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ヤンデレの時代は終わりだ!!!  作者: 松岡由樹
第一章 千枝春乃
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第一章 79 気分転換


時間が早いのもあり、客はまだ誰も来店していなかった。

カウンターには湊さんがビールを飲みながらスマホを弄り、龍くんはその隣で煙草を燻らせている。

俺はいつもの光景に妙な懐かしさを覚えながら二人に挨拶をした。


湊さんは俺に続いて店に入ってきた春乃と背負っているベースを発見すると、目を爛々と輝かせた。


「サボりの七海と……春乃ちゃん!!」


目の前にいた俺をうっちゃり、春乃と肩を組む湊さん。

春乃は恐縮した様子で、首を縮こめている。


「……こ、こんにちわ」


「いやん!そんな緊張しないで!私と春乃ちゃんの仲じゃない!」


いつの間にか親密な人間としてカウントされている春乃はやはり対応に困ったようだったが、先日のライブの感動があった為か、嬉しそうな顔をしていた。


「あ、あの、この前の湊さんの歌、凄く良かったです!」


「おー!可愛い子ちゃんに褒められるとテンション爆上がりしちゃうな!」


湊さんは恐縮しっぱなしの春乃をカウンターに座らせ、珍しく客人にドリンクを作ってあげていた。


「ほい!特製湊ジュース!私がシェイカーを振るうのは珍しいことだからね!ありがたく飲みたまへー!」


「バーテンとしてどーなんすかそれ」


冷凍フルーツをふんだんに使ったノンアルサングリアを春乃の前に置いた。


「凄く綺麗」


春乃はストローに口をつけると、目をキラキラさせた。


「美味しい……!」


「でしょでしょ?私のお気に入りドリンクの一つだよ。まぁ、いつもはビールばっかりだから滅多に飲まないけどね」


湊さんは頬杖をつきながら美味しそうにジュースを飲んでいる春乃を柔らかな笑みを浮かべ、眺めていた。


「連絡なしで休んでたけど、二人でどっか行ってたのか?」


無断欠勤自体はどうでも良さそうに、煙草の火を消しながら龍くんが俺を見た。


「いや、まぁ、春乃に監禁されていまして」


「………ごほっ!」


ジュースが気管にでも詰まったのか、むせながらそれを言うかという表情で俺を見る春乃。


「……あぁそう。それなら仕方ないな」


「そうです。仕方なかったんです」


龍くんの淡白な反応に春乃は目を見開いたが、俺と龍くんを交互に比べ、なぜか納得したように脱力した。


「春乃ちゃん、七海を監禁してたんだぁ……もしかして男の趣味悪い?」


「…………そうかもしれないです」


「おい」


失礼な二人に一応ツッコミを入れておく。

自覚があったとしても悪口を直接言われるのは我慢がならないものである。


撫然とした俺の顔を指差し、湊さんはゲラゲラ笑い、春乃もそれに釣られて、クスクスと笑い始めた。


俺は久しぶりに春乃の笑顔を見たような気がした。

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