庭にて
ムスはスケッチが終わり、刺繍糸を吟味。色糸を悩みながら選び、嬉しそうに糸を針に通す。
「上質な糸!綺麗な色になりそうー!」
まずはベースになる赤や黄色を大まかに刺していく。
「ムス、楽しそうだね」
(刺すの速い)
ラムはムスの手元の糸がなくなるのを見ていた。
色糸も次々と変わっているのをみている。
「作ってる時が1番楽しそうだよー。婚約指輪や結婚指輪の装飾を頼まれた時は入れ物まで凝るから、密かに回ってくる時があるのー。早目に頼んで刺繍や彫りだけする時あるもん」
「一生物の品を?」
「うん。受けすぎると品物が間に合わなくて駄目だから、かなり時間もらって1ヶ月に1個だけ作るみたい。暇な時は入れ物に刺繍して買い取って貰ってるよー。人気らしく何回も定員さんくるけど、あまり作れないから、断ってるねー。でも、暇あると作るから定員さんよく来るよー」
「そうなの?」
「うん。だから、ムスはほぼ作ってるー。暇な時はコーグと遊んでくれるから、大好きー。ちゃんと遊ぶ時間とってくれるの!」
(コーグはとても大切にされているらしい)
「失礼します、ラムお嬢様」
年老いた執事のレオンが礼をしてラムに声をかける。
「レオン、兄から呼ばれた?」
「はい。ムス様をお呼びに来たのですが、、作業中ですか」
レオンが視線をムスにやると、フェニックスをみながら刺繍しているのを確認し、苦笑する。
「ムス?ムス呼ぶ?ボヨンボヨン跳ねて顔に貼り付けば気づくよ?」
(さっきの混乱したムスを正気に戻した方法と近いような気がする。痛そう)
「大丈夫。コーグ、ムスが可哀想だから、いい。私が先でも問題ないよね?」
「大丈夫でしょう。お嬢様、ご案内します」
「そう?ここ、フェニックスいるから、コーグついてく!終わったらムスを呼ぶ!」
「フェニ、お兄様のところ行ってくるからその間にムスをお願い。コーグも連れてく」
「わかった」
フェニックスは頷いて大人しくムスの刺繍を眺めている。
ムスは刺繍に夢中で気づいていない。
「コーグもついてくー」
コーグはラムの手の辺りに着地する。
ラムはコーグを両手で抱えるように持つ。
「ふわふわ」
(可愛いし、ふわふわで大人しくて人懐っこいコーグは本当に可愛い)
ラムはコーグを撫で回して嬉しそうに感触を楽しんでいる。
「精霊様もご一緒で?」
「ええ。レオン、名前はコーグ。闇精霊だよ」
「レオンは見えない?」
「見えないし聞こえないけどばっちり扱い上手いよ」
「ご案内しますね、コーグ様、ラムお嬢様」
「悲しみ。コーグ見えないのか。でも、扱い上手い期待!」
ラムとコーグはレオンの案内で屋敷を移動する。




