第2章 1 テスト明け
ゴールデンウィークが明け、あっという間に中間試験を迎えた。
俺と紗希と春乃の3人は、テスト期間中俺の家に集まって勉強会を開いては、各々成績を高める為に毎日数時間勉学に勤しんだ。
先生役は紗希が担当した。
分からない箇所があれば紗希に質問し、修正しながらテスト範囲を復習していく。
俺と春乃は共に数学の理解度が甘く、つまづく所も似通っていた為、よく雁首を揃えて紗希の解説に耳を傾けていた。
勉強がひと段落つくと、紗希と春乃は台所に立ち、夕飯を作ってくれた。
春乃は勉強のみならず料理の方も紗希を師事していて、包丁遣いや調味料の配分を熱心にメモしていた。
俺はその姿を眺めながら改めて紗希のハイスペックさと難ある性格に、やはり天は二物を与えないのだなと頷いていたが、存外楽しそうに春乃と会話をする姿を見ていると、俺以外に気安い相手が出来たことに対して感慨深くなったのだった。
テスト期間中は、ゴールデンウィークの激務を終えた父さんも夕飯時には帰宅するようになり、美少女の春乃が新しく食卓を囲むようになったのが嬉しいのか、常時よりテンション高めに会話を回し、テストが終わったら焼肉に行こうとはしゃいでいた。
春乃も俺の父親のウェルカムな態度にニコニコしながら相槌をうち、時たま紗希と目線を交わしてはクスクスと笑い合っている。
俺と春乃は別れたからといって別段気まずくなったわけでもなく、むしろ付き合っていた頃よりも接しやすくなったように感じ、春乃も現状はそれで満足しているようだった。
中間試験が終わると、俺と春乃は休んでいたバイト先に復帰して、二人で開店前の準備を終わらせては、龍くん達が来るまで春乃はベースの自主練を、俺は春乃の演奏を聴いていたり、本を読んだりと時間を潰していた。
基本的には龍くんと湊さんが出勤すると忙しくなるまで3人は練習し、その間は俺一人で店を回す。
忙しくなると春乃達も業務に加わって店の切り盛りをする。
そこに週2.3で丸も練習に顔を出し、忙しくなるとニチャニチャした笑いを浮かべて
「おいビール!」
と急ピッチで飲み干しながら注文をしたり
「おい出前!」
と店のサービスとしてウーバーイーツへの注文代行を頼んだりと邪魔をしてくる。
俺と龍君と湊さんは慣れたもので丸を無視していたが、春乃だけは最初のうち、律儀にお客様だからと丸の要求に答えていた。
しかし、丸の扱いに慣れてくると、俺達の邪魔が目的である注文を受け
「鈴木くん、自分でやって」
と呆れたため息と共に、軽くあしらえるようになるくらいにはバンド仲を深めていた。
春乃が練習がてら弾いてた曲が終わると、タイミングよく龍くんが店に入ってきた。
「はよす」
「おはようございます」
「おう」
龍くんはバックヤードに荷物を置くと、ポケットから紙切れを春乃に渡した。
「悪いんだけど、そこにメモってあるドリンク買ってきてもらえる?」
「買い出しっすか?俺が行きますよ」
「お前には別の仕事があるんだわ。ちょっと重いかもしれないけど一人で大丈夫?」
メモを一通り見た春乃は腕まくりの仕草をしながら
「まかせてください!」
と意気揚々に店を出て行った。
春乃がいなくなるのを確認した龍くんは煙草に火をつけて俺に向き合った。
「んで、俺の仕事ってなんすか?」
「ん?ああ……」
龍くんにしては珍しく、言葉を濁しながら思案気に煙を燻らしていたが、しばらくして煙草をもみ消しながら口を開いた。
「前に言ってたメアリのことなんだが」
「……メアリ?」
そういえば、メアリのことを気にしてくれと言われていたなと思い出し、龍くんの言葉に耳を傾けた。




