星夜祭前日6
「お待たせしました。シチューパイと魚の包み焼きになります」
ラムとムスの前にメインが運ばれてきた。コーグはムスの頭の上からじーっと料理を見ている。
「コーグ、少し欲しい」
「まあ、今日は精霊に取り置きする人もいるし、置いてく人もいるし、なくなったら喜ぶ人もいるから、小皿が用意されてるからいいかぁー。はい」
ムスは魚の包み焼きを小皿に置く。
「私のもあげるね」
ラムはシチューパイを少し小皿に置く。
「やったー!美味しー!!」
コーグは小皿に置かれた料理を食べてにこにこと笑う。
「ケーキを1種類ずつ頼もう、ムス。半分にしよう」
(頼み放題だから全部食べたい。そして、お気に入りをリピートしたい)
「うん。そうしよう。絶対に全部美味しいから」
ムスが手をあげて、定員にケーキを頼む。
ケーキは直ぐに運ばれてくる。
「綺麗!可愛い、美味しそう!」
運ばれてきたのは定番のショートケーキにチーズケーキ、フルーツタルト、チョコケーキ、抹茶のロールケーキ、いちごのムース、パンダコーヒーケーキ、ババロア、可愛いウサギケーキ、鮮やかな星空のソーダケーキ。
山のようなケーキがキラキラと輝いていた。
「何味かな??」
「今日は星夜祭前日だから、特別なケーキにグレードアップしているから、生クリーム美味しいし、フルーツも美味しいよ。特別製!って聞いた。常連さんの役得だね」
ムスも甘い物を前に目を輝かせる。
「ショートケーキから!」
ラムはケーキにフォークをいれ、食べる。
「あー!あまーい!美味しい!」
ムスはラムが食べた片方を口に入れ、ショートケーキを味わう。
「美味しい」
(甘い生クリーム、甘いスポンジ、いちごの酸味)
「やっぱり少しずつ全種類食べなきゃ」
「うん。美味しい」
2人は美味しそうに食べすすめていった。
コーグは小皿に置かれた料理を時折つまみつつ、ムスの頭の上で寛いでいた。
「ラム、お祭り楽しい?」
「うん、安全で美味しい。そして軽い。皆楽しそう。なかなか歩いたことなかったから」
「もっと遊んでもいいのに」
「魔法の研鑽に費やしてた。侯爵令嬢のマナーもある。時間は少なかった。ムスみたいな体質の人に会えなかったから外出許可も1人ではなかなか下りなかったから」
(心配性の兄が2人いて、ギース兄様が戻ってこないと中々、無理だった)
「あー、そうか。でも、もう少し遊んでもいいのに。買い物は従者を連れていけばいけるよね?」
「そうだけど、あまり欲しくもないし、荷物はあまり増やさない主義。いなくなった時に大変だから」
(最終決戦は間近。結界が壊れ始めているから、力はあった方がいい)
「え?」
「ううん、何でもない」
「いや、今いなくなるって、、、。何か予定でもあるの?」
(余計なことをいった)
「時がくれば、かな」
ラムは誤魔化さずに曖昧にぼかした。ムスには何となく嘘をつけないと思ったからだ。
「いや、そんな時は来ない、来てはいけない。指名されたのと関係があるの?」
(指名されたのは本物の聖女だとわかったから。復活の手順に聖女の生贄が必要だと知っていれば、指名された説明がつく。知っているかが、問題。どうかはわからない)
「思い当たるのは魔力量が多い聖女という点。後は復活には生贄が必要な点を知っているかどうか」
「え、生贄?」
「教会の奥に本があるの。そこにかかっているよ」
「!!」
ムスは目を丸くする。
「ラム、狙われているの!?だ、ぜ、絶対に1人になるの駄目だからね!!」
「コーグ、護る!!」
ぴょんぴょんとムスの頭の上で跳ねる。
「私と決まっては」
「決まっている風だった。ケーキたくさん食べて、遊んで、彼奴は一緒に倒そう。平和を脅かすのは退散させる。心配しないで」
(それを倒してもアルテマヴィーナを倒さないと繰り返される。私が倒さなければ同じ)
「ありがとう。ムスも狙われている風だったけど」
「俺は邪魔なだけ。やり過ぎたかもしれないけど、あぶなかったから。大丈夫、大丈夫。まぁ、何とかなるから!ラムより危険じゃないよ。コーグもいるし、うん」
「コーグいるよー。コーグ強いよ!」
「技能的に敵と思われたでいいのかな。なら、いいけど。個別に狙われたら大変だから」
(何の意図もないならいいけど)
「まあ、そうなったらなったで対策するから。ラムは1人になっちゃ駄目だよ。倒すまでは。で、ケーキ全種類食べたけど、美味しかったのおかわりしない?」
「する。ショートケーキ、抹茶」
「えーと、ショートケーキ、抹茶、フルーツタルト、レアチーズ」
「はい、お持ちいたします。お待ち下さい」
「よし、真面目な話は終わりで、今日は楽しまないと!ラムも魔法の研鑽は忘れて、見てまわろう」
「美味しい」
ラムは運ばれたケーキに手をつけて、笑顔で食べすすめていた。
「今日は楽しむことにする」
(たまにはいいかな。最後の休息になるかもしれないし、星夜祭は楽しい。ムスは割と索敵に関してはかなりの腕で頼りになる)
ラムとムスはケーキを食べつつ、ゆっくりと何気ない話をしながら、時間を過ごしたのだった。




