妹
駆け足でボルドーの絨毯が引かれた廊下を走り抜ける。
「《風の精霊》(ウォームウインド)!」
眼の前に賊がいれば、すぐさま魔法でなぎ倒しながら、先へ進んでいく。
「娘だ!」
(狙いは女性?)
賊が声をあげると、ラムに向かって数人が一気に襲いかかってくる。
剣士が自分の身体を傷つけるより速く、魔法使いもろとも魔法で気絶させる。それを3回ほど繰り返した後、立ち止まる。
「着替えてきた方が、よかったかな、、」
今夜はまだ春になったばかりで肌寒い。ラムの身体は少し震えている。家の中とはいえ、冷えるのだ。
「アルマ、、大丈夫かな。もう少しで…つくけれど、、」
(思ったより、賊の数が多い。速く合流しなくては。それに、賊の目的が金銭ではないとなると、嫌な予感がする)
ラムはここにくるまで、廊下に飾られている高級な花瓶や、絵、装飾品が盗まれていないことに気づいていた。
数十分かけて、アルマの部屋の前に辿り着く。
「アルマ!いる!?」
扉を思いっきりあけて、部屋に入るとそこには倒れたメイド長がいた。
「シエル!」
慌てた様子でラムはメイド長に駆け寄って、声をかける。
部屋はタンスやテーブルにひびが入っており、激しい戦闘があったことがわかる。
「……ラム、、お嬢様」
身体を起こそうとすると、腹部から血が流れ、絨毯に染みができる。
「シエル、治療するから動かないで。『傷のない温かな身体、緩やかに元に戻して。《聖の魔法》(リカバリー)』」
白い光が、初老の彼女を包み込む。傷がある場所に光が徐々に集まり、消える。
「、、思ってるより悪いから、シエルはここで待機してて。傷は治せるけど、体力までは戻らないから。何があったの?」
「……申し訳ありません。力及ばず、アルマお嬢様が連れて行かれました」
「アルマが!?」
ラムは目を丸くして聞き返す。
「……部屋に着いた時、賊をアルマお嬢様と追い払い、部屋の外にでようとしたところ、大剣を持った者が押しかけてきました。二人で攻撃したのですが、返り討ちにあい、この有様です。かなりの腕です。ギース様と張り合うほどだと思われます」
「返り討ちにあってから、あまり時間は経ってない?」
「……そう、ですね、、」
「追う。せめて、追跡の魔法をかけるまでは」
「お嬢様、危険です!せめて、私も一緒にいきます!」
「駄目よ。安静にしてて。追跡の魔法をかけたら逃げるし、正面からは戦闘しない。私は魔導師。遠距離で見えない場所から攻撃できる。それを活かさない手はないわ」
「ですが!」
「いいえ。私だけで行きます。門から出るはずだから、見張り塔に続く通路から魔法で狙いを定める。私なら射程圏内。大丈夫、うまくやる。待ってて」
「お嬢様!」
身を翻して部屋を出ていく。シエルはその姿をみつめるだけしかできなかった。




