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【百合】やがて愛あるBouquetを知る二人。≪時系列整理版≫  作者: 夜乃月 ≪ヨルノツキ≫
≪ chapter7 二人が選んだ人生・エピローグ≫
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32 ≪楓と紅葉の指輪の話≫


 お正月休みも終わって少しした頃の休日、お互いに決められた休みの中からゆっくりと心穏やかになれる時間を探し、二人はそこへ来ていた。


 並べられた光り輝くジュエリーに圧倒される、人々の笑顔と心臓のドキドキ。

それは、二人も同じだった。


「少し、緊張しますね」


「だね……今の私の心臓ヤバいよ。触ってみる?」


「こんなところでは触りません」


 店内に並ぶ様々な指輪やアクセサリーがあっても、このメインは結婚指輪や婚約指輪で、ここにいる人間が全員「結婚」という、一つものを目の前にして目を輝かせていた。

それもまた、二人と同じだった。

ただ一つここにいる全員と違う事があるとすれば、それは女の子同士であるという事、そして二人が既にお揃いのアイビーの指輪をつけている、という事だった。


「次はなんの花がいいかな」


「次は……そう、ですね」


「ていうか、最初の指輪はなんでアイビーにしたの?」


「え?」


そんな当たり前の日常に咲いたアイビーに、今更楓は疑問を持つ、どうして紅葉がアイビーを選んだのか、なんていうことが今更気になってしまう。


「楓の永遠がほしかったから……ですかね」


紅葉は答える。

あの時思っていた、素直で率直な気持ちを、今の楓に伝える。


「永遠を……だってあの時、わたしが楓に告白するつもりでしかたら」


 二人はまた、目の前に並ぶ指輪に目を向ける。

きっとそこにある全ては美しくて、きっとそこにある全ては誰かにとっての結婚の証になることができる……のかもしれないけれど、二人にとっては何かが少し、違った。


 二人は店を出て、別のジュエリーショップが近くにないかとスマートフォンで探す。

すると誰でも知っている様なジュエリーショップやとても大きなジュエリーショップ、定番のジュエリーショップとして、雑誌に取り上げられている様なお店まで、様々なものがあった。


「どこ、行きましょうか?」


「んー二人が納得できるもの探す。ってなるなら、やっぱり全店舗制覇するしかないかな?」


「日にちを分けることになりそうですね」


「まぁ、その分良いものが見つかるならいいんじゃない? そんなに焦って決めるものでもないしさ」


そうして、二人はジュエリーショップ巡りが始まった。

理想の、最高の、二人が誇れる指輪を見つける為、二人はお揃いのアイビーの指輪を光らせながら、街を歩いていた。


 一度昼食を食べ、全く関係のないショッピングをし、またジュエリーショップを巡る旅に出る。


「そういえば、紅葉ってどういう指輪が欲しいの?」


 その打ち合わせもないまま、二人は指輪を探していた。


「んー楓とお揃いにできて、楓が素敵だぁって思えるもので……だったら、良いなぁとも思いますけど」


そうなんとなく思いはするけれど、だけど紅葉には何か欲しい指輪のカタチがある様な、そんな気が自分自身でもしてしまう。


「わたしは多分、一目惚れタイプなんでしょうね」


「一目惚れタイプ?」


「ええ、楓の時もそうでしたけど、一目見て『好き』ってなっちゃうタイプなんです」


「一目惚れタイプかー」


「だから、その時までずっと分からないままなんでしょうね」


「でも、好きってなったら一直線だよね。紅葉は」


「それは楓とお付き合いをして、なんとなく自分でも分かった気がします」


 だんだんと夜が近づき始めた頃。

二人は本日最後のジュエリーショップに入る。

そこは特別有名、というわけでもなく、特別光り輝いている、という訳でもない。

むしろ外観はちょっと和風な落ち着いた見た目、お店のある場所だって路地を入って歩いた所、駅からも遠く目立たない。

一見すると、ほんとうにただの伝統的な民家の様だった。


 中に入ると、そこに並んでいるのは他のお店では見かけない様な、珍しい指輪ばかりが並んでいた。

外観通り、和風な飾りの指輪が多く、桜や彼岸花、勿論二人が今付けている様なアイビーの指輪だってあった。


「楓さん、これみてください」


 紅葉に誘われ、楓は紅葉がしばらく眺めていた展示品の指輪を見る。


「これって……」


そこにあったのは綺麗に並べられたシルバーリング、それは一見

ただの何の変哲もないシルバーリングに見えた、けれど。


「これ、モミジとカエデが彫ってあります」


「え?」


「ほら」


と、紅葉が指差すリングを見ると、確かにそれにはモミジとカエデが綺麗に彫ってあった。


「今は無色ですけど、この型に好きな色を入れてもらえるらしいですよ」


「じゃあ、赤と緑……で、作れる?」


「って事じゃないですか!」


やけに紅葉が興奮気味だった。

目を輝かせて「これだ、これしかない!」と、楓に訴えかけてくる。


「これ、気に入った?」


「楓さんはどうなんです?」


「私も気に入った」


「それなら、赤色と緑色を作って、それで交換するんです!」


「交換?」


「わたしが緑、楓が赤。どうですか?」


「嬉しいけど、ちょっと恥ずかしいね」


 二人はどの指輪にするのかを決め、店員に声を掛ける。

案内されるまま二人は並んで椅子に座り、デザインはどれにしたのか、何色を入れるのか、指輪の内側に数字や二人の名前を入れるのか、そもそも何号の指輪になるのか、それを二人は決める。


「紅葉の指って、ほんと細いよね」


「楓の方が細いと思いますけど……というか楓、爪伸ばすのやめたんですか? 最近はこまめに切ってますけど」


「まぁ、念のためにね? しといたほうが良いかなーって」


「……? そうなんですね、長いのも好きなのに」


「あはは……」


 指輪の出来上がりはまだ分からない、こうしてほしい。という要望だけを伝えて、完成品はもう少し先での受け取りになる。


 二人は店を出て、すっかり暗くなった空にあの日を重ねる。

出会って間もない頃、こんな風になるなんて知りもしない頃の、二人の事を思いだしながら。

手を繋ぐ。


「早く完成品が見たいですね。二つ目の、お揃いの指輪」


「結婚指輪も婚約指輪も、両方がお揃いなのって私達くらいでしょ」


「次は何をお揃いにしたいですか?」


「次は……」


 次に二人で決めるのは、次に二人で考えるのは。


「お揃いとは、ちょっと違うかもだけど」


「……楓も考えてくれてます?」


「当たり前、でしょ?」


女の子同士、女性同士でも式が挙げられる結婚式会場、だった。



夜乃月です。

カクヨムに投稿していた作品を、こちらにも投稿しはじめました。

こちらは時系列整理版、としてカクヨムの方で閑話扱いとなっていたエピソードも本編中に含めて投稿いたします。(カクヨム版は完結済)


【カクヨム版URL↓】

https://kakuyomu.jp/works/16817330650740228152/episodes/16817330651588449979

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