第二章 2 高っか
「お前、一回メアリとヤッてきてくんねーか?」
大真面目な面でぶっこみ発言をかます龍くん。
話の経緯が全く見えないまま、俺は無理ですと色々な意味で正直に答えた。
龍くんはやっぱりノッてこないかと微笑を湛えて、電子タバコの電源を入れた。
「言い方が悪かったな。あいつの職場に客として行ってきてくれねーか?」
「はぁ……あの……最初からそう言ってくれません?」
「変わんねーからわかりやすい方で言ったんだけどな」
「それはどういう……?」
俺の疑問に返事をしないまま、龍くんは卓上にあるメモとペンを取って、サラサラと文字を走らせる。
どこかの住所を書き終えると、財布から名刺を取り出し、セットで俺に渡してきた。
「名刺に電話番号書いてあるだろ?」
「はい」
「ここに電話して、男が出るか女が出るか確認してくれ」
「……確認するだけでいいんですか?」
「確認したあと、料金の話になるだろうから、全て問題ないと答えとけ」
「う、うっす」
「んで、誰を指名するか聞かれるだろうから、アメリと間違いなく答えるんだぞ」
「メアリじゃないんですか?」
「逆にメアリと答えたらお前のミッションは失敗。死刑確定な」
「そんなにすっか……」
「したら覆面調査がパーだからな」
電子タバコの独特な香りを漂わせながら遠い目をしている。
「覆面調査なら俺が行ったら不味いんじゃないんですか?メアリがいるなら絶対に一発でバレるだろうし」
「いや、入り口だけ男か女か分かればいいんだよ。方針も決めやすいしな」
「つまりどういうことですか?」
俺は全貌が分からないことに関して、段々と興味をそそられ、龍くんが何を企んでいるのか気になってきた。
過去の経験からして、こういった画策をする時には決まって、ど派手なドンパチを展開してくれると知っているからである。
しかし、予想通り龍くんは表情を変えずにお前はまだ知らない方が楽しめるよという言葉と共に、ニヤリと笑って俺の背中を叩いた。
「まぁ、分かりました。言われた通りやってみます」
「おう、頼んだわ」
俺の承諾を取り付けると、龍くんは財布から万札を10枚俺に渡してくれた。
「釣りは取っといていいぞ」
「いや、別にこんないらないっすよ」
「馬鹿野郎。殆ど調査で無くなるからお前の懐にはちょっとも残らねーよ」
「……マジ?」
俺の驚愕を他所に、龍くんは今日の夜までには電話をして予約を取るように念を押され、俺は分かりましたと二つ返事で頷いたのだった。




