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【百合】やがて愛あるBouquetを知る二人。≪時系列整理版≫  作者: 夜乃月 ≪ヨルノツキ≫
≪ chapter7 二人が選んだ人生・エピローグ≫
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37 ≪紅葉が結婚報告をする話≫

これからする事が本当に必要だったのか、と聞かれれば答えは「No」だけど、これからの夫婦関係、夫婦生活の為に必要な事かと聞かれれば、紅葉は迷うことなく「YES」と答える。


 最近はどこのカフェに行ったとか、次の舞台に向けてレッスンをしているとか、同じ事務所の子と遊びに行ったとか、そんな話ばかりをしている紅葉のSNSアカウント。

そこに、どんな言葉で祝福を伝えようか。


「結婚しました。じゃ、味気ないですよね?」


「そもそも結婚じゃないんじゃない? 戸籍上って言うか法律上は」


「でも、結婚した様なものじゃないですか」


「指輪もお揃いにしたし、式もすることになってるし……確かに」


「ね?」


 二つのお揃いの指輪が、左手薬指に輝く。

それは永遠と祝福を証明する、愛の印。


「ちゃんと相手が女の人だって言うのも書いてね」


「もちろんです」


 無用なトラブルを避けるため、と言えばきっと一番分かりやすい。

今後「徒花紅葉」が活動していく中で、男性関係のトラブルが起きない様に、巻き込まれない様に、そういう事があったんだと嘘の噂を流されないために。


「わたし、嫌だったんです。自分の活動名で調べて、休止理由を見たら『妊娠』とか『自殺』とか、そんな言葉ばかりで……だから、わたしが活動休止をしても、全部プラスな事だって、知ってほしいんです」


現在も徒花紅葉の検索結果に付属でついてくる言葉は酷い物ばかり。

「これが真実なんだ!」と、妄想を現実だと誤解し、今なお嘘の真実を信じ続けようとしている人もいる。

紅葉はその全ての誤解、嘘を……全ての人に対して否定するのは難しいかもしれないけれど、せめて新しく好きになってもらえた人、昔から好きな人には、知っていてほしい。


「わたしは、あくまでアイドル……なんですよ? 一応」


 紅葉はファンを交えた結婚記念パーティーを開催しようとしていた。

さすがにそれは、と楓は止めたものの一度だけでもいいから、顔を出さなくても良いから、楓の声だけでも聴いて、納得して安心して、もう二度とそんな噂を流されない様にしたい。

と、強く強く楓に懇願したが、それに対する楓の未だ答えは出ていない。


「できました……結構上手にできたと思うんですけ、見てもらえますか?」


 数分前までは白紙だったそれに紅葉の可愛らしい文字がずらりと並ぶ。

そこには華やかな色などなく、しかし確かな幸福が筆圧の弱い薄れた黒で敷き詰められていた。


「何かあれば、書き直しますよ?」


「大丈夫だと思うけど……」


 楓はコーヒーの入ったマグカップをテーブルの上に置き、その紙を手に取る。

そこ書かれていたのは、予想以上に大人びた紅葉の結婚報告と、これからの決意だった。


――いつも応援してくださっているみなさまに大切なご報告があります。


 そんな言葉で、手紙は始まる。


――このたび、わたし徒花紅葉は以前よりお付き合いしていた女性の方と結婚させて     

いただける事になりました。


その言葉には紅葉の優しさを、そして今ある幸せを、これでもかと詰めていた。

だからなのか、いつも以上に丸く優しい字でその言葉は綴られる。


――わたしが悩んでいる時、辛い時、もちろん嬉しい時も隣に立って、少し先の未

来を見ながらわたしの事を支えてくれる、そんな素敵な女性です。


それは紅葉見た楓の、真っすぐな、率直な、嘘のない印象だった。

楓はそれを見て、少し恥ずかしくなってしまうと同時にそんな事を思われていたんだって、初めて知る。


――わたしはそんな素敵な女性の方の人生に居たい、側にいたい、とそう思いい結婚 

をさせていただく事になりました。


それは紅葉の決意、それは紅葉の意思、それは紅葉が望んだ未来を手に入れた事を示す言葉。

自分自身で見つけ、掴んだ、幸せを紅葉なりの優しさで書き記す。


――これからも、徒花紅葉はまだまだ頑張りますし、せっかく始めたアイドルを

やめるつもりもありません。

ですから今後も、こんなわたしを応援していただけたら嬉しいです。


それは、徒花紅葉が未来を望む証拠。

徒花紅葉が未来を、アイドルとしての自分の未来をまだ、まだ、もっと、夢見ている証拠。


「最後に二人の指でハンコでも押しとく?」


「いいえ、するのはもっとみんなさんの印象に残る事です」


紅葉はアイビーと赤いモミジが輝く楓の左手を取り、膝の上に置く。

それに重ねる様にお揃いのアイビーと緑色のカエデが輝く左手を、その楓の手に重ねる。


「二人の指輪の写真、はダメですか?」


「それすると、ファンの人が怒らない?」


「怒る……でしょうか? 変に文面だけだと、余計に怪しまれたりしないでしょうか?」


「んーどうだろ……」


アイドルの結婚報告なんてただの火種、でもこれをしないと紅葉は一生言われのない事を言われ続ける。

どちらを選ぶか、そんな話にはしたくないけれど。


「分かった。写真撮ろ? で、生配信もする。顔は出せないけど」


「ありがとうございます。それとごめんなさい、色々と無理を言ってしまって」


「大丈夫、私が紅葉の人生に割って入った様なものだから、できる事はするよ」


「そんな! 割って入ったなんて!」


「ごめん、言い方良くなかったね……でも、私も写真ほしいから撮ろう?」


「いいんですか?」


「いいよ、紅葉の為にできる事は全力でするって決めてたし」


 そうしてインターネットに投稿される徒花紅葉の結婚報告。

手書きのお手紙と、二人の手の写真。

その投稿に数分の内についた、反応は様々で、だけど悪い様に捉えていたり、紅葉に対して攻撃的になる人は少なく、どちらかと言えば概ね好印象。

素直に祝福してくれる人が多い、というのが二人にとっては予想外だった。


「一週間以内に私も遂に週刊誌デビューかー」


「私生活に気を付けていればそんな事は……ない、と思います」


「写真で撮られてもいい様に、二人で手繋いでホテルから出て来る?」


「なんでそんなピンポイントな場面を撮らせようとするんですか」


「んー最後の一押し? 徒花楓は徒花紅葉が好きなんだーっていう事を知ってもらう為?」


「もう、ちょっと大げさなんです。楓は」


 紅葉はスマートフォンを置き、楓の手を握る。

楓がそれを当たり前だと、そう受け入れているうちに。


「ちょ、紅葉」


紅葉は楓の頬にキスをする。


「大丈夫です。何も心配なんてないです。こうして伝えたことで分かってくれる人もいるでしょうし……それになにより、わたしは……」


紅葉は大きく息をして、楓の甘い香りに誘われて。


「楓さんといて幸せです」


そう言って、紅葉は楓に抱き着いた。

楓はすぐに紅葉を抱き留めて、頭を撫でる。

と同時にたったこれだけの事で幸せを感じられる自分自身に少し驚く。

紅葉の側にいたら、いつの間にかただの人間になっていたんだ。

と、そう楓は気づかされる。


「ありがとね、紅葉」


楓は言う。


「私の事、好きでいてくれて」


これからの二人と、これまでの二人の為に。


「こちらこそ、です……わたしの事、好きでいてくれて。嬉しいです」


紅葉は素直に笑顔を言葉を返す。

そして二人はもう一度キスをした。

今度は頬ではなく、唇で、まだ慣れない初恋の味を噛みしめた。


夜乃月です。

カクヨムに投稿していた作品を、こちらにも投稿しはじめました。

こちらは時系列整理版、としてカクヨムの方で閑話扱いとなっていたエピソードも本編中に含めて投稿いたします。(カクヨム版は完結済)


【カクヨム版URL↓】

https://kakuyomu.jp/works/16817330650740228152

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