表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生贄聖女とお人好し魔技師  作者: 綴螺
一章 捜索
19/114

ティータイム中


「おかえり、ムス!お茶してるから、こっちにおいでー!」


 ユリアが立ち上がって、ムスのチョコレートケーキとアールグレイの紅茶を用意する。


「はーい!」


 元気な声が聞こえて走っていく音がする。


「おかえり、ムス」


 ペディロが椅子を引く。


「はい。どうぞ」 


「ただいまー。ありがとう、母さん、父さん。ーーで、なんでラムがここにいるの?」


 ムスが腰を下ろして、紅茶に口をつける。ラムの姿を確認すると慌てて紅茶を置く。


「私が連れてきたの!」


「母さん!怪我してるのに!もう、俺が上に運ぶよ。ラム、行くぞ」


「嫌!ケーキも紅茶もある!食べるの!」


 ラムは大きな声を発して、ムスの手から逃れようと身体を左にひねる。

 ラムが言う通り、皿にはショートケーキが半分。二杯目のアールグレイが残っていた。


「危ない!」


「ラムちゃん!」


「あ」

 

(落ちる)


 左に思いっきりひねったので、椅子から転がり落ちる。

 ムスが慌ててラムの手を掴み、テーブルに引き寄せる。

 同時にユリアがラムの傷口を避けて腰を引き寄せる。

 ラムは二人の力で転がることもなく、何とか椅子に留まることができた。

 ユリアがラムを椅子に座り直させて、2人は大きく息を吐く。


「危なかったじゃない、ムス!いきなり手を掴むなんてだめよ!もう、いつも冷静なのに心配だと慌てるの治しなさいよ」


 ユリアが眉を吊り上げて叱っている。


「ごめんなさい。逃げられるとは思わなかったから。嫌なら連れて行かないから。傷、開いてないよね?大丈夫だよな?」


「落ちなかったから、大丈夫。ごめんなさい、つい、逃げてしまって。強制的に抱えられると思ったから、反応した」


「当然だ。魔法師は近づかれないように逃げるのが普通。ムスは戦闘について職業別の立ち回りをもっと勉強しろ。ラムさんは、全属性使える魔法師だそうだ。ムス、ギルドに釘をさしてくれ。ユリア、霧払いを頼む」


「まじか、、父さん、任して。上手くしとくよ」


「ええ!虫がつかない様にするわね」


 二人共、しっかり頷く。

 

「改めて。ムス、ありがとう。検問もギルドも任せてしまって。大丈夫だった?」


 ぺこりと頭を下げる。


「検問はまぁ、怪我人で通した。身分証明書なかったけど、誰か保証すればいいだけだから。ギルドはうまくしといた。ただ、報酬を宝石一つにしたよ。情報だけでいい依頼にしたから、見れば破格な報酬だと理解できる。集まるのは早いと思う。宝石あるのわかってたから、入ってたやつ一つ手放すことになるけど、大丈夫だよね?」


(やっぱり、身分証明書探したよね。持ってきてないから、保証はムスがしてくれたということ。かなり、リスクがある無理なことをしてくれたのだ。これは、アルマを見つけたらしっかりお礼しよう)


 ラムは頷く。


「大丈夫。何かあるかもと思って持ってきたの。お金より価値がある物は少し持っていた方が便利なのは知ってたから」


「よかった。なら、問題ないな。あ、赤いやつは最後まで売らないでもらっていい?」


「いいよ。でも、なんで?」


「自分がほしいから。いい色のガーネットだし、小さいけど絶対に映える。使わないなら、最後に相応のお金は払うから売ってくれ」


(装飾品に使うつもりなのかな。なら)


「そう。なら、あげる」


「え?いや、払うから」


「保証してくれたのでしょう?いくら怪我人でも普通はしないもの。それだけ、リスクある行動してくれたお礼。私、王都に入るのは最初から諦めてたから。そもそも、私が犯罪者だったら、保証責任でムスは牢屋行きだから足りないくらい。私、そういう価値はわかるよ?お金より重いものは世の中にあるの。私は犯罪者じゃないし、むしろありがたいけど、リスク管理はした方がいい。家族もいるのだから。何があったら悲しむのは家族だよ」


 何が大事なのか。それは、信頼や信用だとラムは身に沁みるほど理解していた。

 そして、お人好しすぎるムスに少しだけ釘をさしておく。危険すぎる行動だから。


「ーー俺、軽く怒られているよね、、」 


 目を泳がせる。


「理解できないなら、私がこれから一時間ほど解説をしようか?懇切丁寧に、な」


「父さん…!も、もう、わかったから。しないから、二度と!怖いって、本当に怖いから!目が笑ってない!俺は怒られてます!わかりました!」


 ムスは震えながら頷く。


(説教されたらしい。ペディロさん、落ち着いていて、まるで怒っているようにみえない。でも、怒らせたら怖いタイプだ)


「本当に、わかったのか?」


「理解したから!睨まないで!こわい!」


 ラムは二人の様子をみながら、紅茶を飲む。

 ムスとペディロはまだ理解したかしてないかで、攻防している。部外者のラムからみると、遊んでいるようにみえた。


(普通の両親はこんな感じなのかな。

ーーいいなぁ。二人共、長生きしてくれたなら、こんな風に皆で楽しく食卓を囲む機会もあったのかな)


 ラムが羨ましそうに三人を眺める。


「わかったならいい。ムス、宝石はラムさんの気持ちとして貰いなさい」


「は、はい」


 深い息を吐く。


「ムス、バッグから抜いていいよ。金庫にしまってあるときいたから。全部は駄目ね、入っているやつは覚えてるからね。抜いたらお金請求するから」


「他のは抜かないから」


 苦笑して、頷く。


「あとね、レモネードのレシピちょうだい」


 ムスの目をしっかりみて、真剣な目で訴える。


「?いいけど、何も特別なことはしてないよ。普通のお店から聞いたほうが美味しいと思うが?」


「レモネードのレシピをちょうだい」


 ラムは手を使って身を乗り出す。怪我をしているので、怪我にさわらないように少しだけ。


「レモネードのレシピ」


「危ないって。あげる。あげるから、座って」


 ムスは焦りながらも頷く。


「貰える発言したね?」


「ラムちゃん、聞いたから座りなさい。危ないわよ」


 ユリアがラムの腰を掴んで椅子に座らせる。


「レモネードのレシピ!」


 目を輝かせて、嬉しそうに頷く。

 ラムは大人しく椅子に座っている。


「ムス、随分、レモネード気に入ったみたいなの。作るとこもみせてあげたら?」


「別に構わないけど、本当に特別なことしてないよ。栄養が高いと思って作っただけだから」


「本当!?」


「うん。好きにして」


「よかったわね、ラムちゃん」


「はい」



ーーーー後は今後のことや、世間話をしてティータイムはお開きとなったーーー



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ