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君と話がしたかった

 私達を狙う虫型自動殺戮兵器(チィアート)は、あと二群体校内にいる。


 私は自分の手の中にある校内見取り図を見返した。

 校内見取り図には、冬弦の手で書き込まれている印がいくつかある。

 私とアダムが校庭や保健室で手間取っている間に、バグを始末するために仕掛けていたという罠の位置である。


 ただし印には二色で色分けがしてあった。

 科学部である宗近の部がある化学室に、地下のボイラー室、屋上プールは青、それから、職員室と校長室と、ええと、サッカー部部室?が赤だ。


「冬弦さん、あんな短時間でかなりの罠を仕掛けましたね」


「赤は積極的に壊してもいい場所で、青はセーフティともなる場所だよ。せっかくだ。日頃破壊したいと思ってる居場所で暴れるのはどうかなと思ってね」


「部室壊されたらサッカー部の人が可哀想じゃ無いですか!!」


「サッカーは何もない所でもできるスポーツとして広まったのだ。平気だろう」


「え?普通にリア充に見える冬弦さんが、どうしてそんなサッカー部を目の敵にしているんですか?」


「二度ほど県大会でいい所に行ったからね。そろそろ鼻っ柱を折っとくべきでしょ。人生は順風満帆じゃないって、早いうちに教えるべきだってこと」


「レイさん。ものすごくよい笑顔で人でなしな事を言わないでください」


「トモ。調子に乗った十代は、まず何をすると思う?」


「え?」


「まず、合コンだ」


「ご、合コンぐらい?」


 ハーニバルはそこで狂暴な表情を見せた。

 彼にぞっとする私をさらに煽るようにハーニバルは右手を上げ、一本ずつ指を折りながら、サッカー部を破壊するべき理由を上げていく。


「深夜徘徊、飲酒、騒乱、不純異性交遊、そして、そんなことに至りたいばかりに、まず俺への呼び出しだ。いい加減にうんざりだね」


「え?」


「我がサッカー部メンバーはラトランス族、つまりコヨーテの精の血を引く者達で占められている。よって、チームプレーは最高だが突出したスターはいない。そこで華があるハーニバルを餌に合コンを持ち掛けているのだな」


「えっと、つまり、サッカー部部室破壊は、ハーニバルさんの意向だと」


「その通りだ。私は友を大事にする」


「はい、はい!先輩!!でしたらテニス部コートもお願いします」


「兵庫、あそこは金がかかっているから却下だ。だが、君の大事な化学室にボールを叩きこんだ、ミゼラ・保津については後日私から言い聞かせをしよう。それで良いかな」


 宗近は冬弦に対して、胸に右手を当てるという、忠誠を誓う風にも見えるポーズをした。

 良いのか?生徒会長が私怨ばかりで動いても?


「では、動こう。舳宇。音楽室に私と行こうか?」


 私は再び校内の見取り図を見返す。

 やはり、音楽室には何のマークも無い。


「あの?」

「行こう」


 すでに冬弦は立ち上がっており、私もしぶしぶと立ち上がる。

 冬弦の手には校庭で持っていたあの白木の杖が握られているのだから、自分の身も大丈夫なはずだと自分に言い聞かせる。


 特別室の扉を開けると、食堂はバターの香ばしい匂いで満ち溢れていた。

 アダムが厨房でシュークリームの皮を作っているから、それでなのだろう。


「アダムさんに行ってきますってして良いですか?」


「君は、アダムアダム、だな」


 冬弦は気分を害したという風に歩き出し、私は足の速い彼の後姿を早足で追いかけるしかなくなった。


「その言い方はやめてくれます?」


「仕方がないであろう。音楽室など単なる口実だ。部屋を出てほんの少しだけでも君と二人で話しがしたかっただけだ」


「あの、それこそ全部終わった後で良いのでは?」


「全部終わった時に君が残っているとは限らん」


「僕を守るどうした!」


「君こそ私ではなくアダムに守られたいのではないのか?いつだって君はアダムの胸に飛び込んで行こうとしている。君は私など全く眼中外だ」


「飛び込むのは胸じゃなく、懐にして下さい」


「すまない。私は自分の胸に飛び込んできた彼女のイメージが忘れられない」


「ほう」


 私の口からは不穏な低い声が出ていた。

 舳宇め、一体どこまで海宇として冬弦に媚を売ったのだ?と、舳宇への暗い気持ちが溢れてしまったからである。


「そこだ。私はだからこそ君に認めて欲しと思っている」


「男尊女卑ですか?僕の許可が無ければ妹と付き合え無いだなんて。いや、絶対にお断りを妹が出来ないように、まず僕に、ですか」


「違うぞ!私を見損なうな!恋をした相手の家族と親しくなりたいのは間違っているのか?純粋に君と友人となりたかっただけだ」


「申し訳ありません」


「わかってくれればいい。私と海宇が盛り上がったために子供が出来た時など、君が応援してくれる友達であれば心強いからな」


「応援するか!!心折れろ!!どこまで海宇と突き進むつもりだ!!」


「君はそこにいたのか!!」


 私の出した大声に答えたアダムの台詞、それはアダムの所に偽物の私がいるという事に違いない。

 私と冬弦は、脊髄反射のようにして方向転換して駆け出した。

 アダムのいる厨房へと。

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