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生贄聖女とお人好し魔技師  作者: 綴螺
一章 捜索
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「ムス、とりあえず着いてきて。私が一時的に防御魔法で塞ぐ。塞ぐの間に合わない状況でしょう」


 傷口に触らないように歩きながら玄関に向かう。


「え!?ちょ、距離あるよ」


 慌ててムスが後ろをついていく。


「見えれば塞げるよ。防御魔法は目視距離が最大射程。強度の問題で長距離で使わないだけで、魔力が多い人なら長距離でもそこそこの強度にはなる。正式に塞ぐまでの時間稼ぎになる。早くしましょう。モンスターが入る方が面倒」


「あ。はい。綻びた陣ははっきり見えるの?」


「流石にそれは遠くてみえない。門外ギリギリにあるでしょう?」


「結界だからねー。やっぱり見えないか。じゃあ、図面描くから待ってて」


「覚えてるの!?」


 ラムは目を丸くする。


「まあ、一応。住んでる場所の結界に使ってる魔法の陣ぐらいは。あれ、1ヶ月に1回点検してるけど、近づけば見えるし。これだよ。綻びは範囲だね。強度強化も壊れたかも」


 さっと紙に《光の精霊》(シールドライト)の陣の✕と丸い円の模様に上下に数字が描いてある。数字が範囲だが、強度強化に鎖模様であちこちに装飾された陣である。


「これが元の陣、今は下半分消えてるからこの辺消えてるよ」


 紙を破ってラムに渡す。


「ありがとう。これぐらいの範囲なら問題ないね」


 扉からラムが外にでようとすると


「ラムちゃん、私も行くわ。心配だもの。ペディロもついていけって」


 ユリアが後からラムを護るように前へ出る。

 玄関の扉に手をかける。

 

「ペディロさんは?」


「父さん、強いから大丈夫。こっから魔法を使いながら闇魔法で隠れられるから。1人の方が強いよ」


「ええ。まともにやり合うより影から魔法飛ばした方が強いの。いきましょう」


「わかりました」


 3人は一緒に扉をあけて外へ出る。



ーーーーガァァァアアアアーーーー



 咆哮が聞こえる。

 獣の声。

 空を見上げる。

 それは、ゴツゴツした翼に蜥蜴のような胴体をもつモンスター。ワイバーン。

 ワイバーンは街の外側を浮遊している。

 門近くに留まっているのはギルド所属の冒険者達か、王宮の兵士達が応戦しているからだろう。

 そのワイバーンが入るぐらいに結界に穴が空いたのだ。

 ラムが神経を研ぎ澄まして魔法の陣を見ようとした時、


「あそこ。共有使えば一発だろ」


 ムスがラムの手を握って指をさす。


「あーー」


 空一面に描かれた魔法の陣が見えるようになった。


「え。これ、全部見えて」


(空一面に使用されている魔法の陣の模様が全て浮かんで見えて、手に取るようにわかる)


 ラムが空一面を見たまま固まる。


「技能使ったから。技能名は〈見破り〉。共有は手を触れればできる。魔技師の固有技能の1つだよ。本来は魔工品の内容を見極める技能だけど、俺はこの技能強いから。応用すると魔法の陣は全て見えるようになる。見えすぎて気持ち悪いなら、弱めるよ。大丈夫?」


「ううん。見えるならちょうどいいから」

 

(探知魔法でもこんなにはっきりみえないから、技能値が高いってことか)


 ラムはムスが指さした方をみると、魔法の陣が途切れ、穴が空いているのがわかる。


「敵が襲ってくる様子がないみたい。ラムちゃん、私が抱えるわね」


 ユリアはラムの身体を気遣い、腕に座らせる。


「ありがとうございます。頑丈なる盾、我等を守れ。《光の精霊》(シールドライト)」


 ラムはその場で強い魔力を込めて光魔法を唱える。

 淡い白い光がラムの身体を包んで弾ける。

 結界の綻びにぴったりと重なり、穴が一時的にかさぶたのように塞がった。

 魔法の陣は綻びを修復してる人がいるので、少しずつ復活している。


「すご。完璧な蓋。あれなら、問題ないね。制御できるってすごい」


 ムスは魔法がわかるので、《光の精霊》(シールドライト)が完璧に蓋になったことがわかり、頷く。


「ラムちゃん大丈夫?」


「久しぶりだから、少しきついかな。でも、問題ないよ」

 

「ーーじゃあ、あれ加勢しにいくか。街を壊されたらたまったもんじゃない」


 ムスがワイバーンを指差す。


「ラムちゃん、確か魔法の維持費がかかるわよね。近づきましょう。近い方が楽なはずだし、私が逃げ回るから任せて」


「いいのですか?」


(抱えながらはとても負担がかかるのだけど)


 ラムがユリアを覗き込む。


「ええ。私は速いもの。体力もあるし!ムスも街を壊されるぐらいなら、撃破しにいくわ」


「速く動きをとめて叩き潰さないとヤバそうだもん。流石にいくよ。まあ、殺傷力ないから倒せないだろうけど。そういえば、あのモンスターがはっきりよくわかってないけどワイバーンであってる?」


「合ってるよ。ワイバーンとは戦ったことない?」


(初戦でワイバーンはかなりキツイと思う。連携が上手くいくのだろうか?)


 ラムが頷く。


「ない。実物見たことないけど、素材は知ってるから、予測が当たってよかったー。鱗があるから皮膚が硬いよね?だと、弓より魔法で落とした方がいいで合ってる?」


「合ってる。氷がいいよ。寒冷地からきてないなら、翼を凍らせれば落ちる」


(普通の弓は鱗に阻まれてダメージがでない。魔法か、鋼鉄系の弓、後は状態異常も有効)


「なら、《氷の精霊》(アイスストーム)を込めた弾でいいか。ありがとう。助かる」


 ムスは銃弾を取り出してショルダーバッグから違う弾を込める。


「じゃあ、私は翼をもげばいいのね。よろめいたところに、付け根を狙って打撃を加えるわ!簡単でいいわね。いきましょう!」


 ユリアがラムを抱えたまま走り出す。


「母さん、はやっ!まって、まって!高所取ったほうが有利だよ!」


 ムスが後を追いかける。


「それもそうね!屋根に登らせていただきましょう。非常事態だもの、大丈夫ね」


「なら、私が魔法で」


 ラムが魔法を唱えようとすると


「大丈夫よ!せーの!」


 ユリアは元気よく断って、助走をつけて地面を蹴る。

 猛スピードで走り抜け、家の壁を駆け上がり、屋根にぶら下がるとラムを抱えたまま壁を蹴りながらよじ登った。


「え。えええーー」


「よし!登りやすくて助かったわ。ラムちゃん、大丈夫?」


「は、はい」


(な、なんで補助魔法なしで屋根上に筋肉だけで登れるのか)


 ラムは頭を混乱させながら頷き、ふと、下を見る。

 ラムの頭にはムスもまさかと思ったが、あちらはしっかり魔法を使って屋根の上に着地していた。


「母さん、めちゃくちゃすぎ。ラム、落ち着いて。母さんが尋常じゃないだけ。俺は普通だから」


「う、うん」


(よかった。ムスは普通だった)


 安心してムスの言葉に頷く。


「?じゃあ、行くわよ〜!」


 ユリアはわからない表情をしたが、気を取り直して、声を出す。


「はい、お願いします」


「母さん、追いつける速さで頼むよ!」


 1人は抱えたまま、ムスはユリアの後をついていく。

 屋根の上を2人はワイバーンの方へ屋根から屋根へ走り抜けていく。



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