バラーヤイヤー
ーーーー王都から東にある町[バラーヤイヤー]にコーグ、ラム、ムスは《空間魔法》(テレポート)で飛んだーーーー
大通りの町並みは全て木造建築で統一されていて雰囲気がよい。
今は朝だから人通りは少なく、疎ら。桜並木である大通りは桜が散り、葉桜となっていた。川に散った桜の花弁が浮かんでいる。
ムスとラム、コーグはその大通りを横切って、商店街の奥、鍛冶屋や武器屋、ギルドが立ち並ぶ方へと足を進める。
その中でもレンガ造りの鍛冶屋だとわかる剣と盾の下に『ガーディア』という名の看板が掲げられている店へ入る。
「いらっしゃいませー」
奥には火が燃えており、トンカチの音がする。
床は汚れており、数名の職人が作業中。
入口近くのカウンターは流石に綺麗ではあるが、無造作に置かれている印象だ。
無愛想な挨拶にムスはすかさず返す。
「いらっしゃいませー!」
ムスは元気に返事をする。
コーグはムスの頭の上に収まり、大人しくしている。
ラムはムスの後ろから顔を出して、鍛冶屋を覗き、仕事場をみている。
(ふむふむ。お抱えの職人がたくさんいる。良さそうな槍に良さそうな剣。ピカピカに光ってる。室内は乱雑だけど)
キョロキョロと室内を見ていると、
「いらっしゃいませー!!」
また元気に声を張り上げるムス。
「は?って、お前かよ、ムス。魔針はまだだぞ?」
意外な返答に奥で作業をしている、腕がパンパンに膨れた筋肉質の男性が顔を上げる。
客をみた瞬間に厳つい顔をしかめた。
「ちょっと見てほしい素材があって。加工できるかと、見本みたいから来た」
「見本?なんのだ?」
「ワイバーンの骨と鱗。さらに皮。骨に鱗加工するとどうなるか見たくて。簪にすると柔軟性は?後は、魔針にできるかを見たい」
「ワイバーンか。ふむ。魔針には向く。見本は、、。あるにはあるが。待ってろ」
「変異種の鱗なの言わなくて大丈夫?」
ムスが鱗について何も言わなかったので、ラムが尋ねる。
「ソーマスなら、大丈夫だと思うけど。うーん、後で言っとこうか」
「上手く加工できないと困るから」
「ほら、これだ。どうだ?鱗を加工すると光で鮮やかに光るようになる」
テーブルに並べられたのは木に加工されたワイバーンの鱗達。
透明に薄く平にしているのもあれば、あえて格子状に模様を作ってみたり、斑にしている物もある。
「手に取っていい?あ、魔針の方はワイバーンの骨と皮の素材でお願いしてもいいか?」
「魔針には充分な素材だ。2本、、3本作れそうだ。どうする?」
「作れた分だけ買い取る。どうせ、寿命はくるし、摩耗激しいから頼む」
「わかった。注文書かけよ。で?そっちは?」
「綺麗。やっぱりソーマスは腕がいいよね。うーん、ラム、どれが好み?輝きに合わせてモチーフ作って簪にするよ」
「え。いいの?」
「もちろん。ラムと妹さんでお揃いにする約束でしょ。ちょうど木だし。ソーマス、桜の木で加工しても、丈夫でこの色が出るか?あ、後、鱗は変異種ワイバーンのものだけど」
「桜の木なら、問題なく大丈夫だ。ーーー、そーゆーことは早くいえ!ったく、鱗みせろ」
思いっきりムスを睨みつけるソーマス。
「あ、はい」
ムスは頷いてソーマスに鱗を差し出す。
「ーー、まぁ、大丈夫そうだな。お嬢さん、どれにする?」
「光が上品なやつがいい」
(斑も格子状も美しく加工されていて、素晴らしい腕前。ムスの目は確かなようだ。どれを選んでも間違いない)
ラムは薄く平に加工されたものを指差す。
「わかった。ムス、簪はいつだ?」
「大分先。魔針は注文書を書いたから、よろしく。簪はラムの妹さんを見つけてからになるから。依頼はその後」
「おう。確かに受け取った。出来上がったら連絡する。行方不明なのか?」
「攫われたからこっちのギルドにも顔を出すつもりです」
「ーーーなるほど。ムス、今、出歩くのは」
ソーマスが真剣そうな顔で小声で話しかける。
「ソーマス、大丈夫。隣国の情報は入ってる。動けなくなる前にちょっと出るだけ。彼女、魔法師だから。俺より強い。問題ない。で、これを職人さん達に配って」
テーブルの上に山のように積まれた魔工品ストラップを出す。
形は丸い花の模様を形どった編み物の中に石が入ってる。
ソーマスが息を呑む。
「魔工品か。おい、値段」
「いらないって。店潰れたら困るの俺だから。まあ、レース編みに石入れて作ったやつだから、1回だけな。急増のやつだよ。まあ、余りや見本もあるのも勘弁してくれ。効果は防御だけだから、すぐ逃げろよ。あ、割引してくれるなら、魔針でよろしく!」
「いつの間に」
ムスの魔工品の山をみて、ラムは目を丸くする。
「ーー貰っておくぞ。お前が作ったのは間違いないからな。お得意様だ。魔針1本、無料な。皆、喜ぶというか安心するだろう。お前のことだ、家族分もあるのは量をみればわかる」
ソーマスは魔工品を奥に仕舞いに行く。後で渡すつもりのようだ。
「よし!これで、オッケーと」
(ムスは最初から魔工品を渡すつもりだったのか。危険な目に会わないようにするために)
「ムス、気をつけろよ。魔針の件は任せろ。簪は連絡よこせ」
「わかった。じゃあ、よろしく!」
「お嬢さんも武器が入り用ならよるといい」
「ありがとうございます。お願いします」
ラムは頭を下げて『ガーディア』を後にした。
続いてムスとコーグも店を出る。




