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【百合】やがて愛あるBouquetを知る二人。≪時系列整理版≫  作者: 夜乃月 ≪ヨルノツキ≫
≪ chapter7 二人が選んだ人生・エピローグ≫
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02 ≪ゆかりの初恋の後の話≫


 ある日の昼下がり。

楓のスマートフォンが鳴る。


「もしもし? 楓? 今時間ある?」


聞こえてきたのは、楓の幼馴染丁香花(ハシドイ)ゆかりの声だった。


「いやーあの後どうなったのかなぁって。その二人が」


 答えは分かっている。

結果も、なんとなく予想はできる。

だけどそれでも、楓言葉で教えてほしい。


「その……なんて、言うべきかな……」


 ゆかりに言えない、話の続き。

あの後の続き、クリスマスイブの日の事を伝えたら、きっと私はゆかりを傷つけてしまう。


「いいから、言ってよ。どうなったの?」


 いつも以上に優しい、それどころか何か安心した様子のゆかりの言葉に、楓は迷いを捨てる。

伝えて、その後どうなるのかは分からないけど。

でも、それでも。


「付き合う事になった。紅葉と」


 ここで嘘をつき続けるのも、隠し事してしまうのも、私しにちゃんと向き合ってくれてゆかりに失礼だ、って思ったから。


「そう。よかったね」


「ごめん……ゆかり」


「なんで謝るの? 楓が謝る必要なんて」


「でも……ゆかりの事、振った翌日だったから」


「あぁそれは……」


 じれったいっていうか、いつまでも気持ち隠して、分かんないふりして、うじうじして前に進まなそうだったから、私が押し進めてやった。

なんて言うのは、違うかな。


「でも、よかったね。どう? 仲良くやれてる?」


「いや……」


「え? 早速倦怠期?」


「そういう訳じゃないんだけど、あの後すぐ紅葉は帰っちゃったから」


「あぁ、そうなんだ」


「また戻ってくるって言ってはいるんだけどね。いつになるのか分かんない感じだから」


「ちゃんと戻ってくるんだよね?」


「紅葉の母親が強引に止めない限りは……ね」


 二人のこれからは、まだ分からない。

二人のこれからなんて、誰もしない。

そんな二人のこれからを、ゆかりは知りたいと思ってしまう。

それはゆかりにとって楓は間違いなく、紛れもなく、初恋の人だったから。


「二人で住むの?」


「全部これから二人で考えるよ。それにここから出るなら一度言わないとだしね、私の母親に」


「お母さん、どうなの? 体調は」


「落ち着いてはいるみたいだけど、どうかな……私も三年か四年は会ってないし、連絡もしてないから詳しい事は分からなくて」


「彼女ができました。って言わないの?」


「結婚する訳でもないんだし、別にいかなぁって。紅葉の顔は見てもらいけどね」


「結婚か……あぁ、想像しただけで死にたくなってくる……楓のウエディングドレスとか……あぁあぁ、苦しい。苦しい……」


「ごめんて」


「いや、幸せならいいんだよ? いんだけどさ? でもちょっとは辛いじゃん?」


「まぁ……そう、だよね」


 結婚、なんて考えなんていなかったけど、そもそもできないけれど、でも式を挙げるだけならできる。


「紅葉との結婚式か……」


そう、ゆかりが知った時頭に浮かんだのは紅葉の可愛らしいウエディングドレスの姿と楓の凛々しいウエディングドレスの姿だった。

似合うだろうなぁ、とうすぼんやりと思いながら、でも式なんて難しいんじゃないかと、ゆかりの意識はすぐに現実に返ってくる。


「まぁ、ゆっくり決めなよ。楓の人生は案外長いんだろうし」


「おかげさまで長生きしてます」


「ほんとだよ、私のおかげな部分結構あるからね?」


「ほんとうにそうだと思う。あの時ああしてくていなかったら、って考えるだけでも恐ろしいよ」


 だからこそ、紅葉を選んだことに罪悪感が芽生える。

まるで恩を仇で返したようで、本当に嫌だ。気分が悪い。

幸せだけに、どうしても浸れない。


「そういえば、楓は大学決まったの?」


「まだかな」


「え? そろそろ願書ヤバくない? てか、受験勉強は?」


「どこにでも行けるようにはしてる。後は学校を決めるだけって感じだけど」


「行きたいところは? 私立とか国立、文系理系みたいなジャンル分けはしたの?」


「いやぁ、まだ……私はただ、紅葉の側にいられたらそれでいいから」


「紅葉と一生一緒にいたいんでしょ? じゃあもう、国家資格とかそういうのを取るために頑張る専門学校とかにしたら? 通信の大学でもいいし」


「ゆかり詳しいね」


「親の所離れたくて結構必死に色々探してたの」


「そんなゆかりはどこへ?」


「美容師になりたいから、その専門学校」


 ゆかりの両親は美容師をしている。

その後を継ぐ、なんて気はゆかりにはないけれど、色々な人と関わる事ができる仕事をゆかりはしてみたかった。


「私が美容師になったら、今度はちゃんと楓の髪切ってあげるね」


「うん。その時はお願いね」


「でー結局楓はどうするの?」


「あっダメだ、話逸らせなかった」


 楓の将来は不透明で未確定。

だけど、紅葉の為に生きて居たいとそうは思う。

安定した収入と、紅葉が笑って帰ってこられる家があればそれでいい。

それを手に入れる為には、どういう大学や専門学校に行けばいいのだろうか。


「まぁ、もう少し考えてみるよ。時間ないかもだけどさ」


「決まったら教えてね。でーまた会おう? 最近新しくできたカフェがあってさ、そこ行きたくて」


「分かった。ゆかりは今日はもう寝る?」


「うん。また何かあったら連絡するから、楓も言ってね。紅葉の事でも相談載るし」


「紅葉の事で?」


「乙女心ってやつ。喧嘩したりしたら私に相談、って事。楓、そういうの分からなさそうだし」


「あはは……確かに分かんないかもね……」


 時刻は零時を過ぎた頃。

楓は机の上に置いていたココアを飲み、ゆかりは抱きしめていたペンギンをより一層強く抱きしめる。


「じゃあ、お休み。ゆかり」


「うん。お休みー楓」


 そうして二人は電話を切る。

なんでもないこんな日常の小さな話が幸せな事で、二人はこんな幸せを今まで積み重ねてきた。


 ゆかりは思う。

こんな些細な幸せを、紅葉は一生楓と重ねていくんだなと、それがどれほど羨ましくて、どれほど妬ましいことか。


「この幸せ者め……」


 ゆかりは静かに心の中で祝福する。

紅葉に対してじゃない、楓が選んだ選択とその結果を、ただ独り。

波の穏やかな海を見ながら祝福する。


「よかったね。楓」



夜乃月です。

カクヨムに投稿していた作品を、こちらにも投稿しはじめました。

こちらは時系列整理版、としてカクヨムの方で閑話扱いとなっていたエピソードも本編中に含めて投稿いたします。(カクヨム版は完結済)


【カクヨム版URL↓】

https://kakuyomu.jp/works/16817330650740228152/episodes/16817330651176221868

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