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【百合】やがて愛あるBouquetを知る二人。≪時系列整理版≫  作者: 夜乃月 ≪ヨルノツキ≫
≪ chapter4 Sweet pea ≫
22/76

21 ≪ヤブランを抱える少女達≫


 姫メ乃猫についての話はまだ憶測の域を出ず。

様々な人や、ずっと好きだったファン、何の関係もない野次馬などが勝手に盛り上がっている状況のまま、停滞していた。


「そういえば、お母さんと連絡とれたの?」


「えぇ、一応は……ただその、だいぶ……そうとう……結構……中々に怒っているみたいで」


「私の事は話した?」


「頼りになって信用できる女性の所にいるとだけ」


「でも?」


「ええ、怒られました……けれど、わたしの事を心配しているというよりは、わたしのせいで迷惑をかけた方々について心配している。といった印象でしたね」


「これからの仕事についてか」


「そういうことです」


 これからの仕事はどうするんだ、決まっていたドラマの撮影はどうするんだ、舞台はどうするんだ、ライブはどうするんだ、と母は言っていた。

それ以外に特別な事は何もなく、ユリに対する心配の言葉なんてある訳もない。

むしろ心配以上の罵倒がユリには降り注いだ。


「帰りたくはないんでしょ?」


「今の状態で帰っても何もいい事はないでしょうから」


 いつか帰らなければいけないと、そう分かっていてもユリはそんな気にはなれず。

まだ楓の側で考えて居たいと、現状維持を続けて居たいと、膝を抱えて、深く悩む。


 そんなユリの中には、まだ疑問があった。


「そういえば、楓さんはアイドルを見たことがあるんですか?」


それはゆかりが言っていた言葉の真実だ。


「アイドルくらい見たことあると思うけど」


「そうじゃなくて……その、印象に残るというか、思い出に残るアイドル……みたいなのを、見たことはないですかって、聞いているんです……」


ユリも少しムキになる。

どうしてもその言葉の真実が知りたくて、どうしてもそのアイドルが知りたくて。


 それに、あんな状態だった楓が元気になって、またこうやって笑える理由が、そのアイドルにあるのなら。

やっぱりわたしは、知りたい。


「印象に残るようなアイドル、か……」


 テレビを見ない、だから当然ドラマもアニメもバラエティー番組もニュース番組も見る事はない。

特別好きな何かがあって、だからその人達に会うためにチケットを取って遠出をして、なんて事も一切しない。


「そんな私が、覚えているアイドル……」


 どこかで、見た記憶がある。

何もかも、照明もお客さんも全てが眩しくない。

本当に何一つとして輝いているものはなく、ただ一つそこに何かがあるとすれば、それは舞台に立って一生懸命に踊っている女の子。

輝いている、というよりも必死だった。

必死に舞台に、ダンスに、歌に、しがみついていた。

その子が誰だったのか、あまりよく思い出せない。


「楓さん?」


「ううん……なんでもないの」


 あの頃の事は、あまり思い出したくない。

思い出したって、何一ついい事なんてないし、思い出したところで、今更何か変わる訳じゃない。

ただ私が、強ければよかっただけの話。

ただ私が、命を奪ってでも生きる覚悟をしていればよかっただけの話。


「ごめんユリ、あんまり昔の事は聞かないでほしくて」


「ごめんなさい……その、気になってしまって」


「いいよいいよ。何も話せない私が悪いんだから」


「そんな事はないんですけど……」


 私の過去なんて誰かに話して喜んでもらえる様なものじゃない。

だからずっと隠していよう。

ひた隠しにして、それでユリが何も知らなければ、きっとそれが一番幸せな事のはずだから。


夜乃月です。

カクヨムに投稿していた作品を、こちらにも投稿しはじめました。

こちらは時系列整理版、としてカクヨムの方で閑話扱いとなっていたエピソードも本編中に含めて投稿いたします。(カクヨム版は完結済)


【カクヨム版URL↓】

https://kakuyomu.jp/works/16817330650740228152/episodes/16817330650790510214

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