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【百合】やがて愛あるBouquetを知る二人。≪時系列整理版≫  作者: 夜乃月 ≪ヨルノツキ≫
≪ chapter7 二人が選んだ人生・エピローグ≫
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03 ≪姫メ乃猫があの人に出会うまでの話≫


 珍しくライブに来てくれたお客さんがCDと缶バッチ、それにチェキまで買ってくれた。

なんで、って思うけどその人はわたしのおかげで勇気をもらえたらしいし、それは正しいことで、それはアイドルらしい、事。

なのかな。


「チェキとCDと缶バッチ……か」


 きっとわたしよりも年上の人、だよね。

身長はちょっと高くて、制服を着てて、髪が短くて、真っ黒で、

あとは、どんな特徴があったかな。


「でも、あの人……」


 どこか憂鬱そうだった。

どこか生きている様な感じがしなくて。

でも、あの一瞬だけは、わたしの歌を聞いていた時だけは少し、顔が明るかった気がする。

なんてのは多分、わたしの勝手な自意識過剰。


「だよね」


 また、彼女に会える。

そう、私は信じているし、信じていたい。

でも、それから彼女に会えることは一度もなかった。

何処でライブをしても、同じステージで歌を歌っても、踊っても、彼女に届く事はないままだった。


 またね、なんてのはただの建前で、きっとわたしの事なんてもう忘れている。

そう思える様な状況だけど、でもそうは思いたくなかった。


 たった一人のファン、だから。

たった一人、わたしの歌やダンスを、好きになってくれた人なんだから。

またがある、って信じてもいいよね。


「移籍……ですか?」


「あぁ、この前話していた例の事務所の人がな、お前を気に入ってくれたんだ」


「そうなんですね……」


「そうした? 嬉しくないか?」


「いえ……ただ、その。ここに居れば会えるかもしれない、ファンの人がいたので」


「そんなの気にするな、ファンなんてお前が有名になれば勝手についてくる。そんな一人二人のファンの事を考えて、お前の人生を無駄にする方が勿体ないぞ」


「そう……ですかね」


 納得は、できなかった。

けれど確かに、有名になれば会えるかもしれないというのは間違いじゃない。

テレビや映画、ドラマやバラエティーどこでもいい、どこかにわたしがいれば、見つけて、また会えるかもしれない。


「分かりました。移籍のお話、お引き受けします」


 大手の事務所に行ったから、だから売れるなんて事はない。

大手の事務所に行ったから、だからもっと頑張らなきゃいけない。

そんな日々の中で、わたしの中からあのファンの事は薄れつつあった。

忘れては、いけないものなのに。


「だから、嫌だって、そう言っているの……わたしは、グラビアは……まだ、したくないの……」


 ある日、グラビアの仕事がわたしに来た。

引き受けると言い出したのは、わたしのマネージャーをしていた、わたしの母親だった。


「いいじゃない別に、ちょっと脱ぐだけで今の何倍も稼げるようになって、有名になれるのよ?」


そんなセリフを、母の口から聞きたくはなかった。


「いやなの! わたしは!」


 わたしは、何か大切なものを失った気がした。

今まであった家族の絆とか、信用とか、そういう何かを失った気がした。


 女子中学生と言う事、アイドルをしているという事、あとは適当なタグと言葉をつけて投稿して。


「よければ、会えないかな」


そう、言われた場所に行く事を決めた。


 母親への反抗。

それになぜ、グラビアが嫌だった、赤の他人に素肌を見せる事嫌がったわたしが、出会い系を使ったのかは、分からない。


 ただ、思いついた方法がこれだけだった。

母はとにかく純潔を守れだとか、アイドルなんだから恋愛はダメ、恋愛系のドラマに出るのも、見るのもダメとか、そういう事を言ってくるタイプの人間だった。

だから私は、そんな母に反抗したくて、母が一番嫌がりそうなことをしたのかもしれない。


「行ってきます」


 可愛らしいキャリーバックは、事務所に入った時、家から遠い場所でするライブなどに持っていく為に買ったもの。

何があっても、こんなことの為に買った物じゃない。


 恐怖が脳を支配していた、男性と話をする、お茶を飲む。

それだけでいいと、彼は言っていたけれど、それだけで済まない事くらいわたしにだって分かる。


「あっ、もしかして!」


 噴水前での待ち合わせ、やけにテンションが高い男性が現れて、少し怖かった。

ネット上だと、クールなイケメンを自称していたから、本当にそんな雰囲気の人がくるんだと思っていたから、余計にびっくりした。


「あっ、はい……その」


すぐに腕を掴まれて、わたしの話を聞く事もなく、自分勝手に一方的にこの人は話を進める。

やめておけばよかった。

なんて後悔は、きっともう遅い。


「その……」


「大丈夫だよ、何日でもいてくれていていいから。今日雨だし寒かったでしょ、ほら家に入ったらすぐにシャワー浴びてね」


「はい……」


この人に荷物を持たれたり、ずっと手を握られているのが怖い、怖くて怖くて、仕方がない。


「ねぇ、その子。困ってません?」


 そんな私の元に、君は現れた。


「困ってますよね? その子」


わたしにとってこの人は、当時はファンでもないただ助けてくれただけの人。

だけど、そんな君が。


「明らか未成年ですし、手出しちゃダメですよね?」


そんな君が、私の運命の人だったなんて、思いもしなかった。


「私、徒花楓アダバナカエデ。十七歳の高校三年生」


そんな君と、私は人生を共にするだなんて思ってもいなかった。


「よろしくね」


そんな君が、今はほんとうに愛おしい。


夜乃月です。

カクヨムに投稿していた作品を、こちらにも投稿しはじめました。

こちらは時系列整理版、としてカクヨムの方で閑話扱いとなっていたエピソードも本編中に含めて投稿いたします。(カクヨム版は完結済)


【カクヨム版URL↓】

https://kakuyomu.jp/works/16817330650740228152/episodes/16817330651184546777

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