閑話 ダース3
ダースは、遅い時間にラムを執務室に呼ぶ。
「ダース兄?何かあった?」
「いいや、ただの話だ。楽にしていい。悪い、夜遅くしか時間とれなかった」
「ううん、仕方ないよ」
ダースに促されラムは椅子に座る。
「ムスはいい奴か?」
「うん。甘い物好きなの。お茶しながら、今はフェニックスの刺繍してもらってる。頼んでよかった。とても綺麗。他にシェーラのも頼みたい。精霊が見えるし、皆楽しみにしているみたい。モデルはいっぱいいる」
ラムはにこにこと笑う。
(楽しそうだ。精霊が見えて魔力も多く、さらに戦闘の腕も悪くない。魔技師という技術者、何より妹が楽しそうにしているのがいい)
「そうか。護衛に指名したいが、、」
「駄目。ムスは店があるもの。今も好意できてくれてるの。店で作業していた方が楽しそうだから、そのままにしてて」
「近所に家族ごと引っ越しして貰うのは駄目だろうか?護衛はしなくてもいい」
(その方がラムの安全的にもいい)
「ダース兄?そんなにムスが気に入ったの?家族ごとならわからないけど、、王都の方が店は繁盛しそうだよ」
「ああ。貴重な人材でラムが楽しそうだからな。近所にいて欲しい」
「私が楽しそうってそんな理由で、、権力乱用するつもりなの?」
(そんな理由ではないのだが)
ラムにダースの気持ちは伝わらない。
(冷静にメリットデメリットを判断して欲しいのだろう。侯爵家として、か。少しは感情のままに個人的な判断してもいいと思う)
「手元にいた方がいいと判断した。弾く魔法が効かないのは貴重だろう。他に精霊達も喜ぶし、直訴しにきた。なるべく長く留まらせるか、宿を貸してくれと。明日も山のように来るのではないか?気ままな精霊達だから」
「また、精霊塊になったらコーグが怒るから大丈夫かな、、」
「無理強いはしない。後は勝手に外出しないこと。ムスと一緒か俺かギースと一緒にしてくれ。ゴタゴタしているから」
「ムスと一緒ならいいの?」
「ああ。思ったより、、、面白かったし、腕もよかったからな」
「面白かった?」
(素直で反応もすぐにでる。後は思ったより腕がいいことか。悪者に利用されなかったのが不思議なくらいに珍しいお人好し。害は全くない、頑固そうな面はあるだろうが)
「ダース兄、からかって遊ぶのは止めてね。ムスは大事なお客様だから。帰ったら困る」
ラムは釘をさす。
声が僅かに低くなり、怒っているようだった。
「そんなことはしていない。試しただけだ。まぁ、あっちがどう思っているかは知らないが」
「ーーーダース兄の意地悪。ムスは貴族じゃないの。そんなことしなくていいのに」
(ーーラムは気づいてはないか。貴族ではないだろうが、ムスは特別だ。そもそも王太子と平民が知り合いなのはおかしいし、何か隠してる。害はないだろうが)
「ダース兄、ムスに意地悪は駄目。今度したら、ムスと一緒に出かけて暫く帰ってこないから」
「な」
「本気だからね」
(怒らせたか)
「悪かった。しない」
ダースは失敗したと思い、慌てて謝る。
「ならいい」
「ーーラム、そんなにムスが気に入ったなら、婚約でもするか?」
ダースはにっこりと笑う。
「え?」
ラムが首を傾げる。
「ムスを婚約者に」
「!?ダース兄、頭おかしくなった?ムスは平民だよ?ありえない」
ラムは淡々といい、首を振る。
「平民でも魔技師だろう。貴族よりも貴重な職業で、精霊が見えて仲が良い。魔技師は貴族と対等と決められている。私は異論がない。そもそも、アルマを王家にやるのだから、これ以上の権力集中は危険だ。ギースもラムにも権力が欲しい者から山のような婚約の話が来ている。断ってはいるが、強引な者も来てもおかしくない。ラムは何処に嫁いでもいい。できれば、貴族外がいい」
(権力が集中し過ぎると争いがでる。バース領は辺境の地。過去に戦力強化のためにギルドの強者と婚姻例もある。ムスに嫁ぐなら安心できる)
「ーーー私は恋愛結婚してほしいが」
(できれば、幸せになって欲しい。ラムは母が亡くなってから、アルマの母親代わりみたいに遊んだり、指導したり、戦闘したりと子供らしいことを全くしていない。夢みる令嬢ではなかった。少しぐらい夢をみさせたい)
「ーーー私は結婚する気はないよ。それに、ムスに失礼。好みだってあるだろうし」
(ため息、か。ラムは今のところ脈なしか。あっちがどう思っているか、か)
「ーーまあ、無理にとは言わない。私の意見はこうだというだけだ。伝えていた方がいいだろう?そろそろ、寝た方がいい。元気で安心した」
「うん、そうする。お休み」
「部屋まで送るから、出よう」
2人は仲良く並んで退出し、それぞれの部屋で眠りについたのだった。
今回でダース視点は終了です。ムスの閑話は違う方で投稿します。恐らくムスの方が閑話が長いです。




