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黄道を刻む二十四の時の詩

花曇りに零れて落ちて

作者: 日浦海里

花曇り

その彩りに嫉妬したかのように

青い空は姿を隠す


雲の向こうで流した涙が

雲を伝って零れて落ちて

地上に注いで濡れて流れて


悲しいからこそ

心も冷えて

温もりに満ちた

命も冷えて


鬱々としてしまうそんな日々


地に足を付けたあの子らは

空を見上げてそう思うでしょう


零れて落ちたその水は

涙などではないのだと

伝えることが出来ればいいのに


葉の上に落ちた音が

水面の上で弾けた音が

健やかに育つ命の姿を

喜ぶ音と気づいてくれたら


空を覆う厚い衣は

その喉が乾くことのないように

熱い光を和らげるための

ベールなのだと知るだろうか


地に潤いが満ちみちて

水の結晶が空に散って

雲間が晴れれば輝いて

歓喜の声を上げている


伝わることはないけれど

ただの身勝手な愛だけど


地を照らす優しさも

雪の秘めごとも

灼熱の想いも

皆一様に同じなのだから

私だけが片思いなどと

言うつもりもないけれど


ほんの少し

心の端で

期待してしまう自分がいる

今日は穀雨。


この世のほとんど全ての生き物にとって必要なもの。水。

その水が空から雨という形で降り注ぎ、

これから来る熱い季節にも元気で育つ頃ができるよう

たくさんの栄養を与えてくれる季節です。


雨を憂鬱に感じているのは、人だけなのかもしれません。

多くの生き物は「春」が与えてくれる雨の愛に気づいているのかも。

ただ、「春」がそれを知っているのかは、分かりません。


【登場人物紹介】

春姫/秋姫

 春姫であり、秋姫。

 彼女自身は温度を操る力をは持ちません。

 彼女はただ、世界に水を与えることが出来るだけです。

 雪解けの水が正しく流れるよう、

 世界を熱する力が訪れる前に、世界が潤うよう、

 雨を降らせる事が出来る。

 彼女自身が温もりを持たないために、

 陽ざしの君の事も冬姫の事も、そして夏姫の事も、

 冷静な立場で眺めることが出来ます。

 彼らが皆、一様にして生命を慈しみたいと思いながら、

 思い通りにいかないことを悩んでいることを知り、

 彼女はただ、その心が乾かないように、

 潤いを与えたい、そう願っています。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  雨降って地固まるだけではない!  雨降るは晴れやかに世界を潤す!  感涙ではなく歓喜である事を諭すように、目の前に見える雨よりも、遠く先の雲から滴り落ちる水を追う。  何かを乗り越える…
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