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爆撃

雷雲の中から、金色のドラゴンが現れる。ドラゴンが咆哮をあげると、稲妻が落ちて首相官邸を破壊した。

「きゃぁぁぁぁぁ」

「助けてくれ!」

雷の恐怖に、官邸にいた人々が逃げまどう。岸本首相も、我を忘れて首相官邸から逃げ出した。

「はぁ……はぁ……」

やっとのことで崩壊する建物から逃げ出して、空を見上げた首相に、ドラゴンの背に乗っている美幼女が告げる。

「あなたが内閣総理大臣とやらですね。私たちの王、タロウ様を解放しなさい」

美幼女ールイーゼは、ドラゴンの上に仁王立ちして首相に命令した。

まるで伝説に出てくる古代の天女のような荘厳な姿に、首相は恐れをなす。

「は、はい。わかりました!おい!警視庁に連絡して太郎を解放するように伝えろ!」

周囲の秘書に怒鳴り上げるが、彼らは困惑する。

「む、無理です。将軍にも警視庁長官にも連絡がつきません。さっきの落雷で、通信機器がすべて壊れたようてす」

それを聞いて、ルイーゼは不快そうに顔を顰めた。

「現代科学文明とは、なんと脆いものなのでしょう。たかが雷に打たれた程度で使えなくなるとは」

そういうと、ルイーゼは首相に興味を失ったように背を向ける。

「それならぱ、私たちの手で救出するまでですわ。ロン、行きますわよ」

「『きゅい』」

ルイーゼはロンに乗って、首相官邸から去っていく。その後ろ姿を見送った串本首相の顔に、怒りと屈辱が浮かぶ。

「こうなったら、航空自衛隊に命令して、警視庁一帯を爆撃しろ。テロリストごと怪獣たちをすべて倒すんだ」

「し、しかし、自衛隊や警官たちが……」

渋る秘書たちに、首相は癇癪をぶつける。

「うるさい!これは戦争だ。それに参加している以上、彼らも死ぬ覚悟はできているはずだ!いいからやれ!」

「は、はい」

首相の命令は速やかに伝達され、日本の各地方の基地から航空機が飛び立つのだった。



東京都の中心部から、市民がどんどん周辺部へと避難していく。

「逃げろ!」

「怪獣が来るぞ!」

川を通って徐々に警視庁に近づいてくる竜たちを見て、市民たちは怪獣映画さながらのパニックを起こして逃げ出していった。

「えっと……たしかあの会社は『アーク』を購入していなかったわね。社員たちもほとんどいなくなったみたいだし、壊しておきましょう。ネスコちゃん、お願い」

「ギョ」

川の水が大量に盛り上がり、ビルを覆っていく。

美香とネスコは、通り道にある会社を水浸しにしながら、着実に進んでいった。

同様に、文乃とトケラも土魔法でビルを倒しながら、警視庁方面に進んでいく。

それに対して、自衛隊は戦車部隊を出して怪獣を食い止めようとする。

「怪獣が来たぞ!」

「いいか!ここを破られたらテロリスト太郎が囚われている警視庁まで後がなくなってしまう。なんとしてでも食い止めるんだ!」

勇敢な自衛隊員たちは、邪悪な怪獣たちを止めるべく決死の覚悟で挑んでいく。

しかし、戦車から放たれた砲弾は三角竜が放った重力魔法によって軌道をそらされ、周りのビルを破壊してしまうだけだった。

「くっ……戦車砲が通じない……」

歯噛みする指揮官の前で、首長竜が咆哮をあげる。次の瞬間、川の水が津波のように押し寄せ、戦車部隊を押し流した。

「くそっ……これが魔法。天使さまさえ来てくれれば……」

圧倒的な力を持つ大怪獣に、隊員たちは天使に一縷の望みを託すが、彼女たちは現れない。

「こうなったら、人海戦術だ!体を張って警視庁を守れ!」

指揮官の命令に従い、隊員たちは転倒した車両からでて生身で警視庁を取り囲む。

「……困ったな。これじゃ手出しできないや」

「強引に進むと、隊員さんたちをぷちっと潰してしまいそうですね」

文乃と美香は、己の肉体で壁をつくる自衛隊員たちに困ってしまい。竜たちの動きを止めさせる。

膠着状態が続きかけたとき、ブロロロローという音が響いて、戦闘機がやってきた。

「おおっ、航空自衛隊が来てくれた!」

隊員たちは、空を見上げて歓喜するが、指揮官はそれを見て真っ青になる。

「ま、まさか、俺たちがいるのに爆撃を撃つつもりじゃ?総員退避―!」

将軍の絶叫が響き渡り、警視庁を囲んでいた隊員たちに動揺が走る。

上空の戦闘機はそんな地上部隊のことなど構わず、忠実に命令を実行しようとしていた。

「M117/750ポンド爆弾投下!目標は眼下の怪獣と警視庁を含む周辺一帯!」

スイッチが押され、爆撃が開始される。

ドーンという音が響き渡り、あたり一帯が爆煙に包まれた。


モニターでその様子を見ていた岸本総理は、狂喜の笑顔を浮かべる。

「あははははは!やったぞ!これで奴らもおしまいだ。日本の勝利だ!ニッポン万歳!」

首相官邸の庭で狂ったように万歳三唱する首相。しかし、周囲の秘書や官僚たちは顔を引きつらせていた。

「これじゃ……下にいた自衛隊員たちも、警視庁の職員たちも全滅です。誰一人として生き残れないでしょう。こんな作戦を取ったら、後から国民からどれだけ責められるか……」

「知ったことか!ぜんぶあのテロリストが悪いんだ!役立たずの兵隊どもも日本に反逆するテロリストたちも、どいつもこいつも死んでしまえ!」

もはや正気を失った顔で、ひたすら笑い続ける首相。

(もうだめだ……日本も終わりだ……)

秘書たちは、首相が正気を失い、民主主義国の指導者からすべてを力づくで解決しようとする独裁者に変貌してしまったこと悟って絶望に沈むのだった。

あたり一帯を覆った爆煙が晴れ、視界が回復してくる。

「どれ……あの怪獣どもが粉々になった所を見てやろう……え?」

爆煙の中から現れたものをみて、首相は驚愕する。それはキラキラと輝く黄金のうろこをまとった龍だった。


「もうだめだ」

爆弾が投下されるのを見て、将軍が目をつぶった時、ドーンという音が響き渡り、一瞬で稲妻が爆弾を貫く。

投下された爆弾は、次々に空中で爆発していった。

爆風が周囲一帯を覆い、自衛隊員たちは一斉になぎ倒される。周囲のビルが崩れ、自衛隊の部隊へと倒れこんできた。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」

自衛隊員は恐怖のあまり、頭を抱えてその場にうずくまった。

そのまま恐怖に震えていたが、いつまでたってもビルは落ちてこない。

「うっ……お、俺たちは助かったのか?」

起き上がった自衛隊員たちは、空を見上げて驚愕する。

爆風によって破壊されたビルの巨大な破片が降り注ぐ中、何かの力が傘のように覆いかぶさって彼らを守っていた。

上空には、黄金のうろこをまとった伝説の龍が浮かんでいる。

「自衛隊員の皆様。あなたたちは良く戦いましたわ。道を開けてください」

黄金の竜に乗った美幼女が、自衛隊員たちに告げてきた。

「そうだよ。これ以上の戦いは無意味だよ。重力シールドを張って君たちを守ったのは、ボクたちなんだよ」

三角竜に乗ったボーイッシュ美少女は、そういって停戦を進めてくる。

「日本政府は、あなたたちがいるにも関わらず爆弾を投下しました。命をかけてまで忠誠を尽くすほどの価値があるのですか?」

首長竜にのった長い髪の美女は、静かに諭してきた。

自衛隊員たちは、テロリストである彼女たちによって自分たちの命が守られたことを悟ってしまった。

「……もう、こんなのやっていられるか」

「そうだ!俺たちがいるのに爆撃しやがって。それでも自衛隊の仲間なのか!」

自衛隊員たちは、次々に装備を投げ捨てて、包囲を解いていく。

「みんな、ありがとう」

怪獣たちが進んでくるのを、隊員たちは道を開けて通す。警視庁の中にいた警官たちも、もはや抵抗しようとはしなかった。

「さあ、タロウさまを助けにいきましょう!」

三人は竜から降りると、警視庁の地下へと入っていく。地下牢を警備していた警官たちも、政府がテロリストごと自分たちまで爆撃しようとしたことを見て、黙って彼女たちを通すのだった。

うとしたことを見て、黙って彼女たちを通すのだった。

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