのだった。

三人が進んだ先には豪華な玉座が設けられ、そこには太郎が座っている。王妃たちがその前に跪くと、出席していた貴族や騎士たちも一斉にそれに倣った。

太郎は立ち上がり、自ら王冠を手に取って頭にのせる。

「ただいまの時刻をもって、『シャングリラ王国』の成立を宣言する」

その言葉と同時に、王妃と出席者たちが立ち上がり、一斉に胸に手を当てて宣言する。

「我らの忠誠、シャングリラ王国に捧げます」

そういって、恭しく頭を下げた。

「続いて、シャングリラ王国の国是を述べる。わが王国は、すべての虐げられし者、排除されし者、貧しき者、異端者を受け容れ、誰もが平穏に暮らせる国をめざす」

太郎の口から、シャングリラ王国はあらゆる存在を受け容れる移民国家だと宣言される。

「世界には生まれた国になじめぬ者も多いであろう。そのような者は我が国の門を叩くがよい。どのような生まれの者であれ、受けいれ守ることをここに誓おう」

静まり返っていた式場が、次の瞬間亜人族たちがあげる歓声に包まれる。

「我らが王よ!」

「我々はあなたに忠誠をつくします。共にシャングリラ王国の発展を!」

彼らは自分たちに居場所を与えてくれた、太郎王に感謝の言を捧げるのだった。

希望を感じたのは、エルフやドワーフたちだけではない。ヨーロッパの辺境国で、中国の山奥で、大西洋の海底で、テレビをみていた者たちが感動している。

「我ら吸血族も、表の世界にでていけるかもしれない」

「旧時代の血統を受け継ぐ我らドラゴニア一族も、そろそろ人間たちとの交流を再開すべきか……」

「私たちマーメイド一族も、シャングリラ王国と国交を樹立すべきかしら。タロウ様のお力を借りれば、悲願であるアトランティス島の再浮上も果たせるかも」

こうして、世界中に隠れ住む異種族たちからの移民が殺到することになるのだった。


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