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生贄聖女とお人好し魔技師  作者: 綴螺
一章 捜索
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危機


 ラムは《風の精霊》(ウォームウインド)で吹き飛ばして、木々がまばらにある場所から、開けた草原まで戻ってきた。

 腕を交差させて、魔法の威力を受け流したのにも関わらず、脇腹から傷口が開いて血が流れ落ちる。


「ーーッ」


 痛みに脇腹を抑えて、ラムは回復魔法をかけようとするが、茂みから物音がする。


ーーピタピターー


「ガァア!」


 右の茂みから二匹のゴブリンが飛び出し、襲いかかる。


「打ち砕く閃光、貫け闇を《光の魔法》(ブレイクライト)」


 発動が速い魔法を唱え、迎撃。

 ゴブリンの鉤爪が届くよりはやく、身体を無数の光の稲妻が貫いて絶命する。


「流石に、これで全部ではないね」


 左の茂みから様子を伺うゴブリンを見つけるとそのまま、魔法の残りを向かわせて撃退。

 細剣は怪我をしていると邪魔なので、鞘に戻す。


「寄って、、来るよね。やっぱり」


 ゴブリンは血の臭いに敏感で、弱っている者から狙う傾向がある。

 血を流したことで、周囲にいるゴブリンが二、三匹が顔をだしてこちらに向かってくる。

 普通の傷なら回復魔法ですぐ治るが、これは、開いた傷。開いた傷は治りにくいため、回復魔法で止血をする時間はない。

 

「見誤った、かな」


 ふう、とため息をはき、向かってくるゴブリンを《光の魔法》(ブレイクライト)で迎撃する。


 

ーー三回ほど同じようなやり取り繰り返すがゴブリンは中々、周囲から減らないーー



 既にラムを中心にしてゴブリンの死体は十数体分、肉片になっていた。


(もう、流れた血から魔力を使用して辺りを一気に火で燃やしたほうが速いかもしれない。大魔法を詠唱したいけど)


 ゴブリンの速度を落とすために広域に氷、次に火、同時に盾を。

 多少、傷を負うのを覚悟してやるしかない。


 すうっと、息を吸い込むと  


パァン!


 変わった高い音が左側から聞こえてきた。

 何かが胸に命中したのか、近くにきていたゴブリンが固まったまま動けなくなっている。

 思わず、音がした方へ振り返る。


「大丈夫か!?」


 見たことない筒状の武器を構えてかけよってくる金髪の男性。

 年は20代なるかならないか。服装は明らかに動きやすい半袖のシャツに、ズボンの軽装。ショルダーバッグを肩にかけ、冒険者なのか、どこかの配達員なのか、そのような出で立ち。

 彼は身軽にひょいひょいと敵の間を縫い、さらに邪魔になるのは動きをとめて、すぐ近くまできた。


「ちょっ、止血先だろ、それ!ゴブリンの動き止めとくから、止血しとけ!」


 黒い目を丸くした男性は慌ててショルダーバッグからハンカチを差し出す。

 それは、青色の綺麗な色で止血したら間違いなく紫色に染まるだろう。


(何この人。すごい)


 しばらく、ラムは固まっていた。

 彼女は眼の前の光景が信じられなかったから。

 ラムは魔法使いだからわかってしまったのだ。この男性に強い魔力がある、と。本人は気づいてないかもしれないが、魔力が外に漏れていて、制御できてない。さらに、漏れた魔力に色がついている。それは、制御さえできれば、簡単に闇魔法が使えるレベルぐらい濃い魔力があると証明していた。

 それだけでも驚きなのに、彼の肩には漏れ出す魔力に惹かれたのか、闇精霊のデネブラという者がいた。デネブラの姿は黒い目に蝙蝠のような形。コロコロと肩に転がって寛いでいるようだ。

 精霊に力を貸してもらえれば、魔法を使えるようになる。その魔法は精霊魔法という。ただ、精霊は見える者にしかみえず、声も聞こえる者にしか、聞こえない。両方わかるのは何万人に一人いるか、いないか。普通の人は見えないし聞こえないため、彼には精霊魔法は使えないだろう。

 私は生まれつき精霊が見え、聞こえる者だ。でも、私が精霊のことを伝えても信じてもらえないだろう。世間はそうだから。


「おい!?聞こえてるか?、、まさか、意識が遠のいて」


 男性は慌ててラムの手を掴もうとする。


「ーーあ。ちょっと驚いただけ」 

 

 ラムは我に返ってハンカチを受け取るが、止血はせずに男性に聞き返す。


「動き止められる?」


「え?あ、ああ。射程内に入れば。動きは一時的。最短1分、最長2分が限度。ゴブリンは魔法耐性が低いから、感覚ではあるがそれくらい、だな。見る限り強力ではないから最長が効くと思う。速く止血しろよ」


 男性は何発か撃ってゴブリンの動きをとめていた。警戒はゴブリンにむけたまま、冷静に手順を間違えずに、ラムと会話していた。


(なるほど。弓みたいな遠距離武器。当たれば相手がとまる。これは、うまくいくかもしれない。何より、このゴブリンの群れに割って入ったのだ。腕はきっとそれなりにあり、勇気もあるのだろう)


 戦略を練り直す要素になるかもしれないと、彼に期待して頭をフル回転させている。


「射程はいくつ?連射制度は」


「えー、25メートルぐらいは殺傷力ある状態で撃てる。当てるだけなら50メートルぐらいか?弾によるが。連射速度は5秒に一発ぐらい。弾切れがあるから、七発撃ったら補充しなきゃいけないが、30秒ぐらいでおわる。けど、俺の武器は殺傷力にかけるから、群れなら逃げた方がいい。止血さえすれば、すぐ近くに王都があるから、詰め所で対処すれば大丈夫だ。逃げるぞ」


 口早に言って、左手で方角を指し示す。


「時間が稼げればいい。ここで、仕留める。門にモンスターがたくさんいたら大変でしょう?」


 ラムはそう言って、力を集中させる。

 護りは丸投げするつもりで動き出す。



 

 



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