39 ≪祝福のBouquet・後編≫
明日が訪れ、時は進む。
その日々に二人は寄り添い続け、そして二人の日常は変わっていく。
「楓! 忘れ物ない?」
「ないよー大丈夫」
「よかった……じゃあ、行きましょうか」
ある日の、朝。
二人は誰よりも早くそこへ行き、誰よりも早く今日お世話になる人達に挨拶をする。
「楓、緊張します?」
「ちょっとね? 試着で何回も見たはずなのに全然慣れなくて……」
「いつまでも新鮮な気持ちでいてくれるのはわたしにとっては光栄な事です」
雲一つない、晴天の空。
少し肌寒い秋の日。
「紅葉、綺麗だよ。私の人生の中で一番……これまで見たことのないくらい、綺麗だよ」
横目に見える庭園に咲くモミジとカエデがとても綺麗だった。
「楓。綺麗ですよ。わたしが大好きな、わたしだけの特別な楓……だから、でしょうか。いつも以上に綺麗に、特別に見えます」
普段なら似合いもしないはずの白が、人生でたった一度、今日一日だけ特別「可愛く」「綺麗に見える」そんな、この純白のウェディングドレスと、この瞳で君だけを見つめる為のベールを被る。
「それでは、徒花楓さん。徒花紅葉さんのご入場です」
しっかりと腕を組み、呼吸と整え、息を合わる。
「いこうか。紅葉」
そんな楓の言葉をきっかけに、二人は歩き出す。
「ええ、行きましょう。楓」
目の前にある大きな扉がゆっくりと開き、二人はその先にある祝福と愛の花道を歩く。
そしてその日、二人はまた一つ愛を誓う。
割れる事のない花瓶いっぱいに詰められた華々しいブーケをそっと、二人の優しい手で包み、それをそっと二人の愛で抱きしめる。
こんな夢の様な日が永遠に続きます様にと、こんな愛が永遠であります様にと願いながら、二人はそのブーケ―を、抱きしめる。
そして二人は手を握り、笑いあう。
そのブーケは二人が見つけた「またね」の答え。
そんなブーケを投げてしまうと、なんだか二人の物語が終わってしまいそうで、だから二人はそれを、そっと抱きしめて。
ただ何度も、愛を誓う。
ただ何度も、永遠を誓う。
ただ何度も、何度も、二人の中にあった特別な大好きを二人の指輪に閉じ込める。
そして二人はキスをする。
二人だけの特別で、永遠のブーケを彩って。
そして二人は何気ない日常へ帰ってゆく。
徒花楓と徒花紅葉の二人の日常へ、二人は溶けてゆく。
「じゃ、仕事行ってくるね」
「はい。車に気を付けて、赤信号は渡っちゃダメですからね」
「そんなに子供じゃないよ? 私」
「心配なだけす。わたしも、少ししたら家を出ますね、また何かあれば連絡します」
「うん。お願い」
出かける前に、玄関で一度ハグをする。
数日前まではキス、数ヶ月前はほっぺにキス、その前は何をしていたっけ。
「じゃあ、その」
楓には、スーツがよく似合う。
わたしも早く、制服じゃなくて楓とおお揃いのスーツが着たいな。
「またね。楓」
そう言って、紅葉は手を振る。
「うん。またね」
それに応えるみたいに楓は手を振りながらそんな言葉を吐き、ドアを開け二人の帰るべき場所を出る。
日常に溢れる、些細な幸せの芽は、秋ごろになればやがて花になる。
その花は、二人だけの永遠と、二人だけの愛で満たされた、どんな花よりも美しい、真っ赤なモミジと凛として美しい緑色のカエデを二人の世界に、二人だけの美しい世界に、もしかするとアダバナかもしれないモミジとカエデの花を、そんな花を、二人はこの世界に永遠に咲かせ続ける。
夜乃月です。
カクヨムに投稿していた作品を、こちらにも投稿しはじめました。
こちらは時系列整理版、としてカクヨムの方で閑話扱いとなっていたエピソードも本編中に含めて投稿いたします。(カクヨム版は完結済)
【カクヨム版URL↓】
https://kakuyomu.jp/works/16817330650740228152




