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食事会は親睦会でもある

 食堂の特別室。

 堂上を除いた私達四人はここで円卓を囲み、第六王子という虫の化け物に対抗するための話合いをしているはずだった。

 しかし、円卓上に残飯風だが料理が乗った大皿が乗っているので、当たり前のように昼食会へと変移していた。


「不味かったら残していいんだよ」


 私の目の間に取り皿が差しだされた。

 差し出しているのは、これ以上ないぐらい不機嫌そうな狛犬だ。

 適当に大皿に盛りつけられて残飯風となっているが、ひとつひとつを見ればつけられた焼き色なども食欲をそそるものだ。


 つまり、狛犬としては自分が繊細な感覚で調理したものを適当なハーニバルの盛り付けによって台無しにされた挙句、調理方法に文句を付けられているという状態なのだ。

 この現状で文句を言える正当者は、恐らくも何も狛犬だけな気がする。


 私はハーニバルにコンフィを咥えさせられたことで文句を言えるが、人を簡単に窒息させることができる風妖精系の人には怖くて何も言えない。

 それに、コンフィという油で煮込むようにして低温過熱して作り上げる料理にさらに油を足したと、ハーニバルが狛犬を罵りたくなる気持ちもわかるのだ。


 すでに丁度良い味が付いているものに、余計な風味を付けたと言いたい気持ち。

 だがしかし、私は肉料理は温かい方が好きだ。


「私は厨房に立つのは慣れていないんだ。無理して喰う必要はないぞ」


「ま、不味くは無いですよ。飯はほかほかの方が嬉しいものですし」


「そうか」


 私の前から狛犬は取り皿を引いた。

 食べ終わったコンフィの骨を置く皿が欲しいんだけど?

 あ、もしかして、気に入ったならば骨まで喰えと言うことか?

 それでわざわざハーニバルは狛犬をディスっていたのか?

 骨を残せるために!!


「なんだか。アダムが頑張る気持ちが分かったな。確かに。あいつが言う通りに舳宇は良い子だ」


 私の杞憂でしか無かったようだ。

 狛犬は私が考えるよりも優しかったようである。

 ツンデレなだけなのかもしれないか。

 なんと、取り皿に大皿の食料を取り分け始めたではないか。

 確実にそれは私の為の行為である。


「あ、トーゲン先輩。俺は赤ピーマン嫌いです。普通のピーマンにして下さい」


 宗近!!

 相手は生徒会長では無かったのか?

 しかし、狛犬は宗近を叱るどころか、私用に盛っていたものを宗近仕様にして宗近に手渡した。

 赤ピーマンが消えた代わりにプチトマトが添えられている!!

 お母さんか?

 この優しさが支持率百に近い生徒会長の真髄なのか?


「普通は逆じゃないか?兵庫」


「あれは腹に溜まって肉を喰う邪魔になるので。あざすです」


 狛犬は宗近に皿を渡すと、私に顔を向けた。

 偉そうに少々顎を上げている。


「なんて優しい先輩だろう。だろ?私が怖くなくなっただろ?舳宇」


「狛犬先輩、台無しです。それで、堂上先輩はどうしたのですか?」


「舳宇はアダムの心配だけか」


「うっせえよ。人に化ける虫がいるんだ。恩人を心配してどこ悪いよ。で、どこにいんだよ。僕が今すぐ安全を確にん――」


 椅子から立ち上がろうとした私だが、私の隣に座っている宗近によって左側から強くぐいっと引っ張られ、私は言葉も行動も尻切れとなった。

 私は自分の邪魔をした宗近を睨む。


「乱暴だな。キャラ変なんか言ってる場合じゃないだろ?」


「アダモっちゃんは、フォンダンショコラを焼きに行ってんの。君は焼き立てのフォンダンショコラを食べたくないの?邪魔すんなって」


 私は狛犬に顔を向けた。

 狛犬は、そうだ、という風に頭を上下させた。


「それで四十五分?狛犬先輩はフォンダンショコラがお好きなんですか?」


「冬弦でいい。それからな、フォンダンショコラは、君の為に、だそうだ。こんな残飯じゃ君は口にできずに餓死してしまうだろうってね」


「冬弦先輩。僕は今すぐ厨房に行ってきます」


「やはり、私の飯は不味かったか?」


「いえ。チョコスフレに変更してって言いに行こうかと」


「君は鬼か?恩人どうした」


「ですので恩返し。僕が好きなものを作れた方が堂上先輩も嬉しいでしょ。僕は半生系ケーキは好みじゃないんですよね。じゃあ行ってきま――」


 私はやっぱり宗近に引き戻された。

 狛犬はその追い打ちのようにして私の前に取り皿を差し出す。

 黙って喰え、という威圧感を醸し出しながら。

 私は恐る恐ると狛犬から皿を受け取る。


「あ、あざす」


「チョコスフレは私が今度奢る。私が君のフォンダンショコラを食べるから、アダムを虐めないでくれないか?あいつは私の親友なんだ」


「そうだよ、トモ君。何もしない人が人の料理にケチをつけるのはとってもやってはいけないマナー違反だ。わかるかな?」


 散々人の飯に文句をつけていた金色の人に言い聞かされるとは!!

 私はやはり四面楚歌な状態だと思いながら、自分が今できる事をしようと狛犬に右手を差し伸ばした。


「冬弦先輩、握手じゃないっす。箸ください。箸」


「君は本気で良い性格だな」


「だからここにいるんですよ」

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