星夜祭前日4
ムスは護衛から戻ってきて、真っ先に店の方へ顔を出す。
「えー!!ラム、その格好でお店に出たの!?母さん、ガードしっかりしたよね!?絶対に可愛いし、美人だから狙われるよ!!」
「?」
「当たり前でしょ。怪しいのは叩き潰して置いたからー」
(可愛いと言われたことはないけど、ムスは褒めている。後はユリアさんが物騒だけど、大丈夫かな)
ラムはユリアとムスの掛け合いに意味がわからず、首を傾げる。
「ラム、ただいまー!」
コーグがムスの頭の上を飛び跳ね、ラムに飛びつこうとするとムスが掴む。
「なら、安心だねー」
ムスはにっこりと笑いながら、コーグを押さえ込む。
「ムス、痛いよー」
「髪のセットを崩す奴は許しません。今日は駄目な、コーグ。近くにいくのはいいけど」
ムスは真剣な表情でかなりの力でコーグを押さえ込んでいた。
「はーい」
コーグはムスの腕から軟体動物のようににゅるんと抜け出し、ラムの側に行く。
「おかえり、コーグ」
「うん!」
ラムはコーグを撫でていた。
「俺、着替えてくる!ラムは待ってて!」
バタバタとムスは2階へ上がっていった。
「うん。荷物とってきます」
(お金を持っていかないと)
「ムスに持たせなさいな。お金は持たせてるから。力持ちだし、荷物も持たせなさい。欲しいのあったら、買ってきなさいな。お祭ですもの」
「ですが」
(侯爵令嬢だからお金はある。私が払った方がいいはず)
「いいの!ムスはお祭大好きだから。私達に払わせてちょうだいな。お店を手伝ってくれたお礼!」
「え」
(泊めてもらっているのに)
「いいの!ペディロもいいし、今日は女性にお金を払わせたらよくないの!夫婦は先に男性にお金を預けたりするのよ」
「星夜祭前日は男性が贈り物をして、星夜祭に男性は花をもらうの!決まり決まり!」
コーグも頷く。
「?そんな話は聞いたことはないですが」
「初代王は星夜祭前日に初代王妃に魔工品と素敵な衣装を送り、プロポーズした。王妃は星夜祭に月光草を王に渡し了承した。それのあやかりよ。貴族の間では変わっているかもしれないけど、これが真実だわ」
「貴族は花を贈り合うとは聞きますが、ユリアさんの話が真実?」
(まるで見てきたみたいにユリアさんは言う)
「ええーー、まあ、そういう話を聞いたのよ!」
「ーー話はよくわかりませんが、買うなら花にするのがいいのですか?」
「そう!お返しは花!」
「ムスは花大好きだよ、ラム!全て大丈夫だよ!何でも好きだよ!」
「なら、花にする」
「お待たせー!!」
ムスは着替えてきたらしく、黒いスーツに水色のシャツを来て、黒いショルダーバッグを持っていた。
「え」
(完全に外出用で、雰囲気違う)
「これなら、大丈夫!行こうー!まずは『アルス』かな。夕食の席予約した。ケーキ付き」
「ムス、外出用!よし!」
コーグはムスの頭の上に乗る。
「いきます!」
ラムはケーキという言葉に反応して、頷く。
「出店もあるから、見てきなさいな」
「ああ、そうするといい」
ペディロも作業から戻り顔を出していた。
「行ってきます!」
「行ってきます」
「行ってくるねー」
ラム、ムス、コーグが返事をして外へ出る。
星夜祭は始まったばかりだ。




