ケルン島と生獣島
気を取り直して、リポーターは西のドワーフたちが住むケルン島に行く。
「あれ……ここには何もないぞ」
上陸したリポーターたちは、何もない岩だけが転がる島を見て首を傾げた。
「おおい。こっちだ」
その時、島の中央にある洞窟から、筋肉ムキムキのドワーフが出てきた。なぜかサングラスをしている。
「えっ?あなたたちは地下に住んでいるんですか?」
「そうじゃ。ワシらドワーフは視力が弱いんで、太陽の光の元だとよく見えんからのぅ」
髭もじゃで背の低いドワーフは、そういってリポーターたちを洞窟の中に招いた。
地下に作られたその都市は、まるでアリの巣のような構造になっており、ドワーフたちは地中をそのままくり抜いた部屋で生活している。
彼らが行っている仕事は、さまざまな物を生産する製造業だった。あちこちの部屋で、槌を振るう音が聞こえる。
「ここでは、何を作っているんですか?」
「主に魔力がこめられた魔道具じゃな」
案内してくれるドワーフは、そう答えた。
「魔道具って……どのようなものがあるのですか?」
「いろいろあるが……たとえばこの『オリハルコンナイフ』とかじゃな」
銀色に輝くナイフを取り出して、リポーターにみせる。美しいが何の変哲もないただのナイフだったので、リポーターは内心がっかりした。
「あの……普通のナイフとどう違うのでしょうか?」
「そうじゃな。そのナイフで壁の岩を切りつけてみればわかるぞぃ」
それを聞いて、レポーターは首をかしげながらも壁にむかってナイフを振るう。
すると、何の抵抗もなく岩が切れた。
「えっ?」
「驚いたか。モノに魔力をこめることで、本来持っている能力を数倍にまで引き上げることができるんじゃよ」
ドワーフは自慢そうに胸をそらす。
「他にも現代科学じゃ考えられない効果を持つモノを作ることもできるぞぃ」
そういうと、テーブルの上に置いてある石を持ち上げてみせる。手を離すと、石はフワフワと浮き上がった。
「こ、これは?」
「魔力を帯びた石に「反重力」の魔法を込めた『浮遊石』じゃ。わしらがいた異世界じゃ、この石で船を浮かせて世界中を渡っておったのじゃ」
ドワーフはそう言って、カメラに向けてニヤリと笑いかけた。
「ほかにも、こんなものも作れるぞ」
そういって案内されたのは、いろいろな鎧が並んでいる格納庫である。そこには、他にも奇妙なものがあり、それは金属でできた人型兵器だった。
「え?ロボット?」
「太郎様が異世界から持ち帰った伝説の防具をコピーした、携帯型変形式人型ゴーレムじゃ。魔力を動力にして動くことができる」
そういってひときわ大きいゴーレムに手を当て、魔力をチャージする。
「どうじゃ?乗ってみるか?」
「いいんですか?」
リポーターは喜んで操縦席に座る。ゴーレムから魔力の糸が出て操縦者とつながると、まるで自分の体のように何をどう動かしていいかわかった。
「ア〇ロ、行きます!」
ロゼットアニメの主人公のようなセリフを吐きながら、リポーターはゴーレムを起動させる。ゴウッという起動音を響かせながら、巨大ゴーレムは動き出した。
「すごい!すごすぎる。ロボットに乗れるなんて。子供のころの夢がかなった」
リポーターは子供のようにはしゃいでいる。見ていた視聴者たちは、心の底から羨ましくなった。
「羨ましい……」
「俺は行くぞ!リアルガン〇ムに乗れると知って、黙っていられるか」
そう思ってシャングリラ王国に行きたがる者が増えるのだった。
各島をまわったリポーターとその一行は次に生獣島にいく。彼らがそこで見たものは、モンゴルの遊牧民の住居のような丸形テントでできた集落だった。
まるで無人の町のように、しーんと静まり返っている。
「おかしいな。もう朝の10時なのに、誰も働いていない」
一応、店らしく看板を出しているテントもあるものの、中に入っても誰もでてこない。
不審に思った取材陣は、中央の役所も兼ねている領主の館らしきテントに行くことにした。
「あの……どなたかいらっしゃいませんか?」
剛かな天幕の外から何度も呼びかけると、眠そうな顔をしたネコミミを持つ獣人族の少女が出てきた。
「なんにゃ。まだ朝の10時なのに、こんな時間に来るなんて非常識ニャ。うちら獣人族は、「夜行性」ニャ。今の時間はみんな寝てるニャよ。出直してほしいニャ」
そういって奥に入っていこうとするので、リポーターは慌てて聞いた。
「えっと……何時くらいに来ればいいんでしょうか?」
「役所が開くのは夕方六時ニャ。それぐらいに来てくれたら、島を案内するニャ」
それだけいって奥にひっこんでいく。リポーターは相手にされず、仕方なく島をまわってみることにした。
「……なんていうか、変な島だな」
ケモノ島はなだらかな平原が広がっており、気候も穏やかで過ごしやすいが、生えている植物がみたこともないようなものばかりである。
真っ黒で大きな実をつけるカボチャとか、人型の植物か植えてある畑などを撮影していると、一行はまるでおとぎの国に迷い込んだような気分になるのだった。
夕方六時ごろになって、やっと住民たちが動き出す。ケモノ耳をした男女の服装は、毛皮や革製のものが多く、ワイルドな印象を視聴者に与える。
中央の領主のテントに行くと、領主であるネコミミ少女が出迎えてくれた。
「ようこそ生獣島へ。歓迎するにゃ」
ネコミミ少女は先ほどとは打って変わってハイテンションで、しっぽが楽しそうにゆらゆらと揺らめいている。
「あの……なんで昼はみんな寝ているのでしょうか」
「ここは南国にゃ。日中暑いとき働くより、涼しくなってから働いた方が楽にゃよ」
そういって、少女はリポーター一行を連れて島を案内していった。
ここの住人は農業が主な仕事らしく、島の各地に作られた畑や牧草地では多くの若者が働いている。
とはいっても住人たちは、奴隷とは思えないほど楽しそうに、仲間同士でおしゃべりしながら働いている。別に大量に収穫することを求められてはいないみたいで、のんびりと作物を収穫していた。
「この真っ黒い巨大カボチャみたいなのは、なんでしょうか?」
直径五メートルはあろうかという巨大カボチャにリポーターが近寄った時、いきなり蔓が動き出して襲い掛かってきた。
「ひえっ」
「危ないニャ!『雷撃爪』」
ネコミミ少女は装備していた爪で蔓を切り落とす。
「な、なんなんですかこれ?」
「魔物の一種『油カボチャ』ニャ。植物に擬態している魔物だから、近づいたら襲ってくるニャ。あーっ、もったいないニャ」
そういって、傷口を紐でしばる。そこからは石油のような臭いが漂ってきた。
「なんでこんなものを植えているんですか?」
「油カボチャは、大気中の二酸化炭素を吸収して体内で石油を精製して実に蓄える性質があるニャ。それを使った洗剤やせっけんなんかを作っているニャ」
そういうと、巨大カボチャの実に穴をあけてみる。中から勢いよく石油が吹き出してきた。。
「これをどんどん広めれば、地球温暖化も解決ニャ。いずれこの島の特産品にして、全世界に輸出するニャ」
ネコミミ少女は喜んでいるが、リポーターは動くカボチャを目の当りにして顔を引きつらせていた。
「この島には、他にもいろいろと面白い魔物植物を育てているニャよ」
リポーターは、少女の案内によって人型の植物が植えられている畑につれていかれる。
「……これは?」
「マンドラゴラの根ニャ。腎臓の働きを強化して、体内の毒物の排出を助ける効果があるニャ」
ネコミミ少女はしゃがみこんで、マンドラゴラを引き抜く。ギャー―――という音が響き渡り、リポーターは思わず耳を押さえた。
「ひ、ひえっ」
「大丈夫ニャ。うるさいだけだからニャ。マンドラゴラの根はポーションやエリクサーなどの回復薬の原料になるし、その葉からはあらゆる病気を治す『厄消草』がつくれるんニャよ」
ネコミミ少女はドヤ顔しているが、リポーターは目の前で引き抜かれたマンドラゴラの首ががくっと垂れるのを見て、ドン引きしていた。
一般の者はリポーターと同じように引いていたが、一部の視聴者は彼女の言葉に希望を見出す。
「万病に効く薬?もしかして、私の病も治るかも」
病気によって苦しめられている者たちは、万病に効くと聞いてシャングリラ王国を訪れることを決意するのだった。




