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踊る幕僚会議

 学食の特別室に狛犬は私達の避難所を作り上げた。

 だが、狛犬の右腕である堂上の姿がここには無い。


 私は先だって宗近の偽物に襲われている。

 そこで私は思い当たった事によって、胸にずしんと重石を抱えた。


 校庭でハーニバルが五人の敵のうち二人を倒したが、残った三人は虫の化けものというものである。

 堂上が宗近の改造砲で一体を倒したから、後は、残るは二体。

 私は狛犬と私から見て彼の左隣りに座るハーニバルを見返し、整い過ぎている彼らの顔つきが無機質すぎると感じてぞっとして震えた。


 もしかして?


 ふぅ。


 狛犬が目を伏せて溜息を吐いた。

 私が疑惑を持ったことに気が付いた?


「舳宇は俺が怖いのか?」


「はい?」


「いや。何でもない。堂上はすぐに戻るよ。心配ない」


 やっぱり、疑っていることに気が付いていた?

 私はいつでも立ち上がって逃げられるように、椅子の中で身をよじって椅子の向きを少しだけ動かそうと――できない。


 椅子は重く、ひじ掛けもあるために、私を捕らえて離さない檻になっていた。

 こんな椅子から立ち上がるには、こっそりどころか思いっ切り意思を持って大きく動かねば出来やしないだろう。


 もし、もし、ここで襲われたとしたら、私は逃げ切れるだろうか?


「どうした?もぞもぞして。そんなにあいつがいないことが不安か?」


「いえ、あの。すごいしっかりしてる椅子ですね。動かない、なぁ~と」


「逃げたいのか?私が話しかけようとすると君はすぐに逃げるな」


「いや、えっと、あの、そのような」


「仕方がないよ。トーゲン、君は怖い」


 私の救いのようにして口を挟んで来たのは、狛犬の左腕のはずの生徒副会長のハーニバルであった。

 腹心のはずの相手に、狛犬は不穏な圧をかけて睨む。


「俺のどこが怖い」


「相手に存在を知られていない告白以前の状況で、結婚を前提に妄想しちゃってるところ?怖いですよ?」


 確かに怖い。

 私はいつでも逃げられるように、椅子の向きを動かす仕事に戻ることにした。

 くそ、本気で動かない!!


「舳宇、妄想などしてないから安心しろ」


「そうですよね」


「海宇こそ私からの告白を待っている」

「妄想ばかりだよ!!」


「ハハハ。舳宇はかなり度胸があるな」


 狛犬が笑い声を立てた。

 今まで狛犬とハーニバルに疑惑を抱きながら気構えていた私だったので、打ち解けた様な気さくさを出した狛犬にホッとすべきだが、私は頭を下げていた。


「すいません。失言した」


「謝る必要はない。わかるよ。兄として妹の相手を認められないのだろう。だが、いや、だからこそ私は君に私自身を知って欲しい」


 妄想野郎だという事はしっかり理解しました。

 こんなやばいのから兄は頑張って逃げていたんだなあ、という兄への理解やいたわりの心も新たに生まれました。


 そして物凄く安堵もしていた。

 こんなバカな会話ができるのだから、目の前の二人は本物なのだろう。


「舳宇?」


「とりあえず、校庭でのお話どおりでいきませんか?第六王子を何とかして、平穏を手に入れて、それからってことで」


「そうだな。では、生き残る為に現状について君に話そう。ハーニバル」


 語るのはハーニバルさんか!!

 私が目線を向けると、ハーニバルは骨付き肉を摘まんでいる状態だった。

 鴨肉のコンフィを使って説明?


「アダムを待つという選択はないのか?」


 狛犬のハーニバルへの呼びかけは、単にハーニバルの勝手なつまみ食いを窘めただけだった!!


「コンフィにニンニク効かせたオリーブオイル使うのはちょっと違いますよ」


「君は表面を焼き直して温めるものとしか言わなかったじゃないか」


「そこは知ってると思ったのだけどなあ。トモ君?君も食べてみて」


 食べてみろと気軽に言うが、たった今調理法を駄目出しされた狛犬を前に、狛犬が失敗したという料理に手が出せるか。

 私はハーニバルの鬼仕様に震える。


「いや、ああの。敵の情報の話は、ええと」


「俺は腹が減ってる。アダムはあと四十五分は戻って来ない。食べながら話し合おうよ。ほら、トーゲンの調理した飯に気兼ねすることなんか無いよ。不味かったら、俺がしたみたいに台無しにしやがってと言ってやればいいんだ」


「レイ。お前は何もしなかったのに言いたい放題だな」


「俺は盛りつけて運びましたよ」


「せっかくの豪華飯を残飯仕様にしたのはお前か!!って、もご」


 私の口にコンフィが突っ込まれた。

 突っ込んできたのは勿論ハーニバルであり、魔物みたいな美貌の顔を笑みで歪めているのが、その顔にうっとりするどころか恐怖しか想起しない。


 私は彼を罵り続けるよりも、咥えさせられた肉を齧ることに決めた。

 王子に対して好き勝手が出来る鬼に対し、これ以上不興を買いたくはない。

 ハーニバルの必殺技が、酸素を抜いて相手を窒息させること、なのだから。

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