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【百合】やがて愛あるBouquetを知る二人。≪時系列整理版≫  作者: 夜乃月 ≪ヨルノツキ≫
≪ chapter7 二人が選んだ人生・エピローグ≫
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22 ≪楓と紅葉が新居について考える話≫


 楓も大学に合格し、紅葉の高校も決まった。

芸能活動に集中する為、紅葉がこれから通う高校は通信制の高校に決まった。

青春は捨てて、自分だけの人生を選んだ、それが紅葉の答えだった。


 楓は今住んでいるマンションから引っ越すため、まずは手配をしてくれた親戚に電話をし、事情を伝えた。

お付き合いをしている女性がいること、真剣な交際であること、二人で住むための家をこれから用意したいということ。

そして、母や兄についても話をした。

母には退院か、もしくは別の病院にできないかと相談した。

あんな日々を送った町を眺めるだけの毎日はあまりにも可哀そうだと、訴えた。

そして兄についても、なんとかして姉の墓に近づかない様にできないか、と相談した。


 母の事は少し考える、兄の事は少し難しい、そして新居に関しては分かった。と、そんな返事が向こうから届く。

また、契約関係の事で必要ならまた連絡してくれと、そんな言葉もしてくれた。


 休日、二人は新居について話し合う。

様々な不動産屋でもらったパンフレットの数々、二人はそれをソファーに座って手作りのバナナジュースを飲みながら眺める。


「やっぱ家賃すごいね……」


「ええ、生きていくって大変ですね」


「まぁでも、ずっと出してもらう訳にもいかないからね」


「どれくらいがいいんですかね。広さとか家賃とか」


「んー正直よく分かんない」


「それはわたしもです」


 ここよりも部屋は狭くなる、それでも、家賃は今よりも高かったり安かったりでどこがいいのか分からない。


「部屋は、リビングと洋室が二つ?」


「いっそ同じ部屋にダブルベッドを置きますか?」


「いいけど、てるなるとやっぱり広い洋室が一つ欲しいね」


「そうですね、リビングと洋室は気持ち広めにほしいですね」


 リビングが異様に小さく、代わりに洋室がとても広い部屋。

洋室の代わりに和室がある部屋。

明らかに一人暮らしがギリギリできる広さしかないのに、ファミリー向けになっている部屋。

駅からとても近く、家賃も安く、良い場所かと思ったらその駅は利用することのない駅だったり。


「駅から近い方がいいよね?」


「できればそうですね」


「あとは……お風呂とトイレは別として……」


「ちょっと外観にこだわりたい気もしてきました」


「週刊誌とかに撮られた時に、紅葉のイメージに合う家に住んでた方が良いって事?」


「そういう訳ではないのですが……まぁでも、わたし達のイメージに合う所、というのも大事かもしれません」


「二人のイメージか……」

 

 パンフレットを一度置いて、紅葉はスマートフォンを取りだし、それで別の物件を探し始める。


「楓さん、それ」


「いいでしょ、仕事にいるかなぁって思って。買っちゃった」


楓は机の上に買ったばかりのノートパソコンを置き、紅葉と同じように別の物件を調べ始める。

そして、二人が好きな、少し興味のある物件をいくつも見つけていく。


「ここ、いいんじゃないんでしょうか」


「ん? どれー」


「これです」


 そう言って紅葉が見せてきた画面には、風呂トイレ別、広いリビングと洋室が二つ。

駅からは歩いて十分程度、マンションの近くにあるのはコンビニとドラッグストア。

レンガ造りの様な外観、部屋の中は白や黒を基調とした清潔感のある部屋。

二階建ての小さなマンション、隣には同じ部屋がある。

一階にはなんとエントランスのほかに美容院がある。


「ここいいね……しかも二人で住めるし、今は空き室だし」


楓も同じ部屋を調べ詳しく見てみるが、凄いことに不安な要素が何もない。

むしろ二人の事を待っていたのではないか、と思う程の好物件。

外観も内装も素晴らしい、もし身バレをしたとしても批判される様な物件でない。


「ここに内見にいけないかどうか相談してみませんか? 取り扱っていっる不動産屋さんに電話」


「そうだね……あっ、電話番号あった」


「ほんとですか? 中々見つからなくて」


「大丈夫、私が電話してくるから」


「すみません、お願いします」


 楓がスマートフォンを持って立ち上がり、自室に入る。

残された紅葉はパソコンの中にある、もしかしたら二人の帰る場所になるかもしれないそれを見て、様々な妄想をする。


「おかえりなさい」


と、そういう自分の姿と。


「ただいま」


と、そう言ってくれる楓の姿を想像していた。



                ■


 昼下がりの暖かい陽気に眠気を感じながら、二人は街を歩るく。


 見知らぬ街、見慣れないスーパーと見慣れないコンビニ。

知らなかった公園と、知らなかったショッピングモール、乗った事のない電車がすぐ近くを通る。


「今日、晴れてよかったですね」


「そうだね……今日が雨だったら最悪すぎる」


「この日も、二人にとっての思い出の一つ。ですからね」


 白いワンピースと麦わら帽子は暖かい春の陽気によく似合う。

桜の木々から花が舞い散り、それが紅葉の帽子にそっと落ちる。


「よかったね。一緒に住めることになって」


「ですね。これでやっと新生活が始まります」


 二人は隣を並んで歩く。

二人で迎える初めての春に、少し心を躍らせながら。


 何度も何度も写真で確認し、一度内見をし、確認もした。

けれど二人にとっては新鮮な場所で、これが新しい人生への一歩だった。


「ここが、二人の新しい帰る場所……なんですね」


 レンガ調の外観、二階建ての小さなマンション。

一階にある美容院は今日はお休み。

そんな美容院を眺めつつ、エントランスに入りすぐそこにある短い階段を二人は上る。 


 そして二階につくと、あるのはドア二つだけ。

二人の部屋は階段からは遠い一番端の部屋。


「じゃあ、鍵。差すよ?」


楓がカギをゆっくり差す。

そして、ドアのカギが開くと。


「じゃあ。わたしが……」


そのドアノブを、紅葉は回し。

ゆっくりと、そのドアは開く。


 まだ誰のものでもない新鮮な空気が透き通る。

まだ何もない真っ白なその部屋は、二人だけの色に染められる証拠。

そんな部屋の中で二人だけの新しい生活が、人生が。


「ただいまって、言うべきかな?」


「今はまだ違うんじゃないですか?」


「じゃあ、お邪魔します?」


「でもない気がしますけど……」


「じゃあ、なんだろ」


 二人の愛で生きていける。

ただ互いに満たされる様な。


「とりあえず入ろうか」


「ですね」


そんな人生の一歩を、二人は一緒に踏み出した。


夜乃月です。

カクヨムに投稿していた作品を、こちらにも投稿しはじめました。

こちらは時系列整理版、としてカクヨムの方で閑話扱いとなっていたエピソードも本編中に含めて投稿いたします。(カクヨム版は完結済)


【カクヨム版URL↓】

https://kakuyomu.jp/works/16817330650740228152/episodes/16817330651448906113

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