表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【百合】やがて愛あるBouquetを知る二人。≪時系列整理版≫  作者: 夜乃月 ≪ヨルノツキ≫
≪ chapter7 二人が選んだ人生・エピローグ≫
46/76

09 ≪楓と紅葉が水族館に行く話≫


 ずっと前から二人で行きたいねと言っていた水族館。

そこにようやく、二人は来る事ができた。


「楓さん! 見てください! 大きな水槽がいっぱいです!」


まるで子供みたいにはしゃぐ紅葉の姿を見て、紅葉も年相応の女の子なんだなぁと楓は思う。


「あんま走ると危ないよ。ほら、手つなご?」


そう言って手を差し伸べる楓に、紅葉は少し驚いてしまう。


「どうかした?」


「いえ、楓さんから手を繋ごうなんて珍しいので、ちょっと驚いちゃいました」


 薄暗く、どこまでも青い世界。

家族やカップル、初めての水族館でテンションの上がっている子供たちに紛れ、二人も手を繋いで、色々な水槽を見て回る。


「楓さん、これ可愛いですよ」


「ほんとだ……オワンクラゲって言うんだね」


「可愛いです……」


 そんな青い世界から少し外に出ると、そこには別の生き物がいる。


「カワウソ! カワウソがいますよ!」


「カワウソ好きなの?」


「可愛いので好きです、触った事はありませんが、なんだかふわふわしていそうなところもすきです」


 数十匹のカワウソが、水の中を泳いだり、陸地に上がって遊んでいたりする。

その姿を見て、紅葉は笑う。

そんな紅葉の姿を見て、楓は笑っていた。


「楓さん、ここにはペンギンさんもいるんですよね?」


「いるみたいね」


「楽しみですね……ペンギンさん」


 別に紅葉は今日が初めての水族館、という訳ではない。

一度ロケで水族館に行った事はあるらしい。

けれど。


「紅葉、今日ほんと楽しそうだよね」


「だって、楓さんと来た水族館ですし。それに水族館ってデートの定番スポット! って感じですから、余計にテンションが上がっちゃうんです」


カワウソからペンギンへ向かう途中、紅葉はそんな事を言っていた。


「そっか。デートの定番スポットか、水族館って」


「楓さんはそういうの調べたりしません? デートで行くならどこがいいのかな、とかそういうの」


「私は別に。ていうか、紅葉といられたらどこでも楽しいしさ」


「もぅ、またすぐそういう事言う……」


「何?」


「わたしちょっと心配です。楓さんが大学に行った後、同じようなセリフを無意識に吐いて、最低最悪の女たらしになるんじゃないのかって」


「ならないならない。てか、私の言葉は全部紅葉だけの特別だって、ずっと言ってるじゃん」


「大学にも指輪をつけて行ってほしくなっちゃいますよ」


 あの日から、楓は肌身離さずアイビーの指輪を身に着けている。

紅葉に指輪はまだなく、しかし紅葉はその事を気にしてはおらず。

「わたしの指輪は楓さんと一緒に選びたいです」と、紅葉はそんな事を楓に言った。


「つけて行こうか? 外す理由もないし」


「なんだかわたしが楓さんの事を信じていないみたいで、束縛しているみたいで嫌なのでやっぱりいいです。でも、二人の指輪が揃ったら、それはずっとつけましょうね?」


「それは勿論」


 二人はそんな話をしながら、水族館の中を歩いていた。

青い世界も、青くない世界も、全てをその目に映し、そして出口が近くなった頃、そこにある売店に紅葉は目を付けた。


「楓さん、お揃いの何かを買いませんか? せっかくですし」


「キーホルダーみたいな?」


「はい。そういうやつです」


 二人は売店の中に入り、今日の事を思い出しながら、二人で揃えたい何かを探す。

キーホルダーや小さなぬいぐるみ、マグカップなどがある中から二人は、二人だけのものを探す。


「やっぱり、キーホルダーが定番ですかね」


「マグカップみたいに割れたりする心配もないし、いいんじゃない?」


「特別って、感じしますか?」


「めちゃめちゃする」


「じゃあ、どれがいいか決めましょう?」


「紅葉はペンギンとかカワウソとかそういうのが欲しいんでしょ?」


「なんで分かるんですか、凄い……」


「すごくないすごくない。一番テンション上がってたじゃん、その辺りで」


「今思うと少し恥ずかしですね……」


 そうしてお揃いになったのは、デフォルメ化された絵柄が丸くて優しいカワウソのキーホルダー。

紅葉は薄ピンクを、楓は青を、カバンにつける。


「お揃いが、増えていきますね」


 水族館を出て少しした所で、目の前にある広い海を見ながら紅葉は言う。


「なんだか嬉しいです。ちゃんと、一緒の時間を歩めてるんだなぁって思えて」


「それは私も一緒だよ」


「だからこそ、もう少しでまた帰らないといけないのが辛いです」


「遠距離恋愛ってやつも、案外楽しいかもよ?」


「わたしは、楓さんと一緒がいいんです」


 初恋だから特別で、その相手が楓さんだったからもっと特別で、大切で。


 毎日来る、母親からのメール。

何をしているの、勝手な事をしないで、お母さんの気持ちを考えて。

そんな自分勝手なメール、理由もなくわたしの愛と恋を認めない、母親からのメール。


「ん……? 楓さん?」


 そっと優しく、楓は紅葉の手を握る。


「今日は私の事だけ考えてよ。ほかは全部忘れてさ」


そんな言葉は冷たい海風と共に紅葉の肌を通り、体に沁みる。


「ほら、次はえっと……」


 まだ、山積みな問題はたくさんあって、それはいつになっても解決しなさそうだけれど。

でも、今日くらいはそんな事全部忘れたって、だれも怒らないから。


「お昼ご飯。ですよね」


「あぁ、そっか。てか、もうそんな時間なんだね」


「ふふ。二人で作ったお弁当楽しみですね」


「だね」


 下調べはバッチリ、準備万端な二人は、お弁当を座って食べられるベンチがある場所に向けて、歩き出す。

その時紅葉の顔には、もう暗雲なんて一つもなかった。

楓の顔には、珍しく素直な笑顔があった。


夜乃月です。

カクヨムに投稿していた作品を、こちらにも投稿しはじめました。

こちらは時系列整理版、としてカクヨムの方で閑話扱いとなっていたエピソードも本編中に含めて投稿いたします。(カクヨム版は完結済)


【カクヨム版URL↓】

https://kakuyomu.jp/works/16817330650740228152/episodes/16817330651270197723

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ