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新鬼ヶ島とリーフ島

取材班は、まず東側に位置する鬼族がすむ新鬼ヶ島に赴く。そこはゴツゴツした岩で出来た島で、二本の角が生えた鬼たちが住んでいた。

島の中心部に大きな鉱山があり、そこでは大勢の鬼たちが働いている。リポーターは、その中に人間が混じっていることに気づいた。

休み時間に、リポーターは働いている人間たちに話しかける。

「あの……あなたたちは奴隷にされてしまったのですか?」

「……まあ、そうだな」

「よろしければ、事情を聞かせていただけませんか?」

そう言われて、奴隷の人間たちは自分たちの事情を話す。

「なるほど。あなたたちはテロリスト太郎の元同級生で、彼に捕まってここで働かされていると」

「正確にはちょっと違うな。あの偽結婚式に参加したせいで、俺たちは日本に居場所がなくなってしまった。それで、太郎様に頼んでこの島に連れてきてもらったんだ」

そう語る同級生は、偽結婚式に参加したことを後悔しているようだった。

「……それで、鉱山で働されて、つらい思いをしているんですね」

「まあ、仕事はきついが、仕方ないだろう。太郎様に危害を加えていたことに対する罰もあるし。普通の奴隷と違って解放されるのは少し時間がかかるが、仕方がない。大人しく働いて、罪を償うさ」

そう語る彼らの表情には、自らの境遇に対するあきらめが浮かんでいた。

その時、同じ年代の少女たちが鉱山にやってきて、お弁当を広げた。

「お疲れ様。ごはん作ってきたよ」

「ああ、ありがとう」

礼をいって席にすわる。

「えっと……彼女たちは?」

「私たちも、太郎様の元同級生よ。今は反省して、奴隷としてこの島で働いているの。仕事は主に清掃や家事手伝いなどね」

リポーターの質問にそう答え、少女たちは鉱山夫となった同級生の男たちに笑いかける。

「10年働ければ平民になって自由がもらえるから、お互いに頑張ろうね」

「ああ。それまでに金を貯めておくよ。お前たちも頑張ろうな」

彼らの間には、同じ罪を背負った者としての強い連帯感が感じられるのだった。

鉱山の麓には、岩でできた家々が立ち並んでいる。町には屋台のようなものが立ち並んでおり、そこでは金製品や銀製品が売られていた。

「兄さんたち、アクセサリーを買っていかないかい?安くしとくよ」

まるで的屋のような恰好をしている、頬に傷がある鬼が声をかけてくる。他にもタコヤキや焼きそばを売る店が並び、まるでどこかの縁日が開催されているようなにぎわいっぷりだった。

「これって、本物なのですか?」

『24金製』と刻印されているうさんくさいアクセサリーを見て、リポーターがおそるおそる聞く。

「なんだい?おれっちを疑ってるのかい?」

屋台の鬼おやじがすごんでくるので、リポーターはびびってしまう。

「い、いや、そうじゃありません。買わせていただきます」

「まいどあり!」

屋台の鬼おやじは、凶悪な笑顔を浮かべて手渡してくるのだった。

「うう……こんなの偽物に決まっている。だまされたぁ」

後悔するリポーターだったが、気を取り直して中央の領主の館に向かう。

豪華な応接室に通されたリポーターが相対したのは、まるで軍人のような制服をまとっている大きな鬼だった。

「よく来てくださいました。どうぞ隅々までごらんになって、日本国民に私たちのことをお伝えください」

茨木と名乗った鬼は、丁寧なあいさつをする。見た目に反して紳士的な対応だったので、リポーターもほっとした。

「あの……ええと、太郎……様は移住者を奴隷にすると言っていましたが、具体的には何をされるんでしょうか」

「そうですね……この新鬼ヶ島に移住された方は、主に鉱山の仕事に従事していただくようになるでしょう」

茨木は質問にそう答えた。

「あの鉱山奴隷ですか……」

「ええ。太郎様に創っていただいたこの島では、金銀をはじめとするさまざまな鉱物資源に恵まれていますが、私たち鬼族だけでは手が足りないので、お手伝いしていただきたいと思っています」

茨木はそういって、にこやかな笑みを浮かべた。

「えっ?金が掘れるんですか?」

「もちろんです。町の屋台でも売られていたでしょう?

あれは掘り出した金を加工したものですよ」

そういわれて、リポーターはさっき買った金のアクセサリーを取り出してみる。よく見るとそれは美しく輝いており、ずっしりと重かった。

「もちろん、成果に応じた報酬を払わせていただきます。ふふ、一攫千金の夢をかなえるチャンスですよ」

テレビを見ていた視聴者たちは、新たなゴールドラッシュが発生すると知って目の色を変えるのだった。


リポーターは次に、南のリーフ島を取材する。ここは緑豊かな森が広がる楽園のような場所だった。

島に到着するなり、美男美女のエルフたちを見てリポーターのテンションが上がる。

「うわっ。エルフだ。本当に耳が長い」

道行く人は、白い肌のハイエルフや黒い肌のダークエルフもいるが、いずれも美しい容姿をもち、貫頭衣のような異国風の服を着ていた。

なぜか弓をもっている者も多く、町では見たこともない植物や動物の肉などが売られている。

住んでいる建物も、大きな木の幹に穴をあけて作った住居のようなものが多かった。

「今日はジャイアントボアが取れたぜ。今晩はごちそうだな」

「私はミルドワームよ。すごいでしょう」

なぜか森から戻ってきた者たちは、狩りの成果を自慢し合っている。

リポーターはおそるおそる近づくと、勇気をだして質問した。

「あの……何をやっているのでしょうか?」

「見ればわかるでしょ。私たちは冒険者よ。魔物を狩るのが仕事なの。ほら、見て。一角ウサギ」

話しかけられたハイエルフは、長い角が生えているウサギを見せて自慢した。

「こうやって森の中で狩りができるなんて、何百年ぶりだろう。故郷の世界にいたころを思い出すよ」

男のダークエルフが、しみじみとした口調でつぶやく。

「こっちの世界の動物ってあまり卵を産まないから、なかなか増えないのよね。だから狩りをしたらすぐ取りつくしちゃって困ることになるけど、太郎様のおかげでどんなに狩りをしても獲物が減らないわ」

女のハイエルフは、そういって満足の表情を浮かべた。

「……卵って?」

「ああ、太郎さまが魔物の卵を持ち込んで、放流しているの。魔物は獣みたいな姿していても、本当は昆虫類や甲殻類だから、卵をたくさん産んでどんどん増えるんだよね。だから好きなだけ狩りができるってわけ」

そういって、カメラの前でエルフスマイルを浮かべる。

「あなたがた人間も移住してきたら、私たちが先輩冒険者としてきちんと指導してあげる。魔物を倒してレベルアップしたら、どんどん強くなれるわよ」

それを見ていたオタクたちが興奮の声をあげる。

「うぉぉ。リアル冒険者キター!」

「マジか!レベルアップって……リアルゲームじゃん。俺も冒険者になりたい」

テレビを見ていた視聴者たちは、今までゲームでしかしたことがない経験ができると知って色めき立つのだった。


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