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ゲーム参加者を決めましょう

 体の前面を何かに弾かれたが、私は後ろに倒れはしなかった。

 まるで少女漫画の主人公のようにして、筋肉質で背が高い男性の腕に抱き留められているのである。

 驚いたようにして目を丸くして私を見下ろすその青年の瞳は、ファイヤーオパールのような不思議な色合いである。


 こんな目立つ人いたっけ?

 あ、敵側?

 私は慌てて彼の腕から逃げ出す。

 すると彼も動いて、私こそ逃げようとする意志を失った。

 赤毛の男はまるで騎士が姫をエスコートするようにして、私を丁寧に立たせ直してから、自分の腕から私をそっと解き放ったのである。


 私の周りには、私に頼りっぱなしの舳宇や、ふざけっぱなしの宗近しかいない。

 こんな扱いを男性から受けたのは初めてで、だからこそ新鮮で感動もので、私の頭は少々ぽわっとしていた。


「えっと、感謝します」


「い、いいや。あの、どうして君がここに?」


 どうして君がここに?

 どういう意味だと彼を見返す。


「能渡井は四人目だ。堂上。戦えない彼を守っての戦いになるが大丈夫か?」


「ふざ、ふざけんな!!勝手に数に入れるな!!」


 私の声は男の子の演技も忘れて物凄く裏返っていたが、狛犬は私を嗤うどころか私をさらにドツボに嵌める言葉を返して来た。


「第六皇子のミューゲルは侮辱した人間を絶対に許さない。代表戦という戦いの選抜者に卑怯行為は出来はしない。君は私を助けるつもりで毒蛇の巣に手を突っ込んでしまったんだ。戦えないのは知っている。守るから安心してくれ」


 くそう、ぐらっと来た。

 狛犬は我が兄とその親友と比べると、実に上等な人間である。

 これが王子の実力か。


「俺の背中に隠れていれば大丈夫ですよ」


「え?」


 滑らかで素晴らしい低い声に、私は再び狛犬に堂上と呼ばれた赤毛の男を見返した。すると彼は自分の胸に右手を当て、そっと私に頭を下げて囁いてきたではないか。うっとりとするような見事な声で!!


「命を掛けて守りましょう。俺はアダム・堂上。王子の右腕です」


「ハハハ。じゃあ僕は左腕かな」


 横から低すぎず高すぎない、まるで風の精霊が出すような声が聞こえた。

 私は堂上の声に篭絡されかかっていたので、新たに聞こえたその声へと助かったと思いながら振り返った。


 そして息を飲んだ。


 膝がガクッと崩れそうになった。

 王子よりも王子様な外見と言える、金髪碧眼の美少年がいたのである。


 美少年とは失礼か。

 身長は宗近と同じぐらいな人なのだから。

 いや、だったらやっぱり美少年でいいのかな。


 私は宗近を見返す。

 すると、ほんの数分前までは物凄いイケメンでもあった彼が、物凄く気安い顔立ちにしか見えなくなっている自分に気が付いた。


 だってほら見てごらん、新登場のあの美少年を。

 アンティックゴールドの髪に純金の台座に埋め込まれたサファイヤのような瞳を持つ彼は、天使か悪魔かというぐらいの美しさでは無いか。


「舳宇。どうした驚いた顔をして。生徒会の書記の堂上と副会長のレイ・ハーニバルだろ?」


 私を義兄弟認定している狛犬が当たり前のようにして呼び捨ての上気安く言い放ったが、今日初めてこの学校な私が生徒会役員なんか知るわけないよ。

 だけどそんなことは言えないので、アダムを見た時に思った事を狛犬に言った。


「校庭で二人の姿が見えなかったから、どうしてかなって」


 狛犬は、そんなの、と言って笑った。

 主戦力は隠しているものだよ?

 私は乾いた笑い声をあげていた。

 狛犬もそれほど正々堂々では無かったみたいだ。


「で、冬弦。五人目はどうする?」


 堂上は真面目な人らしい。

 大事な事という風に狛犬に尋ねた。


「嫌だが、バーミスを呼ぶか」


「は~い、はいはい。俺が参戦します!数合わせなら俺でいいでしょう!」


 なんと、狛犬が別名を言ったにも関わらず、宗近が手を上げたのだ。

 もちろん狛犬が呼びたかったバーミスは戦闘力の高い人に違いないと思うが、なぜか堂上も美少年も宗近についた。


「俺が盾になったその間に能渡井を逃がす奴が必要だ。兵庫ならば足も速いし場を読む力もあるだろう」


「かくれんぼも上手そうだからいいんじゃない?」


「だが、それではお前達に負担が――」

「お前が王になれば、俺が守るのは百人どころじゃないだろ?」


「堂上の言う通り。バーミスは今度でいいじゃないですか。今日は体調悪くてお休みなんだし、今日ぐらいはさ」


 堂上と美少年のやり取りを見る限り、彼らこそバーミスとやらを呼びたくないらしい。

 私は立候補した宗近の理由もそれなのかと考え彼を見返すと、私の真横に来ていた宗近はニカッと笑って私の肩に右腕をかけた。


「俺が舳宇から離れるわけ無いっしょ、ねえ、舳宇?」


「審判になりたかったんじゃないの?」


「それどころじゃなくなったからさ。それとも君は俺不在で怖いお兄さん達と一緒の方が良かったかな?バーミスは中年の体育教師だよ?堂上先輩が可愛く見えるぐらいの超ゴリラ」


 私は宗近の背中に腕を回していた。

 やばい状況に一人は怖い。


「ありがと」


「いいよ、海宇の為だ」

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