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生贄聖女とお人好し魔技師  作者: 綴螺
一章 捜索
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人物


 ムスとラムは岩場に隠れている。

 トッ、トッ、トッ。

 足音が岩場に響き渡る。


「ーーーきたみたい」


 ムスが小声でラムに話しかける。


「うん」


 ラムは頷いて、岩場の隙間から覗くが、やはり見えなかった。 


「見えない?」


「見えない」


「コーグだよーん!」


 コーグの姿が現れて、ムスの頭の上に乗っていた。


「1人は深緑、1人は金髪だったよ。ただ、ラムに似てはいなかった。フード被っていた方が深緑」


 そう報告するコーグはムスの頭の上で身体を伸ばしていた。


「じゃあ、、アルマじゃないかも。武器持って騎士の格好はしないし、染めるならブロンズとか茶色の方が違和感ない。拳闘士ぽい?」


「1人は前衛職じゃないと思うー。精霊は見えそうだけど、微妙な感じ。あ。アルマは精霊が見えるの?コーグ、気になる!」


 コーグがラム近くで飛び回る。


「アルマは見えるよ。シルフが大好きで側に浮いてるから。いつもべったり。置いていかれたから、怒ってそう」


 風の精霊、シルフ。姿は小さな女の子で、足はつむじ風のようにぐるぐる回っている。色はクリーム色で、周囲をよく飛び回っていて、一箇所に留まるのが嫌いな精霊だ。


「あの気まぐれシルフが?べったりなの?凄まじい気に入られようでは?」


 ムスが目を丸くする。


「シルフかぁー。じゃあ、違う人だよー。気配的にウィンディーネだから。もう1人は見えない。才能がない。どうする?」


 コーグがムスの頭の上に戻り、2人に聞く。


「アルマではないけど後ろの追いかけて来ている連中。誰かな?」


「まあ、それは俺も気になるから、外に出て旅人を装うか?俺、職人だから移動しているといえば間違いないし」


「なら、そうして顔をだそうか。タイミングは」


 ラムとムスが相談していると、外からドンッと大きな音がした。


「あ。魔法!火の魔法だ!」


 コーグがムスの頭の上で目を光らせる。


「逃げて、2人共。崩れるかも!」


「え。やばっ!ラム、俺が先に出るから後ろから出て」


「わかった」


 ムスは慌てて外へ出る。ラムも後ろに続いて外へと出た。



ーーーーー岩場の外ーーーーー



 魔法の火を2人は躱して振り返る。


「追いつかれましたか」


 冷静な女性にしては低い声で呟く。

 姿は金色の長い髪をポニーテールにまとめて銀色の鎧に身を包み、磨かれた鋭い剣を姿がバラバラな10数人の相手に向かって構えている。

 姿がバラバラな10数人は顔を黒っぽい布で隠していた。

 

「目眩ましを」


 深く被ったフードから深緑の髪が見えた。声音から若そうである。


「大丈夫です。先に」


 騎士が先を促すと


「いえ。土地勘がないので無理です。移動は最低でも」


 フードを被った人物は首をふる。

 そんな、2人の相談の中、割って入る人が1人。


「誰だー!今、魔法で岩場うったやつ!!危ないだろ!?」


「キシャー!ムスに攻撃!許さない!」


 ムスが叫びながら岩場から顔を出し、頭の上に乗っているコーグは牙をみせて威嚇する。


「ふう。あぁ、あの人だね。魔力的にわかる」


 ラムが続けて、外へ出て顔を隠している細身の男性を指差す。


「謝れー!」


「謝れー!」


 ムスとコーグが同じ言葉をエコーのように繰り返した。


「うるさい」

 

 魔法使いが魔法詠唱を始めようと構えるが、


「あ、魔法唱えた!攻撃魔法」


 コーグの魔法探知に漏れるはずはない。しっかりとムスとラムに伝える。


「打ち砕く閃光、貫け闇を《光の魔法》(ブレイクライト)」


 上空へ無数の稲妻を出現させ、滝のように相手へ叩きつける。

 相手よりラムの詠唱が終わる方が速かった。

 攻撃されるより速く相手の四肢を貫き、魔法使いが崩れ落ちて倒れた。一撃だった。


「ーーーお嬢さん、あなたは何者だ?」


 短剣を構えている、明らかに暗殺者のような素早い身のこなしの人が問いかける。


「ただの魔法師。そこにいたら、火炙りにされかけたの。攻撃してくるなら、先にするだけ。で?寄って集って何の騒ぎなの?2人に対して、多すぎる」


「あなた達が知る必要はないが、顔を見られた以上、生きては返さない」

  

(あ。これは、相手が悪人ぽい。理由説明なしに襲ってくるのは礼儀がない。せめて、岩場の攻撃に対して謝りましょう。アウト)


「酷い。じゃあ、こっちは4人で戦わないと」


「え。いや、あなた達2人は」


「逃げてください。巻き込む訳にはいきません。今なら間に合います」


 騎士とフードを被った人が慌てて逃げろと言うが、


「俺、怪我したら指名手配だからなー、お前らー。すぐ連絡いくからなー」


 とムスは宣言。

 逃げる気はないようだった。


「全く、1人戦闘不能ぐらいで酷い」


「いや、あれは怒るって。でも、謝らなかったからね。しかも、すぐ攻撃しようとして。礼儀がなってない人は叩き潰していいと父がいってたから、問題なし。というか、敵意めちゃくちゃある。潰さないと駄目。追ってくるよ」


 ムスが銃を構える。


「悪人だから、問題ないよー。コーグ協力する!あいつら、嫌いー」


 コーグがムスの頭の上でムクッと起き上がり、耳をぴょこぴょこ動かす。


「姫様」


(身分が高い人を連れているみたい。何か事情がありそう)


「わかりました。助かります。騎士はアステラ。私は長いのでディアで」


「了解ー。俺はムス、あっちはラム。上にいるデネブラが見えるなら、コーグね。で、俺達は遠距離しかいないので、近接は任せます」


「コーグだよー」


 ぴょこぴょこ跳ねているが、ディアだけ見えるらしく頭を下げている。

 

「わかりました。よろしくお願いします。ですが、追手はまだ来ます。後退しながら、逃げるつもりでいきましょう」


 その間に9人は散らばり、攻撃するために囲みだす。


「魔法防御は任せて」


「動きを止めるけど、あれからでいいよね」


 ムスが身のこなしが速そうな暗殺者に向かって銃をうつ。

 それが合図となった。


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