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ほうれんそう会で煮詰まる

 土曜の会合が無駄な時間でしか無かったのは、ハーニバルさんだけだったぽい。


「全く。世話になってるトーゲンに余計な事を考えずに青春出来る時間を与えてあげたかったのに、青春出来たのがいつでも充足なアダムだけだったとは!!」


 彼はそう吐き捨てて帰って行った、らしい。

 最初から誰も呼んでないのに、と言うと、宗近がそんな私を酷い奴と罵った。

 ハーニバルは冬弦を襲いに来るだろう冬弦の兄弟を警戒していた、と宗近は言うのである。

 もしも襲いに来たならば、発見次第彼が自分で片付け、冬弦には羽を伸ばせる休日をプレゼントしたかったらしいのだと。


 会合の翌日、私達兄妹と春桃に宗近といういつもの四人は我が家に集まり、そこで宗近がハーニバルについて語ったことによると、そういうことだ。

 私は聞いてすぐに思った事を、そのまま口に出していた。


「人間味があったとは」


「酷いな、海宇は。だが、その通りだ。ハーさんは襲来がクドアだけだったことにこの上なく不満を抱かれ、お怒りで帰られた。彼としては三番目の王女様と遊びたかったらしい」


「三番目のお姫様は綺麗な方なの?」


「モマ族。一反木綿妖怪そのまんま。乗って遊びたかったらしいね」


「ハーニバルの人でなしぶりに、なんだかホッとしたよ」


「ハハハ。人でなしだから冬弦さんはハーニバルさんが好きなのかな。あの人は気を使い過ぎるから、気を使わなくて済む相手が好きなのかもね」


 昨日の会合どころかそもそもの原因だった男が、気楽な識者のコメントみたいな物言いをしてきた。

 その気楽さは、冬弦に謝罪できて心配ごとが消え去ったからであろうか。


「そうなの?気を使いまくりしなきゃな、繊細で奥ゆかしい美少女が、彼の理想みたいでしょ?」


「そうかな?実は海宇の方こそ気に入ってるっぽいよ」


「私は気を使わなくていい相手だからってことか?小学生とか言われたし!!」


「ハハハ。枕をぶつけられたって喜んでたね」


「やっぱ小学生だって、くそ喜んでたよ」


 アダムは冬弦に枕をぶつけた私を目にしたからか、私達の邪魔だった冬弦を怒らずに、君のお陰で助かった、と言って冬弦を労ったのだ。

 その上、愛するとか言っていたはず私を放って、冬弦こそ愛する人みたいな仲睦まじさで二人仲良く帰って行ったのである。


 ホテルに私をおきっぱで?


 アダムは冬弦が言う通りに私が小学生並みだと気が付いて、それで私への気持が冷めてしまったのだろうか。


「小学生だったら気を使わなくて済む気楽さはあるって?むかつく」


 傷つけないように別れの言葉を考えたり、そういう場面を作ったり。

 そんな事をしないで、さようなら、で済ませてしまえる、と?


「海宇は大体許すだろ?だから君にホッとできるんだよ」


 私の兄をして長い人は、私の気分を良くして私を黙らせる一言を良くご存じだ。

 だが、今日の私は黙ったが気分は良くなってはいない。


 私が許すと思っているから、アダムは私に、またね、だったのだろうかって、アダムについてさらにむかむかが増したからだ。


 約束も無いがお別れでもない、公園で解散する子供の挨拶みたいな、またね。

 好きな子と別れる時に、それ?


「春桃、イチゴとココアのマーブルシフォンにしたんだけど、どうかな?」


「兄よ。妹の私が落ち込んでるっぽいとわかってそれか?」


「僕はもっと落ち込んでいる子を大事にしなきゃなんだよ」


「うわあ、トモったら優しい~。それははるもが食べたい言ったから焼いてくれたんだよね?トモトモ大好きだよ~」


「僕は君にはこれぐらいしか出来ないからね」


「嬉しい~」


 春桃はキラキラの笑顔を舳宇に向けながら、舳宇が朝から台所に籠っていた理由のひと切れが乗った皿を受け取った。

 ピンクとバニラとチョコの三色がマーブル模様になったケーキの断面は可愛らしく、私は兄によって台所に拉致られていた宗近に親指を立てた。


 兄への二分訂正魔法をどうも、ってやつ。


 宗近は私に笑って返す。

 それだけでなく、彼は私に雑誌らしきものが入っている袋を差し出した。


 何だろうと受け取ると、袋の中身を私が取り出す前に舳宇が袋ごと奪ってしまったではないか。

 わお、袋を抱え込んじゃった兄の顔は真っ赤だ。


「宗近!妹に変なものを渡すなよ!!」


「凄いな。破邪の眼は袋の中身まで透視できたのか。だっけどねえ、小学生な海宇にはちょっと性教育って必要だと思うよ?舳宇お兄さん」


「いいの!!海宇はこのまんまでいいんだよ!!」


「でもぉ~、トモ。知らなすぎると流されちゃうって、はるものママは言うなあ~。大体さあ、ミウやトモトモが相思相愛になった相手に初めてをあげちゃうと、相手が人間になってしまう呪いがあるんでしょう?そこだけはミウに教えなきゃとはるもは思うの」


「ちょ、春桃!!言っちゃってるって!!み、海宇、忘れてって。わあ、完全に石化しちゃったじゃないか」


 石化ぐらいするよ。

 春桃が投下したのは、物凄い爆弾だった。

 それでもって、冬弦が言った、完全なる無力化、とは、妖精が無力な人間になるという事だったのか。


「うわあ!!私はアダムと別れるしか無いってこと?」

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