閑話 ダース
ーーー時間はラムが脱走し数時間が経った頃に戻るーーーー
ダースはモンスター討伐から急いで戻り、真っ先に妻と子供たちに帰還を告げた。次にラムに挨拶しようと、使いをやったら、屋敷の責任者である執事レオンから頭を下げられた。
「申し訳ございません、ダース侯爵様。ラム様がいらっしゃいません、私のミスです」
「ーー魔法を使ったな。追跡は無理だろう。お前達でも無理なのはわかっている。謝らなくていい。はぁ」
(じっとしていられなかったか)
ダースは討伐前から嫌な予感があった。この結果は予想できていた。
「ラム様は行動が速いというか、無鉄砲に行くというか。家族が関わると本当に猪突猛進になるよなー。ま、普通の攻撃魔法師より魔法は強いし、回復魔法師に適正が高いから怪我は治せるし、フェニックスもいるし、大事にはならないから落ち込むなよ、ダース」
ダースの肩には槍を手に持ち、トカゲのような身体をもつ火の精霊、サラマンダーがいた。
「誰に見張らせても無理なのはわかっている。アルマの捜索を優先に。次はラムだ。どうせ、捕まらないだろうが、、、」
(正直、アルマよりラムの方が探すのは大変だ。何故なら、魔法で隠匿されるし、説得はほぼ聞かない。なのに、強いから困る。旅には向かないが〈空間魔法〉(テレポート)があるせいで捕まえられない。出向くまで待つしかないだろう)
ダースはため息をつく。
「ギースに手紙を。ラムはアルマを探しに行ったと。見かけたら連絡をよこしてくれ」
「畏まりました」
執事もいなくなり、執務室へむかう。
執務室は壁際に本が山程あり、書斎と言ってもいいぐらい。壁は落ち着いた茶色で統一されていた。
窓には木漏れ日が入り、上質な赤いカーテン、下には高級な品の良い絨毯。机は檜でテーブルもだった。
「仕事は溜まるからな」
悲しいことに机には本日の書類が。後で門番から腕利きそうな来訪者の報告もある。毎日忙しい。
「シルフに頼むか?」
「ーーラムの方が仲が良いだろう。どっちの肩を持つと思う?」
「うーん。でも、生存確認はしてくれる」
「そうだな。アルマが先だろう」
「ーーー本当はラムの方が心配何だろう?探してみようか?」
「いや、、冬の蓄えを作らねばいけない。捜索に本腰をいれられない。シルフについでに頼もう」
「モンスター討伐も重要だけど、、」
こうして、ダースは仕方なく待つことになった。
ーーーーー1週間後ーーーーー
ダースの元に連絡はなし。ギースの方もだった。
段々と不安が積もる。
ーーーーー2周間後ーーーーー
ダースは執事長のレオンを執務室へ呼び出す。
「ーーー手紙もないか」
「ありません」
ラム、ギースから手紙はない。
「、、、明日、探しに行く。すまないが予定を全てキャンセルにしてくれ」
「畏まりました」
「ーーはぁ。どこにいった」
「ーー案外、、?」
「サラマンダー?」
ダースがサラマンダーが話すのを止めたのに気づき見ると、折り紙で折られた鳥が浮いているのに気づく。色は場所にあうように透けていた。
「ーーー魔工品鳥だ。久しぶりにみた。ダース、受け取り見てみるといい。私は触れられない」
サラマンダーが呟く。
「ーー魔法が掛けられている、な。誰だ、こんな手の込んだ物を贈る者は」
ダースは魔工品鳥を視る。
(害ある魔法はないが、、。血縁者のみ開封可能で《透明魔法》(クリア)をかけてある。随分と厳重だ。サラマンダーが促すのもわかる)
ダースは視る能力に優れていた。魔法を識別する技能があり、かけられている魔法を理解し、安全とわかった上で魔工品鳥を受け取る。
(!?受け取ったら魔法が変化した《透明魔法》(クリア)が消滅。《火の精霊》(ファイヤーフラワー)が追加された。1回読んだら手紙が消えるようになっている。ーー書き換えか。魔力はラムのものではない。ふむ)
魔工鳥が透明から白色へ変化。
ダースが手紙を開ける。
ダース兄様、ギース兄様へ
私は今、王都にいます。緊急連絡のために手紙を友人の力で送って頂きました。隣国、ラスティー王国の女王が襲撃され崩れられました。王女様は行方不明、原因はクーデターだそうです。商人や市民は亡命中の者もいるそうです。国境近いダース領にも来るかもしれません。もしかしたら、戦になる可能性もあります。くれぐれもお気をつけて。
ラムより
という内容が書かれていた。
(筆跡は本人で間違いないだろう。他は署名が家族間で使う渾名にしているから間違いないな。真偽を確かめる必要があるが、おそらく真実だろう。どこから手に入れたのか、が問題だ)
まず、ダースはクーデターが真実であるか、庭園に来ていたシルフを王へ派遣。すぐに戻るように伝える。
ラムの手紙は手を離すと消滅するので持ったままに、外にいるメイドに至急レオンを呼び戻させる。
「只今、参りました」
「レオン、これから言うことを最優先としてくれ。ラムから手紙が来た。ただし、触るな。消滅する」
「畏まりました」
「隣国ラスティー王国でクーデターが起きた。真偽を王宮へ問い合わせている。シルフが来るだろう。我が領はクーデターが起きたと仮定し、臨時の処置として住民の他領への移動を1週間禁止とする。用事で止む得ない場合は申し出を書いてもらう。内容は日付、出発の時間、おおよその帰宅時間を書いてもらい、出発する者に《空間魔法》(テレポート)を配り、帰宅時に身分確認してから家へ返すことにしなさい。ギルド長と教会の神父を会議室に至急呼び出せ。事情を説明する。兵士達には非常事態に備え武器の点検及びいつでも出陣できるように。他は食料や衣類、足りない物は買い付けを任せる。集計終了後の決算を確認する」
「ダース、お待たせ〜」
旋風を起こしながら、その中心に幼子の形が薄っすら見える、気まぐれと有名な風の精霊、シルフが来訪。
ダースの側に寄る。
「クーデターは本当だってー」
「ありがとう。レオン、クーデターは真実だそうだ。メイド達で民家をまわって集計を頼む」
レオンは精霊を認識できない。そのため、ダースが内容を言う。
「かしこまりました。行ってまいります」
レオンは綺麗に礼をしてから、部屋を退出する。
「シルフ、ラムとアルマを見かけたか?」
「ううん、見つけられなかった。悲しい」
しゅんと項垂れている。
「ラムの方は間違いなく無事だから、心配はしなくていい。シルフも休め。お使いありがとう」
「うん。ありがとう。庭で休んでから帰るねー」
シルフはそう言って、執務室を後にした。




