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【百合】やがて愛あるBouquetを知る二人。≪時系列整理版≫  作者: 夜乃月 ≪ヨルノツキ≫
≪ chapter7 二人が選んだ人生・エピローグ≫
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29 ≪祝福のBouquet・前編≫


 たった一人の少女から、わたしは勇気をもらった。

その一人の少女は、逆にわたしから勇気をもらったらしい。

初めて知った恋の味を、ただ噛みしめ続け。

まだ甘いそれに、浸り続ける日々。

そんな日々に花は咲き、夢は芽生え、世界は少し明るくなった様な、そんな気がする。


「そろそろかな」


 幕が、上がる。

わたしの目に映る全てのペンライトの色はオレンジ色。

あの日見た夕焼けと、同じ色。


「わたしには、笑顔になってほしい人がいます。ずっと、勇気をもって、元気を抱きしめて、未来を生き続けてほしい人がいます」


 復帰した後、色々言われたけれどでもそれでもいいんだって、今のわたしは思ってる。

わたしはただ、君に届けばいい。

君がわたしを見て、笑顔になって、また家に帰ったら頭を撫でてほしい。

そんな些細な幸せを、全部全部わたしに分けてくれたらそれでいい。


「その人の為にもわたしは……今日も歌います」


ただわたしが、君の側にいられるのならなんだっていい。

君が、わたしの歌で笑顔になるのなら、わたしのダンスを見て頑張ろうって思えるのなら、わたしはそんな君の為に、もう一度アイドルをする。


「それでは聞いてください。徒花紅葉で……『また会える日』」


 たった一人、わたしだけのステージの上から。

ただ一人、わたしにとってはかけがえのない君を探し出す。

会場が大きくなって、簡単に君の笑顔を見られなくなったのは寂しいけれど。

それでも、君はちゃんとわたしに言ってくれる。

昔よりも、素直になってくれたおかげで、今はもっと色々な事が分かる様になった。

単純な事も、ちょっと難しい君やわたしの事も、分け合って分かりあって、そうしてお互いに人生の一分一秒全てを支え合えるようになった。


 あっ、いた。

君が、いた。

相変わらず、ペンライト振ってくれないんだね。

恥ずかしいって言ってたけど、そんな事ないのに。

相変わらず、なんだから。


                ■


 立派な駅舎と駅ビル、目の前にある大きな噴水と時計。

そこが二人にとっての定番の待ち合わせスポット。


「あぁ、うん。今度帰るよ……その、次に帰る時は彼女も連れていくね……うん、お母さんも退院できてよかった……うん、じゃあまた……うん」


 空はすっかり暗くなり、夜の冷たい空気をまとう。

ネオンの明かりと、あちこちで光るイルミネーション、夜の街すらクリスマスの装いに変わっていた。


「もうすぐ、雨降るんだって」


 俯いて、腕時計を見ながらそわそわしている女の子に私はビニール傘を差して声を掛ける。


「五分の遅刻です……それに、誰との電話ですか?」


不貞腐れたその顔に、思わず笑いそうになってしまう。


「ごめんごめん。電話しながら歩いてたから……あぁ、電話の相手は心配しないで、母親だから」


「そういう時はちゃんと連絡してって言ってるのに……というか、お母さん退院できたんですね、おめでとうございます」


「ありがとう」


彼女は立って、ビニール傘の中に入る。


「ねぇ、楓。今日のライブどうでした:?」


「その話はあーと。ほら、早く行こ? お腹空いたでしょ」


「はい、お腹が空きました」


そう言って笑う紅葉が、ここにはいた。


 紅葉と楓は立ち上がり、歩き出す。

雨は降っていないので、せっかく差していた傘は閉じて歩き出す。


「そういえば楓、覚えてる?」


「ん? なに?」


「えぇー忘れましたか?」


「うそうそ。三周年だよね」


「もぅ……覚えてるならちゃんと言ってくださいよ。そう、今年で三周年です」


「元気だなぁ、ライブで疲れるだろうに」


「楓さんとの三周年、と考えると空元気が空元気じゃなくなるんですよ? ですから楓さん。今日は夜まで付き合ってもらいますからね」


「いいよー別に、そのつもりだったし」


「楓、さては最初からそっちが目的なんじゃ」


「違います。誤解を招くような事言わないでください……だいたい私はそういうのはイヤだって言ってるでしょう」


「あっ、敬語になりました。ますます怪しいです」


「はは」


「乾いた笑いはもっと怪しいですよ?」


「まぁ、紅葉とするならいいかな。って思わなくはないけど……」


「ちょっと、いきなりそんな事言わないでくださいよ! こっちまで恥ずかしくなります……」


「言わせたのは誰だ」


 あれから三周年。

やっと紅葉は、ワンマンライブという大舞台に立てた。

早いようで、まだ三周年。

あんまり大きな声では言わないけど、私も結構嬉しいし、この関係がずっと続けばいいなぁなんて、思ってる。


「ほら、行こ。三周年祝いでお店予約してるから」


「わーい! 行きましょう!」


「あぁ、ちょっと。お店の場所知らないのに私より前歩いてどうするの!」


相変わらず紅葉の母親には反対されているけれど、いつか、どう頑張ってもできない結婚はしないとしても、でも式くらいは挙げられたらいいな、なんて勝手な妄想を抱いて。

でもまだ、紅葉に話せないままで。


「楓」


「ん?」


「ありがとう、ライブ来てくれて。忙しいのに」


「私が見に来たかったから来たの、だから紅葉は『今日のライブは楽しかった』って、思ってればいいの」


「そう……ですね。でも、嬉しかったです、ステージの上から、楓の顔が見れて」


 堂々と自分自身の事を公言し、母親の反対を押し切り私と同棲し、もっと先へという願いすら叶った。

クリスマスワンマンライブも今日で終わり、これから先の未来はどうしようか。


「ねぇ、やっぱり式だけでも挙げない?」


「こんな道端で言われても嬉しくないです。もっとドキドキしたいです」


 最近ちょっと紅葉の甘え方癖が酷くなってきた気がする。

ドキドキしたいとかイチャイチャしたいとか、すぐに言ってくるようになって。


「でも……そう、ですね。式は挙げたいですよね。思い出としてでも」


 二人が歩みを止めることはない。

こんなに冷たい世界でも、二人はこうして結ばれた。

なら、たったそれだけの幸運を二人は掴み続けよう。

そして、昔の自分に言ってやるんだ。

未来はこんなに幸せなんだぞ、って。


「わたし、楓の事好きですから」


「なに? 急に」


「いえ……なんとなく」


「私も紅葉の事好きだよ?」


そんな言葉で愛を確かめ合う。


「ん……やっぱり慣れないです。楓に言われる『好き』は」


「それはなによりで」


次の二人の愛の目標は。


「次に目指す夢は『結婚式をする事』と『ハネムーン』に行く事……ですかね?」


「お望みとあれば今すぐにでもできますけど?」


「女の子同士の式をしてくれる会場少ないんですから、そんなすぐにはできませんよ」


「えぇ……現実的だなぁ」


「でも……いつか式をするために、その為にもわたし、もっと楓の側にいたいです。だから、ほら」


「はいはい。全くもう」


 指輪が輝くその手を繋いで、歩き出そう。

ここにあるとびっきりの幸せを抱きしめて、ぎゅっと掴んで離さない様にして。

明日を生きる、私達に届けよう。

まだ夜は明けないから。

まだ、葉が落ちるには、花が枯れるには早すぎるから。

枯れない様に、優しく愛を注ぎ続けよう。

永遠の愛を、確かめ合って、分かち合って、歩き出そう。

また訪れる明日の為に、永遠に見たい君の笑顔の為に、生きていこう。

そしてこの愛でいっぱいになったブーケを、私達の手で掴み、二人の夢の場所で遠くへ届けよう。


「次のライブではペンライト振ってくださいね?」


「えぇ、どうしようかなー」


そうして二人は、歩き出す。

永遠に、永久に、この愛が、この愛で始まる二人の物語が続いていく事を誰よりも、互いに願う。

そして、この花が枯れてしまう事などないと確信して、二人は笑いあう。


夜乃月です。

カクヨムに投稿していた作品を、こちらにも投稿しはじめました。

こちらは時系列整理版、としてカクヨムの方で閑話扱いとなっていたエピソードも本編中に含めて投稿いたします。(カクヨム版は完結済)


【カクヨム版URL↓】

https://kakuyomu.jp/works/16817330650740228152

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