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生贄聖女とお人好し魔技師  作者: 綴螺
一章 捜索
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変異種


「ムス!俺が加護で防ぐ。方角は!?」


 聖騎士がムスに向かって叫ぶ。


「正面!でも、セイジさんだけじゃ範囲が広すぎる。俺も精霊魔法の陣で」


 ムスが紙を取り出して慌てて精霊魔法の陣を描き出す。


「魔法防御貫通なの?」


「そう!付与効果ってかいてあった、、」


(防御魔法貫通だから、攻撃魔法か補助魔法はきくということ。まだ、魔法無効じゃない分いい)


 ラムは少し考えてから、腕のよさそうな聖騎士に質問することにした。


「時間を稼げれば盾を大きくできますか?」


 セイジさんと呼ばれた聖騎士にラムは問いかける。


「時間があればあるほど大きくできる。お嬢さん、何か策でも?」


「はい。私が風魔法で向かい風にして、その間に誘導する土壁を生やそうかと思います。土壁は補助魔法ですから効きます。それで、引き付けてわざと土壁を壊させます。後続のブレスは同じ場所に来ますから、そこを中心に盾を使えば被害が抑えられるかなぁと。街中には入れたくありません」


「ラムちゃん、危険じゃない?傷口開かない?」


「踏ん張りはユリアさんに任せます。魔法が強制的に壊されるので、反動が必ずきます。耐えなければ傷口には響かないと思いますから」


「ーーわかったわ。絶対にラムちゃんに傷をつけないようにするわ!」


「よし!準備オッケー!距離にして100m先!」


 ムスは屋根上からブレスが当たる距離が見えているため、3人に距離を伝える。


「お嬢さん、1分で充分だ。怪我をしてるなら、あまり無理はさせたくない。なんとかしよう」


 聖騎士は地面に盾を突き刺して力をためている。

 それは、了承したということだった。


「はい。穏やかな陽風、空へ花を舞い上がらせて。《風の精霊》(ウォームウインド)」

 

(風は強風で!)


 ラムが魔法を唱えると轟音と共に嵐のような風が吹き荒れる。穏やかな春風の詠唱部分が詐欺のような力強さ。


「ものすごい風で速度おちてます!門前まで80m」


「獲物を引き寄せる土、サイコロとして浮かべて。《土の魔法》(アースプレイ)」


 サイコロのように小さな茶色い固まった土が浮かび上がる。

 それは門外から10m先のところに不自然に浮いている。何故か存在感がある土にブレスが引き寄せられていく。

 強風により、進む速度は遅いが確実に進路変更されている。

 後続のブレスも土に向かっていく。


「実戦で《土の魔法》(アースプレイ)使うとこうなるのか。へー。いや、始めて見た」


 ムスは感心しながら、状況を見つつ、弾を補充している。

 ブレスが当たらないと判断した白いワイバーンが門の方へ突撃してくる。


「白いワイバーンが物理攻撃してくるつもりみたい!ブレスはやめたよ!あと、20m先!」


「防ぎきれば、街は守れそうかな」


「ギャアアア!」


 街中に入っていたワイバーンはギルド所属の戦士達に留めをさされたところだった。


「あ。壊れる!」


 《土の魔法》(アースプレイ)がブレスに当たって壊れた。


「っ!」


 ラムは敵の攻撃で《土の魔法》(アースプレイ)が壊れたので反動を貰う。反動の強さは魔法の消費量に比例する。体重が軽いラムは吹っ飛ばされそうになる。


「ラムちゃん!」


 ユリアがラムをしっかりと抱え込み、踏ん張る。僅かにユリアの足が動いたが壁際までは動かなかった。

 

「女神よ、聖女よ、人々を護り給え」


 それを合図に、聖騎士は力を開放する。聖女の加護をうけた盾がより一層大きくなり、門前に立ちふさがる。 

 

「頼む!」


 ムスは精霊魔法の陣を発動させる。それは、水の精霊であるウィンディーネが使う精霊魔法。水のベールとも言われる炎耐性を付与するもの。ムスは聖騎士の盾にそれを付与したのだ。


「ガァァァアアアア!」

 

 ブレスは門前に当たるが盾が完全に防ぎ切っている。

 ワイバーンは盾を壊そうと突撃してくる。


「むっ」


 ジリっと反動により盾ごとセイジは後に押される。

 だが、すぐに持ち直してこらえる。

 ワイバーンの咆哮がすぐ側で聞こえる。


「セイジさん!大丈夫ですか!」


「ここで、盾を下げるわけにはいかない。耐えきる」


 そう答える。汗を垂らしてキツそうにしているが、意思は堅い。


「お願い!」


「みんな、攻撃するぞ!」


 他の魔法使いが影縫いや、足止めの魔法を唱えたり、戦士達も門の外に出て注意をそらして協力している。

 でも、白いワイバーンは盾に釘付けだ。

 なおも壊そうと突撃してくる。


「麻痺れ!」


 ムスは状態異常になるように弾を撃ち込む。

 弾は命中し、麻痺の状態異常になったようで白いワイバーンは攻撃方向をみる。

 ラムの強風はまだ続いているので、見えにくいがワイバーンは攻撃をした人達の方を見る。


「グルルル」


 ワイバーンは唸る。


「弱点はどれだ」

 

 ムスは構わずに火、氷、水、雷、土の魔法を込めた弾丸をワイバーンの翼に当てる。

 当てた中でワイバーンは氷に怯む。

 門の外から


「氷に弱いみたいだ!魔法使いはみんな、氷で攻撃を!」


 そう言う声がした。


「ガァァァアアアア!」


 ワイバーンが咆哮する。かなりの強い咆哮で、攻撃を仕掛けていた戦士達を押し返す。

 白いワイバーンは盾から離れる。そして、門を越える高さまであがり、ムスに向かって火の玉をはく。


「え。何でおれに!?」


 火の玉は結界に阻まれて当たらなかったが、白いワイバーンは確実にムスを睨んでいる。

 ワイバーンは結界を裂くつもりでブレスをためる。


「ムス!嫌いって思われたから、逃げて!集中狙いするつもりだよ!変異種だから、危険!」


(思ったより変異種だから大きいし、知能あるみたい)


 ラムはモンスターが、一番嫌いな攻撃をした人をマークする知能があることを知っていた。


「ムス!こっちに!」


「みんなー!誰か、倒してくれよ!門外に出て逃げ回る!」


 そう言うとムスは屋根から姿を消した。

 ラムは魔法が使われた気配がしたので、《空間魔法》(テレポート)を使ったのだろう。


「もう!あの子は!!囮になって、門から離すつもりよ!」


 ユリアは慌てて門の方へ向かう。

 その間にラムは《風の精霊》(ウォームウインド)を解除し、さらに《光の精霊》(シールドライト)も解除する。


「結界の穴ぐらい後は残ってる魔法使いで塞いでください!ユリアさん、追いましょう」


(狙われてるてわかったら、外に出るって普通はしないよ)


 白いワイバーンが踵を返して草原の方へ火の玉を吐いている。

 ムスがそっちに出てちょっかいをかけたのだろう。

 無事だろうか。ムスは軽装だ。ブレスが当たったらひとたまりもない。


(大魔法、氷を詠唱すれば凍らせられるけど、足止めしないと当てられない)


 幸い、ムスが倒せる人に救援を頼んだので誰が何をできるか見極めてから作戦を考える必要がある。


(ペディロさんに連絡がとれれば拘束問題は解決するはず)


「ラムちゃん、とばすわよ!しがみついてて」 


 ユリアは門を開けると軽い身のこなしが自慢の職業、拳闘士。かなりの速さでワイバーンに向かって走り出した。



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