35 ≪アダバナモミジ≫
信頼に尊敬が芽生え、不安が注がれ、安堵を浴びる。
いつからか、その花は「愛」を「好き」を、自分勝手に咲かせる様になってしまった。
いつ、そんな感情に変わったのか。
きっと初めから、こんな感情だったのかもしれない。
そう思えるほどに、わたしの心臓は今。
そう思えるほどに、わたしの心は今。
そう思えるほどに、わたしの思考は今。
貴方に、支配されてしまっている。
恋愛映画の主人公みたいな、そんなロマンティックはどこにもないのかもしれない。
でも、あの日、あの時。
わたしに傘を差してくれた。
自分勝手に同情してくれた。
貴方のおかげでわたしは、生きている。
あの日、あの時。
笑顔で「またね」をくれた貴方のおかげで、わたしはまだ頑張れる。
背の高いビルが囲う街で見たカエデやモミジはあまりにもつまらなくて。
でも、そんなつまらないものが枯れて落ちる景色はあまりにも儚くて。
「会いたいな……早く、会えないかな」
貴方を思って、胸が痛む。
何度も何度も説得された。
何度も何度も謝罪を続け、何度も何度も懇願する。
「徒花楓さんを、わたしのマネージャーにしてください」
と、そう何度も。
復帰の兆し、というのは毎日見えている。
でも、わたしと楓さんの二人で、という未来がいつになっても現実の話として見えてこない。
母はずっと、わたしの事を思って「楓の事は諦めろ」なんて言う。
でも、諦められる訳がない。
「だって『またね』って言ってくれたから……あの日、楓はそう言ってくれたから」
その言葉を信じて、わたしは明日を待つ。
明日を、望む。
輝かしい街を歩き、わたしはふとジュエリーショップの前で足を止める。
そこには綺麗な指輪やアクセサリーが煌びやかに並んでいる。
とても子供が買える物には見えず、だけどわたしはそれに強く惹かれる。
「楓さんに……」
これを、楓さんにつけてほしいと夢を見る。
「婚約指輪……結婚指輪……アイビーの……指輪」
もうすぐクリスマスか、なんてことを思いながら、楓にそんなものを渡せるはずがないとジュエリーショップをあとにする。
街中はネオンで輝き、大きなクリスマスツリーが堂々と立っている。
冬の風はとても冷たいのに、街中に施された飾りやライトアップ、様々な色で光輝く木々のせいで、とても冷たい、寒い、なんて思えない。
「早く……会いたいな」
好き、って言えないかもしれない。
好き、って思ってもらえないかもしれない。
好き、って感じてくれないかもしれない。
好き、を知らないかもしれない。
だから、この気持ちはぜんぶぜんぶ、わたし一人の勝手な、ほんとうに自分勝手な想いなのかもしれない。
だけど、それでも。
紅葉は一人、ベッドの中で考える。
今、夜空に浮かんでいるこの美しい月を二人で見る事ができてない現実を、どうしても楓の事を認めない母を、どう説得すればいいのか。
いや、母親が納得する必要なんてない。
事務所が納得して、楓を認めればいいだけの話。
「説得……楓さんの側にいたいという、この想いを、言葉に変えて、他の誰かに伝えるなんて、そんなの……」
二人だけの愛を、永遠にしたい。
一日でも早く。
「できる事は全部、全力でする……誰がなんて言ったってどうでもいい……」
だってわたしが楓さんの側にいたいのだから。
それ以上の理由なんてない。
わたしがただ楓さんを求めているだけのこと。
「認めてくれないのなら、一生かけてでも認めてもらうから……わたしは、絶対に諦めたりなんてしないから」
あの日「またね」と言ってくれた楓を、わたしは信じる。
あの日わたしに同情してくれた楓を、わたしは信じる。
たったそれだけのわたしの為に母を説得しようとしてくれた、わたしの事を突き放さなかった楓さんを、裏切りたくない。
そして、あわよくばこれが恋になってほしいしい。
永遠の、愛になってほしい。
そして二人でどんな困難も乗り越えて、二人で生き、死に、そんな夢を見させてほしい。
「楓さん……」
夜はより一層深まるばかりで、時計の小さな音が耳を刺激する。
もう寝よう、なんて思っても焦りや不安が、紅葉を襲う。
もうすぐ、クリスマス。
その日までには、楓に会いたいな、と紅葉は思って目を閉じる。
そうして紅葉は、この夜を絶つ。
紅葉の想いは、日に日に増し、強くなるばかりだった。
夜乃月です。
カクヨムに投稿していた作品を、こちらにも投稿しはじめました。
こちらは時系列整理版、としてカクヨムの方で閑話扱いとなっていたエピソードも本編中に含めて投稿いたします。(カクヨム版は完結済)
【カクヨム版URL↓】
https://kakuyomu.jp/works/16817330650740228152/episodes/16817330650827919179




