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【百合】やがて愛あるBouquetを知る二人。≪時系列整理版≫  作者: 夜乃月 ≪ヨルノツキ≫
≪ chapter7 二人が選んだ人生・エピローグ≫
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04 ≪楓と紅葉が将来について考える話≫

 数日ぶりに楓の部屋に来た紅葉は何も変わっていないその光景に安堵する。

と同時に、台所を見ただけで楓が料理を全くしていない事が分かって、楓の側に自分がいなかった事の重大さに気づく。


「楓さん。今日の晩御飯は何が食べたいですか?」


「何も作れないでしょ、これじゃ」


「買いに行けばいんです。それにわたしはどんなものでも作れますから、楓さんの食べたいもの。教えてください」


「じゃあ……すき焼き、とかする? あっ、お寿司でも食べに行く?」


「今日はすき焼きを作りましょう。お寿司は、また食べに行きましょうよ」


「よし決まり」


「じゃあ、すぐに食材を買ってきますね」


「あぁ、いいよ。私も行く」


 紅葉はキャリーバックの中からトートバックを出し、楓も自室からトートバックを取る。

それを持って、二人は家を出る。


 スーパーにつくと、二人は必要そうなものを探す。

昔、楓とゆかりで来たスーパーは内装が変わり、すっかり見慣れないスーパーに変わってしまった。


「お惣菜、何かいります?」


「それこそお寿司とか? あっでも待って。コロッケ出来だって!」


「じゃあ、二つ買って帰りましょうか」


 楓は昔よりも少し柔らかくなって、素直にわたしに感情を伝えてくれるようになった……それは、気のせいでしょうか。


「紅葉? どうかした?」


「いえ、楓さんも少し変わったなぁと、そう思っていただけです」


「変わった……まぁ、紅葉のおかげで少しは変わったかもね?」


「もぅ。すぐそういう事言うんですから」


 食材をもって家に帰ると、さっそく紅葉は台所に立つ。

そこにあるのは懐かしい包丁やまな板、懐かしいお箸やお鍋たちだった。


「楓さん、本当に料理しないんですね……どれもこれもとても綺麗です」


 楓は晩御飯の事は紅葉に任せ、自分の寝る場所と紅葉の寝る場所を決める。

前回の反省を生かし、紅葉やゆかりがいつ泊まりに来てもいい様にと買っていたふとんが二つある。

そのうちの一つを、あの紙の切れ端で汚くなった部屋。ではなく、その隣にある物が全くない物置部屋に敷く。


 夕方六時ごろ、すき焼きとお寿司が食卓に並ぶ。

コロッケは出来立てだった事もあり、家に帰ってすぐ食べてしまった。


「「いただきます」」


 紅葉が少し張り切って晩御飯を作ったのにも理由がある。


「ねぇ、楓さん」


まだ未確定な事が多い未来だけれど、けれど確かに一つ。

揺るがない事実がある。

その事実をもっと強固なものにするために胃袋を掴みたかった。


「私達、付き合っている訳じゃないですか」


 その言葉に思わず、楓はむせてしまう。


「あぁ、ごめんなさい。食べている時に」


「いや、いいんだけど……んっ……ん。はい、そうだね。付き合ってるね」


「あぁ、はい。ですけどその……彼女とお嫁さんって、凄く凄く違うじゃないですか」


「そう……だね」


 紅葉が作るすき焼きは若干甘め、他のものもそうだけど紅葉は辛い物がとことん苦手な影響か、全体的に甘い味付けで作る事が多い。

でも、甘すぎるなんて事はなく、むしろそれが心地よく、美味しい、そんな甘さで。


「だからその……ちゃんと考えていてくださいね? もう一つ、先の事も」


そんな甘さが、何より紅葉の味で、楓が安心して食べる事のできる味だった。


「もう一つ先って何?」


 楓はあえて、そんな言い方をする。

少し照れて、楓から目を逸らす紅葉があまりにも可愛らしくて、そんなイジワルをしてしまう。


「だから……その」


「あぁ、もしかして」


「なっ、なんです?」


「大学の事?」


「……楓さん、わざと分からないフリしてません?」


「違う違う……ええと、ええと……」


「言ってみてくださいよ。なんだと思います?」


少し拗ねて顔を赤くする紅葉を、楓は可愛いなぁと眺めつつ、それ以上のイジワルなんてしない。


「結婚式とか、そういう話でしょう?」


「やっぱり分かってる……あと、そんなあっさり言われちゃうとなんだから嫌です。わたしだけが、浮かれているみたいで」


「そんな事はないけどさ……ほら、あんまり実感ないじゃん? 結婚なんて」


 まだ十八になったばかりの楓に結婚がああだ、結婚式がどうだと言っても実感を持てないのは仕方がないのかもしれない。

けれど、そんな楓よりも幼い紅葉は真剣にそれらの事を考え、現実のものとして悩んでいた。


「楓さんは……したくないですか? 結婚式」


「結婚式は、できるのか」


「まぁ、ええ……あぁ、でもやっぱりいいです。なしです、なし。忘れてください」


 突然羞恥心を思い出したのか、紅葉は今までのすべの言葉を消してしまう為にお茶を飲む。

そして紅葉は同じように楓のコップにもお茶を注ぐ。


「楓さん。明日は掃除しますよ、掃除」


「ええーあれでしょう? どうせあの部屋でしょう?」


「ええそうです。あの部屋をちゃんと生きた部屋にするんです」


 紅葉がお茶を淹れたり、飲んだり、別の話題に変えたって楓は覚えている。

紅葉が今日、結婚式をしたいと言ったことを、楓との結婚願望がほんの少しでもある事を、楓は覚えて忘れはしない。


夜乃月です。

カクヨムに投稿していた作品を、こちらにも投稿しはじめました。

こちらは時系列整理版、としてカクヨムの方で閑話扱いとなっていたエピソードも本編中に含めて投稿いたします。(カクヨム版は完結済)


【カクヨム版URL↓】

https://kakuyomu.jp/works/16817330650740228152/episodes/16817330651190801716

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