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【百合】やがて愛あるBouquetを知る二人。≪時系列整理版≫  作者: 夜乃月 ≪ヨルノツキ≫
≪ chapter7 二人が選んだ人生・エピローグ≫
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08 ≪楓と紅葉が手作りお弁当を作る話≫


「これは、サンドイッチ用のふわふわなパンなんですけど、このままだと少し大きいので、これを四つに切ります」


午前七時を過ぎた頃、まだ静かで冷たい朝のリビングに紅葉の声が響く。


「そして、切ったものの中にハムやたまご。レタスなどを入れてください。わたしはお弁当の心臓を作ります」


「そんなたいそうな」


「いいえ、お弁当のバランス。どこに何を置くのか、どういった順番で並べるのか、これはお弁当の生命、心臓と言っても過言じゃありません。だって、見た目が悪いと食べる気にならないでしょう?」


 紅葉が朝から頑張ってお弁当を作ってる横で、楓はサンドイッチを作る。

と同時に出来上がったサンドイッチを小さなお弁当箱につめていく。


「楓さん。料理は苦手だって言いますけど、頑張ればできそうですよね?」


「どうなんだろう。昔は料理の時間とるのがめんどくてしてなかっただけだから」


「まぁでも、わたしがここにいる間はわたしの作ったものを食べててほしいなぁ、なんて思いますけどね。わたしは」


 少量のナポリタンと小さなハンバーグ。

ミートボールやタコさんウィンナーにレタスやトマト。

だんだんと出来上がっていくお弁当の中身は、まるで子供向けのお弁当だった。


「運動会とか遠足とかでよく見るよね、こういうお弁当」


「わたしもそれを目標に頑張っていますから……でも、これだけはわたしたちの特別です」


そう言って紅葉がお弁当箱の中に入れたのは、紅葉手作りの卵焼き。

紅葉が最初に覚えた料理で、紅葉が一番自身のあるものだった。


「紅葉って良いお母さんになりそうだよねー」


 サンドイッチを作りながら、不意に出た楓の言葉。

それが、紅葉を惑わせる。


「おっ、おか……え?」


「いやぁ、お弁当作るの上手だし、そもそも料理上手だし。家の事ちゃんとしてくれるし……だからその分、私も頑張らないとって思えるしさ」


淡々と楓の口から出て来る言葉に紅葉は顔を赤くし続ける。


「そういう親の姿を見たら、子供も『わたしもママ達みたいになりたーい』って思ってくれるんじゃないかな」


 楓の頭はサンドイッチを作る事ばかりに集中しており、今自分が何を言っているのかを理解もしていないし、意識もしていない、今のこの瞬間にも自分が言った、紅葉に対する言葉の数々を忘れてしまっている。


「そういう意味じゃ、私達ってお似合い夫婦なのかな?」


そう言いながら、手を止め紅葉の方を見た楓は初めて気づく。

自分がとんでもない言葉ばかりを吐き続けていた事に。


 顔を真っ赤にして呆然としながら、それでも心に残った理性をかき集めて、その顔を隠し続ける。


「そういう事……簡単に言っちゃうのズルいです……」


紅葉は楓に背を向け、一度深く息をする。


「楓さん、私の事をそんな風に思っていたんですね」


「まぁ、良いお母さん。お嫁さんタイプだなぁとは、思ってたけど」


「もぅ……でも、楓さんにそんな風に思ってもられているのに残念ですよね。わたしは、その……女の子同士、ですから」


 二人の子供、とかそういう夢は多分叶えられなくて。

それが少し残念で。


「女の子同士だから、いんじゃないの?」


でも、楓さんはそんな事はないと、そう思っているのでしょうね。


「特別じゃん? 異性じゃなくて同性を好きになるなんて」


「特別……」


「子供だけが全部じゃないし、そういう事するのだけが夫婦じゃないし、好きも愛も人の数だけたくさんあるからさ……私はだた、その」


楓は喉に詰まった言葉を叩きだす、これだけは紅葉に伝えなければとその言葉を喉の奥から引きずり出す。


「紅葉が、私にはもったいないくらい、素敵な人だっていうのを伝えたかったの」


 そんな楓の言葉に収まってたはずの、紅葉が抱える恥ずかしさは再発する。

また紅葉は顔を赤くして、その顔を楓には見られない様にしようとする。


「ふふ、紅葉可愛い」


「や、やめてください……恥ずかしいままになっちゃいます」


すかっかり止まっていた手を二人は動かす、そして。


「はい、なんとなく完成しました。サンドイッチはどうです?」


「こっちもできたよ」


「わぁ、可愛い」


「サンドイッチが?」


「一口サイズになっていて、可愛らしくないですか?」


「まぁ、言われてみれば?」


二人はそれを保冷バックの中に入れ、部屋着を脱ぎそれぞれがそれぞれの外着を着る。

紅葉は白いワンピースを、楓は着慣れたいつもの服を着る。


 カバンを持って二人は家を出る。

これがお正月最後のおでかけ、そしてそろそろ帰ってこいと言われている紅葉がしたかった二人でのおでかけ、というイベント。

なにより紅葉がしたかったのは、手作りのお弁当を持って二人でお出かけをするという事。


「楓さん、行きましょう」


だからか、やけにテンションの高い紅葉は楓の手を引っ張って歩く。

そんな紅葉に合わせて楓も歩き、二人は駅の方へと少し早歩きで向かっていった。


 


夜乃月です。

カクヨムに投稿していた作品を、こちらにも投稿しはじめました。

こちらは時系列整理版、としてカクヨムの方で閑話扱いとなっていたエピソードも本編中に含めて投稿いたします。(カクヨム版は完結済)


【カクヨム版URL↓】

https://kakuyomu.jp/works/16817330650740228152/episodes/16817330651268001805

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