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告白

 私の気持は少々上向いていた。

 アダムに足を抱えられて不格好な状態だが、その理由が私の重い拳をアダムが二度と受けたく無いからなんて言われたのだ。


 嬉しくないはずがない。

 効いてたんだ、私の拳。


「へへん」


「嬉しそうだな。俺を痛めつけるのがそんなに好きか?」


「とりあえず、私の方が痛めつけられている。右手首がまだすごく痛いもの」


 私の足からアダムの左手は消えた。

 その代わりに私の右手がアダムの両手に包まれている。


「ああ可哀想に。今すぐに病院に行こう。すぐに車を呼んで――って、痛!!」


 私の右手の為に屈んだ男に頭突きをしてやったのだ。

 ただし、やっぱり私の頭の方が痛い、気がする。


「――うう~石頭~」


「何をやってるの!」


「だってぜんぜん告白が出来る状態じゃないもの。私は本気で悩んでるのに。私とあなたが契約状態で、だからあなたが私に優しくて、執着してるって状態なら、あなたを解放してあげなきゃなのにできないから!!ってきゃあ!」


 私の右手はアダムからぱっと解放されたが、私自身が完全にアダムの虜となってしまった。

 アダムは自分に私を押し付けるようにして、私をきつく抱きしめているのだ。


「それ程に俺に執着してくれてありがとう」


「そうじゃなくて、その今のあなたが偽物だってことに私は悩んでいるのよ」


「俺の気持は偽物じゃないよ」


「気持どころか生き方が違うでしょ?あなたはあの美女二人とベッドに行ける人だったのでしょう!それが、私が契約という呪をかけちゃったことで、私に執着する事になったのよ。これはおかしいことでしょう」


「君と出会う前の事はノーカンだろ?今は君だけなんだから心配するな」


「そうじゃなくて、そう考えるあなたが、契約によって作られたあなただって言っているの。私はそんな状態のあなたに好かれているのは嫌なのよ!!」


 私はどこかで爆発が起きた気がした。

 そのぐらいに大きな笑い声がアダムから弾けたのだ。

 私をその力強い両腕で絞め殺す勢いで抱きしめながら、彼は私の鼓膜が破れるぐらいの大笑いをしているのである。


「アダム?」


「ハハハ。ああ、笑い死にしそうだ。幸せで」


「何があなたをそんなに幸せにしたの?」


「君の言葉だよ、もちろん。君は何の影響もない状態の俺に好かれていないから嫌だって言っているんだ。契約のせいで私を好きなのは嫌?アハハ。なんて君は可愛いんだろう」


 私はアダムの腕から逃れるよりも、アダムの胸に顔を埋めて、自分の失言から逃れる方を選んだ。

 私が言った言葉って、まさにアダムが言った通りじゃ無いの!!


「可愛い君。俺が君を好きになったのは、君が俺を騎士だと褒めた時だよ。俺はあの一瞬で君の為に君の騎士になろうと誓ったんだ」


 私の背中に回されているアダムの手は、私を宥めるように私を撫でた。

 優しさが私を追い詰めているとは知らないで。


「だから、君が俺の気持を疑う必要はない。俺の気持は契約前からだ」


「うわあああああああ」


 私は自分の耳を塞いで大声をあげていた。

 アダムが私を好きになったのが契約前か後かなんて、私にはもうどうでもよくなっていたのだ。

 私がアダムに言っちゃったことこそ問題だ。


 私、アダムのこと好き過ぎじゃない?


 私の両手首はアダムの両手にそっと捕まれ、アダムは私を覗き込みながら私の耳から邪魔な私の両手を外す。

 彼の微笑みを私に見せつけ、彼の温かで甘い声を私に聞かせるために。


「うう」


「海宇、どうした?そんなに気になるなら契約を解除しよう。その上で俺は君に告白をするよ。俺は君を追い詰めたいわけじゃないんだ」


「追い詰めてるよ」


「俺の気持が重荷だって事か?」


「ちがう!!解除方法が問題なの」


「いくらでも君の為に身を切るよ」


「それは分かり過ぎている。問題は私自身なの」


「君が怪我をするような解除方法ならば、俺は一生この状態で構わない。契約前から君が好きなんだ。自分の気持に変化は無いからね」


 私はアダムにしがみ付く。

 誠実すぎる人にこのまましがみ付いていいの?

 そうじゃない。

 私はやっぱり嫌なのだ。


「海宇?いいんだよ、俺は」


「よくないよ。このままだったら私はあなたの気持を疑うばっかりじゃない。だけど、契約解除であなたから気持が消えた後も怖い」


 ファーストキスを与えた瞬間に失恋する可能性、それはって、やっぱ好きなんじゃ無いの、私は!!


「って、また笑う!!」


「笑うだろ?純粋に俺をこんなに求めてくれる子は初めてだ。大体は俺の外見と俺の後ろに見える俺の家の金目当てだろ?」


「そんなの当たり前じゃ無いの?」


 あ、アダムが人生が壊れちゃったような顔をした。

 こっちこそ何を言っちゃってるの?という感じだ。


「家がお金持ちはどうでも、アダムの外見はピカピカ光っているんだよ?あなたと付き合いたいって人達の気持はわかるよ」


「――君も?」


「うん。私もそうだな。春桃は出会った中で一番可愛い女の子でさ、何でも我儘を聞いてやりたくなるんだ。でね、あいつの家は大金持ちだからさ、少々春桃が面倒になっても見返りあるならいいかなって、そんな下心や打算もある。あいつの親父が学費持つからって泣いて頼みこんできたからさ、私は春桃と同じお嬢様校に行ってるんだし。私もアダムが出会って来た女達と同じじゃない?」


 あ、アダムの目線はがっかりしたようなものではなくなっている。

 ただし、困った後輩に向ける先輩の眼つきに変わっていた。

 アダムは、呆れたように鼻で笑うと、普通にしか聞こえない声を出した。


「話し合おうか?」


「ここじゃない方がいい。いいかな?」


「いいよ。こっちの方が君が安全だと思ったんだけどね」


 え?

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