身分証明書
ラムとムスは門を訪ねると鎧をきた気のいい青年、ラーズが出てきた。顔も目鼻立ち整った青い目のいい好青年。
ラーズに案内された部屋は鉄製で作られた小部屋。真ん中に木の椅子とテーブルがあるだけ作業部屋だ。
「2人共座って。すいません、わざわざ来てもらって。怪我は?」
「だいぶ良くなりました」
「よかった。どうせなら本人に書いて貰った方がいいと思いまして。こちら書類になります」
ラーズは紙とペンを渡す。
「私が書いちゃっていい?」
ムスに聞くと頷く。
「いいよ。前はわりと適当に書いちゃったから」
「じゃあ、書いちゃうね」
ラムは紙とペンを受け取り、名前ラム、年齢18、出身地バース領、住所もバース領にしておき、職業は魔法師、滞在目的は妹を探すためとかく。
「ラーズ、お菓子!オススメの『アルス』からの焼き菓子」
「おおっ!ありがとう!最近、美味しいって評判だよな」
ラーズがムスから焼き菓子を貰う。
「終わりました。どうぞ」
ラムが紙を渡す。
「ありがとうございます。えーと、、、」
「住所は覚えてないから。バース領の侯爵様に言えば調べてくれます」
「まぁ、住所を覚えてないのはいるからなぁ。魔法師で滞在理由はムスも聞いてるのか?」
「ああ。妹を探してるって。人拐いにやられたそうだ」
「捜査は国がしてるけどこっちも見回りも増やして警戒してる。捕まえたいところだ。早く見つかるといいな。なら、問題ない。身分証明書は?」
「身分証明書。これは?」
ラムがギルドリングを指す。
「あー、それはさっき貰ったやつだから、駄目かな」
ムスが首をふる。
「他に何が身分証明書になるの?」
ラムがラーズに聞く。
すると、ムスとラーズが目を丸くする。
「え。今までどうやって入ってきたの!?王都に来たことあるって言ってたよね?」
「いつも兄さんが全部してくれるの。家族だとそれでいいから」
「そうか。考えてみれば女性が1人で来るのは危険だし遠いか。身分証明書は、宮廷魔法師試験合格書や資格証明書、後は働いている場所の勤務手帳とか、侯爵様の保証書かな。どれか、当てはまる物があれば1つ見せてくれるだけでいい」
「だと、魔法師の資格証明書でいいのかな?」
「問題ないです」
「うーん、何処にしまったかな、、」
(普段、侯爵令嬢で入ってしまうから、大切に仕舞ったのは覚えてるけど。捨ててはないからあるはず)
「魔法で出す感じなの?」
ムスが悩むラムをみて訪ねる。
「そう。自分の魔法で収納して蓋をすれば、本人以外は正しく開けなきゃ悪用されないからね。場所はまぁ、色々だけど。小さいしあまり出さないと忘れちゃって。部屋かな」
「探知魔法使うなら、俺の魔力使いなよ。普段はそんなに使わないし」
「ありがとう。多分、これだと思うから出すね。運べ、時空を場所をこえ、思い描く場所へ《空間魔法》(テレポート)」
ラムは小さな木箱をテーブルの上に出す。装飾品やスタンプカードぐらいしか入らない大きさだ。
「うーん、この中にあった!」
(よかった。大切な物入れにあった)
ラムはその箱を簡単に開けて中から魔法師の資格証明書を取り出す。
「お預かりします」
ラーズが資格証明書の情報を紙にメモしている。
「ラム、大丈夫?魔法使って出したってことは遠い場所にあっただろう?疲れないか?」
「戻さなきゃいけないから、少し疲れるかな。さっきも違う場所に魔法使ったから」
(《空間魔法》(テレポート)は移動距離が長ければ長いほど、運ぶ対象が重いほど消費が激しい。これは、バース領から運んだ。軽いけど移動距離が長いから消費が厳しい)
ラムは魔力が減ってきたため、眠くなってくる。
「なら、家まで持っていこう。家ならすぐ寝れるし、魔力回復の薬草あるから。それ飲んでから返した方がいい」
「でも、危ないからすぐ返す。魔力、少し残るし」
(持ち歩いたら気を張るから疲れる)
「そうか?あ、俺の魔力使えば返せる?俺も多いし、使わないし。半分残れば仕事できるから。遠慮なくいいよ」
「ありがとうございます。写し終わりましたので、お返しします。2人共、ありがとう。助かりました」
ラーズは魔法師の資格証明書を返す。
ラムは魔法師の資格証明書を小さな木箱にしまう。
「どういたしまして」
「後はよろしくな」
「ムス、、貰っていい?」
「いいよ。足りる?俺、自分の魔力量あまりわからないからさ」
(散らかっている魔力から貰おう)
ラムはムスと手を繋いでいるので、手からムスの魔力を確認。必要な魔力分を自分の前に集まるように集中する。本人の許可があるため、すんなり集まった。
「運べ、時空を場所をこえ、思い描く場所へ《空間魔法》(テレポート)」
小さな木箱がテーブルから消える。元の場所に戻った。
「!?わっ、かなり遠いな。大丈夫かな?」
ムスは魔力が減ったのがわかったので、驚いている。
「無事に戻せた。ありがとう。じゃあ、ケーキ貰って帰ろう?」
「そうか。よかった。ラーズ、またな」
「お世話になりました」
ムスは軽く手を振り、ラムは軽く頭を下げる。
「ああ。2人共、またな」
敬礼をしてラーズは見送る。
ラムとムス、肩に大人しく転がっているコーグは『アルス』に寄ってから、ムスの自宅へと帰った。




