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生贄聖女とお人好し魔技師  作者: 綴螺
一章 捜索
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ーーーコンコンコンコン!ーーー


 扉の前で元気よく音がなる。

 

「起きてるー?」


 カチャ


 視線を扉に向けると、ドアが勢いよく空いて、比較的高い身長で長い金髪を後にまとめたポニーテールに、ブルーの瞳をもつ女性が現れた。

 年は若そうで、菫色のワンピースに花柄のエプロンをきている。

 その手には木のトレイをもっており、香ばしい匂いがする。


「大丈夫?」


 元気良い声はよく通り、テーブルの上にトレイを置き、ムスの部屋にある椅子をベッドの脇まで運び座る。

 

「は、はい」


 ラムはゆっくりと起き上がる。


「くらくらしない?食べられる?」


「大丈夫です」


「そう!いっぱい食べてね!!私、たくさん作ったの!いつまでもいていいからね!えーと、名前言ってなかったわ。私はユリア。ムスの母親よ。あなたは?」


 花が咲くような嬉しそうな顔をして、すぐにトレイを持ってきてくれた。


「ラムです。ユリアさん、暫くお世話になります」


 ぺこりと頭を下げる。


「あら、可愛らしい名前ねぇ。私はユリでいいわよ〜。ふふっ、かたくならないでいいわ。何から食べる?好きな物あったら、いって!明日、市場で買うわ」


 にこにこにこ。

 満面の笑みで食事を差し出される。食事は細く切ったパンを予めシチューに浸した物で、隣には野菜の中でも甘い紫キャベツをツナであえたもの。飲み物は甘酸っぱいレモネードだ。


「なんでも、食べれますのでお構いなく。ーーレモネード!?」


 ラムは満面の笑みと共に差し出された食事の中のレモネードに真っ先に手を伸ばす。

 そして、すぐに口に含む。

 甘い蜂蜜が口に広がり、後からレモンの酸味がくる。適度な甘さと適度な酸味。完全に好みの味だった。


「美味しい、、、美味しい。あまーい。酸っぱいー。幸せの味ーー」


 幸せそうにレモネードを飲み干していく。

 コップは空になってしまい、ラムは悲しそうな顔をする。


「あら。好き?レモネード」


「とても美味しいです。大好きです。レシピは、レシピを聞きたいです。蜂蜜とレモンの割合を知りたいです」


(絶対に聞かなきゃ!もう二度と好みの味に合えないかもしれない)


 ラムの目は真剣だった。


「残念だけど、息子が作ったからわからないわ。後で、たくさん作っといてとお願いしとく。レシピは聞くとわかると思うけど、、飲みすぎは駄目よ。

食欲はあるのね。髪を乱雑に切ったみたいだから、心配したのよ。失恋でもしたのかと思って」


「?私はただ邪魔だったので、切っただけなのですが」


 パクリとシチューを食べ始める。食べやすい薄味で、野菜もたっぷり溶け込んでいてとても美味しい。


「な、な、な」


 ふるふるとユリアが身体を震わせる。

 ラムは気にせずに美味しいシチューとちょうどよい塩味のサラダを食べている。

 サラダもとても美味しい。


「なんてことをー!!こんな、可愛らしい顔して、綺麗な髪なのに勿体ないわ!」


 ユリアは大声をだす。


「わっ!」


 ラムをユリアは軽く抱きしめる。

 突然の行動に驚き、スプーンを床に落としてしまう。


「私に任せて。ショートカットに整えるわ。可愛らしく、奇麗にみえるように!」


 頭を撫で回しながら、ユリアは決意したように、立ち上がった。


「?では、お願いします。でも、スプーンが落ちてしまって」


 シチューが食べれなくなったことに落ち込む。

 ラムは見た目には無頓着なため、見た目よりスプーンの方が大事だった。


「すぐにスプーンもレモネードも鋏も持ってくるわ!」


 ユリアはバタバタと足音を立てて、出ていきすぐに戻ってきた。


「はい、レモネードとスプーン。食べてていいからねー。勝手に髪を整えるから」


 木のトレイに二杯目のレモネードを置き、スプーンをラムは受け取った。


「ありがとうございます!」


 ちまちまと大切にレモネードを飲みながら、食事を進めている。

 方やユリアはラムの髪を整えるという訳のわからない光景だったが、二人共、気にしてなかった。



ーーーー数十分後ーーーー



「はい、終わりー。よしよし、可愛いわ。うん、よかった。綺麗、綺麗!」


 ユリアは頷きながら、切った髪をゴミ箱に捨てている。


「ごちそうさまです。すっかり、お世話になりました」


 完食したラムは木のトレイを差し出した。


「全部、食べられてえらい、えらい。家に帰りたくなかったら、いつまでもいていいからね」


 木のトレイを受け取って優しく微笑む。


「家出ではないので。目的を果たしたら帰ります」


「そうなの。何かあったら、いつでも遊びにきてね。ユリお母さん、悪い奴はぜーんぶ、叩きのめしてあげるから」


 表情はにこっと笑っているが、目は笑ってない。彼女が本気で言っていることが理解できる。


(本当に叩きのめしそう。そして、ユリさんはなんとなく強そう)


「あの、、本当に家出ではないので。妹を探してるだけです。それに、気軽にこれる距離ではないです」


「これから、なにか起こるかもしれないから、そんな時にここに避難しなさいな。例えば、変な男に言い寄られたり、しつこい奴、迷惑な奴、ストーカーとか。悪い奴はみんな私がぶっ飛ばして牢屋に入れるわ。悩み相談も受け付けてる。お茶しながらゆっくり話しましょう。あなた、苦労してそうだもの。いっぱい甘えていいのよ〜」


 ラムの手を握ってユリアは笑う。


「ーー来た時に、寄りますね」


(苦労してそうにみえるのね。お茶は大好きだし、ゆっくり話すのもすき。お母さんってこんな感じなのかな)


 ラムの母親は幼い時に既に亡くなっており、こんな風に世話を焼かれるは初めてだ。

 戸惑いつつも、ラムは頷く。


「嬉しい!寝ているだけじゃ、暇でしょう?あなた一人ぐらい抱えられるから、家の中を紹介するわ。片付けてくるから待ってて!」


 パタパタと出ていく。

 



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