第二章6 湯冷め
「相変わらず立派なものをぶら下げているわね」
「おう、春乃もビビったくらいだからな」
紗希はジッと俺のブツに熱い視線を注いでいた。
「なんというのかしら、ここまで立派だと全く卑猥に感じないから不思議よね」
「俺のモノはアートの領域に片足……いや、先っちょを突っ込んでいるからな」
「……下品よ」
「俺のチンコを凝視している奴に言われたくないわな……つか上がるからそこ退いてくれ」
紗希は視線を下に固定したまま動く様子を見せない。
「おい、聞いてるか?」
「さっきの質問にまだ答えてないでしょ。本当に売女の所へ行くつもりなのかしら?」
ようやっと俺のモノから顔を上げ、暗い炎を幻視させる異様な輝きでもって俺を凝視していた。
「まぁ、そりゃあ龍くんの頼みだし。てか、今更そんなことで何キレかけてんだ?」
「……あいつだけはやめて。七海とあの売女がそういう風にならないと分かっていても我慢できないほど不快なのよ」
「変なやっちゃなぁ。春乃の時は平然としてたくせに」
「春乃はいいの。春乃はね……何なら他の子でも構わない。あいつ以外なら」
「どんだけメアリのことが嫌いなんだよ」
普段は俺の意向に難癖つけない紗希が、いくらメアリが絡んでいるとは言え、ここまで拒絶反応を示していることに訝しんだ。
しかし、いくら考えても根が変態であるこいつの思考を推測するなんぞ時間の無駄であることには変わりなく、俺はそっと考えるのを止めた。
「とは言っても、龍くんの頼みは断れないし、何よりメアリの職場も気になるっちゃ気になるし。お前がいくら駄々捏ねたとしても予定に変更はねーぜよ」
「…………ふーん。そう」
今までの粘りがなんだったのかツッコミたくなるくらい淡白な反応。
紗希は踵を返して、浴室から出ていった。
俺は虚を突かれた恰好で、フルチンのまま呆然としていたが、湯冷めに体がブルっと震えたのを機に、さっさと浴室から上がり、タオルで体を拭いた。
リビングに顔を出すと、既に紗希の姿はなく、ラップされた生姜焼きがポツンと机に置かれているばかりだった。




