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生贄聖女とお人好し魔技師  作者: 綴螺
一章 捜索
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目覚め


 ラムが目を開けて周囲を見渡すと、質の良い茶色のクローゼット、薄緑色の宝石箱。大切な水色のティーセット柄の裁縫箱。そこはラムの自室。

 自分の服をみると桃色の新しいふわふわしたネグリジェになっていた。


「私、、いつまでねて、、」


 ゆっくりと身体を起こすと脇腹に痛みが走る。

 庇いながらゆっくりと足を絨毯につけ、立ち上がる。

 ガチャ、り、と扉をあける。


「ラ、ム!?まて、すぐベッドに戻れ!!安静にしてないとだめだ!」


 通路に出ると、香ばしくやけた食パンに、野菜スープ、カリカリのベーコンエッグをのせたトレー。その美味しそうな食事を運んでいたギースがアイスブルーの瞳を丸くして、慌ててまくしたてる。


「ギース兄。そんなまくしたてなくても」


「思ったより深い傷口だった。痕が残ったら、よくない!治るなら、治したほうがいい!」


「そう?」


「そう!すぐベッド!」


「もう。お腹減ったから、戻るよ」


 ラムは呆れた表情で、自分のベッドに戻る。

 ギースはトレーをテーブルにおき、部屋の外に出てすぐに戻ってきた。


「すぐ、ダース兄さんもくるだろう。食べれそうか?」

 

「大丈夫。、、美味しい。いつまで寝てた?」


 食パンの上にベーコンエッグをのせて、ほおばる。

 小麦の香りがただよい、カリカリのベーコンの塩気とまろやかな卵のおいしさが口いっぱいに広がる。

 食べながら会話をすすめていく。


「一日だけ。動くことは考えるなよ!」


「早馬は?アルマの場所はわかったの?」 


「入るぞ」


 落ち着いた声が響く。

 扉から現れたのは短く切ってある金髪に、ブルーの瞳をした20代半ばの青年。身体付きは鍛えてあるのがわかるぐらいには、ガタイがいい。


「ダース兄も無事でよかった」


 ガーディソード公爵家は現在、ダースが引き継いでいて、家の最終決定権は彼にある。彼が倒れれば、公爵家は大変な事態になる。


「襲撃に驚きはしたが、撃退はできた。損害はアルマの行方のみ。家具は壊れてはいるが、必要な物は買い直せばよい。相手は相当念入りに準備していたと伺える。王家に仇なす者の仕業か、ガーディソード公爵家に恨みがあるか。今、調べ中だ。ただし、ラム。お前は絶対安静。勝手に抜け出さないように」 


「アルマの行方わからないの?」


「早馬はだしたが、数名は振り切られ、数名は重体の状態で発見された。一命はとりとめた。アルマの行方の手がかりはないが、護身用にジールからプレゼントされた強力な魔工品は持ったまま。今すぐ危険な状態にはならないだろう」


「でも、、。いくら守護の魔法がだせる魔工品があっても危険だよ。自動発動ではないものでしょう?」


 魔工品は魔技師が作るもので、魔法の種類と魔力の込め方で発動できる魔法が変わる。いい腕の人は魔法の威力も高く、自動発動できるものが作れる。一般的に自動発動は珍しく、自分の意志で使う魔工品がほとんどである。

 自分の意志で発動させる魔工品も、魔技師が少ないため、値段は高価だ。それでも、自分の身を守れる魔工品は貴族の間では有名だ。


(ジールの贈り物なら、威力は保証されているけど、状況は変わる。万が一があるなら、私はアルマを助けにいかなきゃ。自分の怪我より優先しないと)


「ラム、お前は怪我が酷い。状況は伝えたから、大人しく待っていろ。不安だから様子見にふらっと出て行ったりしないように。救出は俺達でなんとかする。お前だって狙われていた。ギースが間に合ったから無事だったが、今は傷を治せ」


「でも」


「でも、じゃない。傷口が開いたら、また大量に出血して危険な状態になられたら、目も当てられん。寝ていろ」


「探知魔法ぐらい」


「魔法も使うな。他の人に使わせる。倒れたと理解してるのか?魔法は消耗するから、だめだ。食べて寝て、元気になれ」


「何かわかったら、教えてね」


 もぐもぐと食事をおえて、トレイをギースに渡す。


「わかった」


「ジールに知らせておくから、情報部隊に出勤をお願いしてくる」


「ああ。ギース、任せたぞ」


 そう二人は会話してラムの部屋からでていく。

 部屋に静寂が訪れる。

 

「二人とも心配性、、。私だって心配なのに」


 ラムはゆっくりとベッドに横になって、眠る。眠気がすぐにやってきて、そのまま深い眠りに落ちていく。 



  



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