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生贄聖女とお人好し魔技師  作者: 綴螺
一章 捜索
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白いワイバーン


 ラムは空を見上げる。

 先程のワイバーンより一回り大きい、真っ白な身体にイエローの瞳。

 瞳は真っ直ぐに銃を扱うムスに注がれている。

 ユリアに抱えられ、あり得ない速さでラムはムスに近づいている。

 草原にゴブリンの死体がみえるが、ユリアは器用に間をぬうように走っている。

 ムスは火の玉を逃げながら、《闇の精霊》(影縫い)の弾を当てて、白いワイバーンの足を掴ませて速度を落としている。

 遠距離攻撃する者は接近されたらひとたまりもない。だから、軽く払われても何発も当てているようだ。

 さらに、ワイバーンは麻痺が効いているらしく左右の翼をうまく動かせない状況。それが、飛ぶ速度を落としている原因となっていた。


(これは、ワイバーンからしたら、ムスは完全に邪魔だ。的確に当ててくるし状態異常をばら撒くし、翼を狙ってくる。一番、始末したい相手になる)


「打ち砕く閃光、貫け闇を《光の魔法》(ブレイクライト)」


 ラムは上空へ無数の稲妻のような閃光を出現させ、白いワイバーンの翼と胴体を射貫くように振り下ろす。


「ガァァァアアアア!?」


 かなり魔力を込めたので、翼に穴を空けることに成功した。致命傷にはならないが、さらに飛ぶことに負担がかかるだろう。


「うーん、胴体にも当てたけど硬い、か。これより貫通に向く技は詠唱長いから、やっぱり凍らせるしかないかな」


(まだ、戦意はあるし飛べる。高度は下がったけど、むしろブレスを吐きそう)


「ムス!こっちに!門から離れたから私が迎撃するわ!」


「はぁ、はぁ、、。母さん、、、やっぱり速い。助かった。流石に全速力はキツイ」


 ムスは息を切らしていて、走るのを止める。

 ユリアはムスの前に立って、ワイバーンに向かって構える。


「ムス、時間欲しい。多分、全部凍らせないと駄目。《光の魔法》(ブレイクライト)で翼の柔らかい肉の部分しか貫通しなかった」


「え。あ。いつの間にか穴が空いてる、、。時間稼ぎに色々したけど効果薄くて。魔法耐性が高いというより、鱗が硬いのと拘束に力不足で。俺の弾だと、、、。可能性がある拘束系は2発しかない。強力な拘束は磔だけど、磔の弾は2発で地面から離れすぎてる。これだと、使えない」


(闇魔法の磔はモンスターの影が必要。下から黒い布で地面に縛り付ける魔法で、真下にある影に攻撃されると魔法が壊れる仕組み。だから、地に足をつけている状態が好ましく、威力も高くなる。確かに、飛んでいたら不可能。叩きつける必要がある)


「ペディロさんは?」


「父さん?ーーああ、なるほど。父さんが拘束するなら、できると思う。叩き落として、磔すれば元から力もあるし、いけるよ」


 ムスは頷く。


「呼べないかな、、。拘束は力がいるから、私だと傷口開いちゃう」


(拘束は物理的に踏ん張りがいる。暴れる相手を抑える必要があるのだ。私は力があまりないので、このサイズになると吹き飛ばされるため工夫がいる)


 ラムはどうしようかと悩んでいると後から数人が追ってきていた。


「ムス、よくやった。ここなら、叩き落とせる。高度も低い。後でそのお嬢さんのことは聞かせてもらうぞ!」 


 大剣を持った筋肉ムキムキの背の高い40代ぐらいの男性が跳ぶ。


「ギルマス!え!ちょ、何するつもりですか!」


 ムスが慌てた様子で男性に声をかけるが、既に遅かった。


「叩き落とすに決まってるだろう!」


「あーー!まさか。〈飛竜殺し〉使えるの!?」 


 大剣が赤く光りだす。


「ラムちゃん、合わせるから口を閉じて!」


 ユリアも跳ぶ。

 ラムは言われた通り、しがみついて口を閉じる。


「おりゃあー!」


 掛け声とともにドラゴンすら悲鳴をあげる切断技〈飛竜殺し〉を大剣が繰り出す。

 赤く光る大剣から4つの斬撃がワイバーンに襲い掛かり、翼の根元を傷つける。


「ギャアアア!」


 ワイバーンの悲鳴。

 その傷口に塩を塗るように


「落ちなさい!」


 ユリアの拳が翼の根元に当てる。さらに、技〈骨砕き〉までのせていた。


 ボギッ!


 骨が折れる音がした。


「アァアアアアア!」


 悲痛なワイバーンの悲鳴。

 痛みで飛べなくなったワイバーンが地面に落ちる。

 地面に落ちた先に


(わぁ。やる気だ)


 いつの間にか用意されていた氷の槍。剣山のように鋭く尖っている。


「グルルルル、、」


 真下に落ちたがワイバーンの鱗を貫通するほど威力がない。魔法使いの力がなかったようだ。

 ユリアとギルマスは地面にそれぞれ下りて、距離を取る。

 氷を振り払うために尻尾をワイバーンが動かそうとした瞬間


「!?」


「父さん!」


 地面から黒い布が生えてきて、拘束する。動こうとしたワイバーンは強い力で地面に縫いつけられる。


「淡い光、照らせ暗がりを《光の魔法》(ライト)」


 ラムはすかさず一番弱い光魔法を唱える。

 ワイバーンの真ん中に淡い光を出しているシャボン玉ぐらいの玉が浮かびあがる。

 玉が位置につくと、光が強くなりワイバーンの影が小さくなる。真下にブレスを吐いても磔の魔法は解除できなくなった。


「うーん。《氷の魔法》(アイスニードル)は駄目かな?嫌がってたから、効果はありそう。さっきのは威力不足なだけで、強化と弱体化して、傷口を抉ればそこから裂けないかなぁ」


 ラムは白いワイバーンを観察する。

 ユリアさんにもう少し近づいて欲しいと頼む。

 でも、返ってきた言葉は


「ラムちゃん、ギルマスのところにいって、相談しましょ」


 予想外のものだった。

 その間にもユリアは足早にギルマスの元へ向かう。


「え。速く処理しないと、ペディロさん大変ですよ?」


「ペディロは大丈夫!ムスー、ギルマスー、これ、どうやってしとめる?」


「相談してきめる、、、。王都はのんびりなのか」


(あまり目立つとバレるかもしれない)


 ラムは驚きながらも、流れに任せることにした。


「ユリアか。助かったよ。ワイバーンが出たときは焦った。そちらのお嬢さんも、場馴れしてる強い魔法師で、見事だ。今から、ペディロの負担を減らすためにとどめを刺す相談をしている。魔法が効きづらいなら、戦士達で〈骨砕き〉〈飛竜殺し〉をするつもりだ」


「魔法貫通したよ?」


(翼に穴をあけられたから、魔法耐性は強くないと思うけど)


「鱗に魔法耐性あるみたい。翼は鱗なかったから。身体に貫通させるのは大変だよ」


「〈鱗剥ぎ〉〈関節切り〉〈木端微塵〉の技能もちいないの?いたら、物理も魔法も楽に通るよ」


「お嬢さん詳しいな。いなくはないが、熟練者は今はいなくて。森の異変調査に王宮の兵士達と同行してしまってな。今は無理だ」


「なら、帰る。私は魔法しか駄目だもの」


(大魔法は必要ない。なら帰った方がいい)


「俺も駄目。戦士じゃないから、そんな技は習得してない。ラムを預かるから母さんは加勢してきて」


 ギルマスの他に何人か強そうな戦士がいる。見た感じ、ラムはこの面子で倒せそうなので、任せることにした。

 そして、ラムは地面に下りようとしたが、駄目だとユリアに言われたのでムスに抱えられることになった。


「お嬢さん、少しムスと待っててくれ。ムス、警戒だけ頼む」


「はい。ラム、少し待ってて」


「重くない?」


 ムスはユリアさんのように力があるように見えないので心配して聞く。


「え?軽いよ?ラムはもう少し食べた方がいいよ」


「普通に食べてるよ」


「んー、なら魔法使うと消費激しいからかもね。甘いやつ増やそうか?」


「!いいの!?」


「軽すぎるから、少しだけ多めにね」


「やったー!」


(甘いの大好き)


 緊張感ない二人はワイバーンが討伐されるのを見ながらのんきな会話をしていた。




 



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