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東京破壊

時藤夏美は政府の出動要請に応じて、エンジェルクロノスとしてテロリストたちの掃討に当たっていた。

「あの陰キャの太郎の仲間なんて、私の手にかかればすぐに排除できるわ」

そうおもって新宿駅に到着し、好き放題暴れまわっているテロリストに相対する。

「そこまでよ!この正義の味方、エンジェルクロノスが相手だわ!」

炎を操り、銃器が通じないテロリストにほとほと手を焼いていた警官隊は、その雄姿に沸き立った。

「おお、天使さま!」

「邪悪なテロリストをやっつけてください」

自分に対する期待の言葉を聞き、クロノスは高揚する。

しかし、邪悪なテロリストは覚めた笑みを浮かべると、奇妙なペンダントをとりだした。

「『転位』」

一瞬でテロリストの姿が消え、新宿駅は静寂に包まれる。

「ふ、ふん。意気地なしね。私を恐れて逃げ出したのね」

テロリストに勝利して悦に入っていると、警官たちからも賞賛された。

「さすがです。天使様」

「あなたがいれば、日本はきっと救われます。邪悪なテロリストたちを退治してください」

自らを頼ってくる警官たちに、クロノスは任せておけと胸を叩く。

「いいわ。すべて私に任せなさい」

「さすがです。おい、ヘリコプターを回せ。つぎの現場にお連れするぞ」

こうして、クロノスはテロリストたちを駆逐するために、都内全域を引っ張りまわされることになる。

しかし、彼女と相対したテロリストたちは、無理してエンジェルクロノスと戦おうとしなかった。

「ふっ。戦わなければ、どうということもない」

そう薄ら笑いを浮かべて消えていく。彼らはこの戦いを始める前に、リーダーである土屋からクロノスへの対処法を指導されていた。

「テレビで天使たちの能力をみたが、彼女たちの中で最強なのは時藤夏美―エンジェルクロノスだろう。彼女はレア異能「時間魔法」が使えるようだ」

隊員たちに時間魔法の特性を伝える。

「時間魔法はおそらくあらゆる能力の中でも最強の部類にはいる。「時間停止」「時間逆行」「時間跳躍」など強力な効果なものばかりだ。まともに戦っても勝ち目はない」

さまざまな異能をもつ隊員たちでも、彼女に対抗できないと諭す。

「では、どうすればいいので?」

指示を求める隊員たちに、土屋は告げる。

「慌てるな。時間魔法にも弱点はある。クロノスが最強の力をもちながら、他の天使たちが太郎君と戦った後にしゃしゃり出てきたことを見ても、その弱点は明らかだ」

にやりと笑って、時間魔法の弱点を告げる。

「我々の目的は天使たちを倒すことではなく、太郎君が捕らえられている警視庁から引き離すことだ」

冷静に、この作戦行動の目的を告げる。

「よって、クロノスと当たったらすぐに「転移のペンダント」で逃げろ。それだけで、戦略的な目的は達成するだろう」

隊員たちは土屋の作戦に従い、クロノスと相対したら逃げの一手を打つ。

それによってクロノスは、テロリストが占拠した重要施設のほとんどすべてを一人で移動して対処しなくてはならなくなってしまった。

「卑怯者!逃げずに戦いなさい」

何度か目の戦いに、ついにクロノスは切れてテロリストに怒鳴り上げるが、彼らは苦笑を浮かべるだけで相手にしてくれない。

「ふっ。ならばお前から攻撃してみればどうだ」

「言われなくても!」

杖を掲げて時間魔法を放とうとするが、膨大な魔力を使うために発現に時間がかかってしまう。

テロリストたちはクロノスがてこずっている間に、余裕たっぷりに『転位のペンダント』で逃げ出していった。

「あばよ。間抜けな天使のお嬢ちゃん」

「きーーーっ!」

クロノスは地団駄を踏んて悔しがる。テロリストに翻弄され、クロノスは貴重な時間を浪費してしまうのだった。



シャングリラ島では、棋駒二尉が全体の状況を見渡して戦略を練っていた。

四つあった天使の駒のうち、三つが盤上から消え、残り一つの駒は都内のあちこちを動き回っている。

「よし。おおむね天使たちの引き付けには成功したみたいだ。次の手を打つとしよう」

棋駒は取っておいた三つの竜の駒を、それぞれ配置する。転移魔法が発動し、三体の竜が出現するのだった。

同時刻、テロリストたちの襲撃にいらいらしていた岸本首相は、さらなる報告を受ける。

「東京港沖に謎の渦巻が発生し、中から巨大な首長竜が出現しました。

「なんだと!」

ついさっきまで人間のテロリストの対処におわれていたのが、いきなり怪獣が現れて、首相はパニックになりそうになる。

慌ててモニターを付けると、巨大な首長竜とそれに乗る水着の美女の姿が映し出されていた。

首長竜は、銀色の鎧をまとった男の誘導で港湾に並び立つ倉庫のある場所に上陸する。

「来たか。水着のねーちゃん。目標とする企業の倉庫には目印をつけておいた。港湾の破壊はあんたに任せるぜ」

銀色の鎧をまとった男は倉庫群を指さす。よく見ると、倉庫から黒い影の煙が立ち上っていた。

「千儀さん。ご苦労さまでした。戻ってゆっくりお休みください」

「ああ。あとは任せたぜ」

千儀は一つ頷いて、転移のペンダントで戻っていく。残された美香は、ネスコに命令した。

「さあ、ネスコちゃん。私たちの力を見せつけてあげましょう」

「『ギョ』」

上陸した首長竜が咆哮すると、海水が盛り上がり、巨大な球体が発生する。

黒い影でマーキングされた倉庫は、海水の球体をぶつけられて流されていった。

一部を除いた倉庫群があらかた崩壊したのを見て、美香は告げる。

「ネスコちゃん。隅田川を通って進んでね。途中壊していいのは『アーク』を買ってない企業や政府の建物だけですよ」

「『ギョ』」

ネスコは、わかっているという風に頷き、東京港に流れ込んでいる川を登って警視庁を目指すのだった。


モニターを見ていた岸本首相は、破壊される倉庫群を見て顔を真っ赤にさせる。

「くそっ。なんだあの化け物は!」

歯噛みして画面を睨みつけても、遠く離れた首相官邸にいては何も手出しできない。

「首相、いかがいたしましょうか?」

秘書がおそるおそる指示を求めてきて、首相は怒鳴り上げた。

「自衛隊に対処させろ!」

「ですが……都内の部隊は警視庁防衛のために集結しておりますので」

「ぐぬぬぬ……」

首相が手をこまねいていると、さらなる報告がもたらされる。

「明治神宮がある代々木公園に地割れが発生し、中から恐竜が出てきました。警視庁方面に向かって一目散に進んでいます」

モニターが切り替わる。画面に映ったのは、巨大なトリケラトプスだった。

トリケラトプスは神宮を破壊すると、代々木公園を出て北東に向かう。

「うわぁぁぁぁぁぁ!怪獣だ!」

それをみた人々は、一目散に逃げだしていくのだった。

「えっと、トケラ君。なるべく河川を通ってね。一般の人の住宅をこわさないようにね」

「『グル』」

背中に乗っているボーイッシュ美少女ー文乃の言葉に、トリケラトプスは頷いた。

「くっ。一体何が起こっているんだ!」

そう叫んだ串本首相の耳に、ドーンという雷鳴が響き渡る。

「な、なんだ。さっきまで晴れていたのに……」

空を見上げた首相がみたものは、いきなり発生した黒い雷雲だった。


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