第二章 4 予約
「こちらunder age」
数回のコール音の後、些か警戒の色を含んだ低い男の声で名乗りが聞こえた。
「あ、予約をお願いしたいんですけど」
「……」
俺の声に反応はなく、男の息遣いが電話越しに伝わった。
「登録されてない電話番号からだけど、どこでうちを知ったの?」
「紹介で知りました」
「誰からの紹介?」
俺は龍くんが書いてくれたメモに、高島からの紹介で電話したと伝えるように書いてあったことを思い出した。
「高島からの紹介で電話しました」
「高島……」
男はしばしの沈黙の後
「あー!高島様のご紹介ですね。いつもお世話になっております!」
声色を一変させて、阿るような態度になった。
しかし、いつもお世話になっておりますとは、高島は恐らく偽名だろう、龍くんはこの会員制風俗に足繁く通っているということだろうか。
あのオラつき具合で風俗狂いだったらクソダセェなと笑いそうになり、今度会った時に煽ってみようと思った。
「お名前頂戴してよろしいでしょうか?」
「えっと、鈴木です」
咄嗟に丸の苗字で登録してしまったが問題ないだろう。
なんなら会員制の風俗に出入りが出来るようになったと喜ぶかもしれないしな。
分からんけど。
「鈴木様ですね。かしこまりました。いつのご来店予定でございますか?」
「えっと、アメリさんを指名したいので、アメリさんがいる日であればいつでも」
「ははあ〜ん。うちのNO.1ですか。流石高島様のご紹介。お目が高いですねぇ。確認致しますので少々お待ちください」
保留音が流れ、俺はスマホを耳に当てたまま駅近のロータリーの隅に寄って、壁に背中を預けた。
しかし、性に奔放なやつだとは思っていたが、あの年で既に風俗嬢として活動しているメアリを考えた時、彼女の人生に興味が湧いてきた。
単純にセックスが好きなのだろうか?それとも家庭の事情だろうか?生きるためか?学費のためか?色々な疑問が浮かび上がっては消えていき、募る興味に身震いしたところで、保留音が切り替わった。
「お待たせ致しました。アメリでございましたら明後日の20時が空いております。いかがなさいますか?」
「それじゃあ、明後日の20時でお願いします」
「承りました。明後日の20時にご予約ということで、必ず10分前にはお越し頂くようお願い致します」
「分かりました」
「それと……」
唾を飲み込んだ音が聞こえたかと思うと、この通話で一番の猫撫で声で
「くれぐれも高島様によろしくお伝えくださいませ」
と言った。
「……はい、分かりました」
俺は風俗の店員にここまで平身低頭させる龍くんの風俗狂いっぷりに慄きながら電話を切った。
色々な興味が煽られる中、ひとまず明日龍くんに無事予約が取れたことと、電話口の応対は男だったことを伝えるべく反芻しながら改札をくぐったのだった。




