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ヤンデレの時代は終わりだ!!!  作者: 松岡由樹
第一章 千枝春乃
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第一章 77 時に現実は想像を超える

「しかし父親があんな感じだと、マシマシで母親も気になってくるわ」


あの女の血が云々と嘯いていたからには、相当に嫌悪している対象であるのは間違いない。

何故あそこまで蔑視するに至ったのか、どうして結婚したのか、そもそも母親はどういった人間性なのか興味が尽きない。


俺は父親に続いて母親も登場しないかと期待に胸を膨らませ、修羅場を特等席で見学出来るのなら監禁生活を続けるのも案外悪くない選択肢だなと思った。


お腹を抑えながら床にオデコを当てて泣き崩れていた春乃も、ようやっと発作が収まったのか、しゃっくり混じりに目元を手の甲で拭って立ち上がる。


春乃はBGMとして空間を支配していた音楽を止め、拘束されている俺の隣に腰を下ろすと、ポケットから鍵を取り出して、俺の拘束を解き始めた。


「お?いいのか?」


「………………」


無言で手錠と足枷を取り外す春乃。

俺は数日振りの自由にぐっと伸びをして体のコリをほぐした。


「でもいきなりどうしたんだ?ずっと監禁しとくつもりじゃなかったのか?」


春乃は俺の質問には答えないまま、ベッドの傍らに佇み、充血した瞳で俺を見ている。

頬には涙の跡、髪の毛は乱れて毛先が所々跳ねており、額はうっすらと赤みがかっていた。


俺と春乃は無言で互いを見つめ合った。

春乃は何かを悟ったように瞼を閉じると、一筋の涙が、あたかも感情を模倣したかの如く、自然に頬をつたう。

そして、死を受け入れた人の浮かべる、穏やかな笑みを湛えて、Tシャツとスウェットを脱いだ。


白すぎるくらいの肌と水色の下着が露わになり、苦悩の残り香が漂う面と合わさって、堕落的な美しさを醸していた。


春乃はゆっくりとこちらに近づき、そのまま俺の唇を塞いで、ベッドに押し倒した。


「逃げてもいいからね」


春乃は唇を離して、悲痛な笑みをそのままにポツリと呟く。


俺は唇の熱と共に春乃の感情を受け取った。


結合と分離。拒絶と受諾。幸福と絶望。

希望に期待をかけながら脳裏を過ぎる喪失への恐怖。


春乃は自己完結を捨てて、俺という人間に受け入れられるかもしれないという一縷の望みをかけて、自身の処女を捧げようとしていた。


君の決意に羨望を。

君の勇気に賞賛を。

君の魂に祝福。


……あゝ。しかし君の望みは達せられないだろう。


君が高まるほどに俺は低くなり、

君が進むほどに俺は後退し、

君が熱するほどに俺は冷めていく。


だが、それでも、俺と君が共有するものが確かにあるのだ。


それは、快楽である。

快楽という絶対的な観念である。

俺は君の感情を舐り、君は俺の肉体を味わい給え。


そうして、達せぬという快楽が二人の中で共有された時、俺と君は本当の意味での友になるのだ。


春乃は俺のシャツとスウェットを脱がし、体に舌を這わせ、パンツに手をかけた。


春乃はペタン座りで俺の目を凝視した。

見つめ合うことで魂が溶け合うと信じているかのように凝視した。


春乃は息を呑んで俺の身を包む、最後の布切れを剥がした。


ーーーところで、俺は巨根である。


それも、ちと周りでは類の見ないほどの巨根である。もしかしたら黒人とタメを張れるのではないかというくらいの巨根である。

どんなに玄人な女が相手でも、初見ではビックリさせる自信があるくらいの巨根である。


つまり、男性経験の無い、ましてや父親との関係が薄い春乃にとって、ちんちんの知識といえば、保健の教科書程度の知識で止まっているはずだ。


そんな生娘が男性のモノを初めて見る……どころか空想上の生き物、オークのような凶悪なモノを見た時の反応たるや。


春乃は俺のモノを見た瞬間、完全にフリーズし、ついで、ブルブルと震えながら背中から床に転げ落ちた。


「な、な、な、な、ナニコレー!!!!!!!!!!!!」


「なにこれってナニだよこれ?」


「エっ!?うそ!?こ、こんなに大きいの!!!!?」


春乃は勢いよく立ち上がり、パニックで自失状態のまま、俺から今までにないくらいに素早く距離をとった。


「無理無理無理無理無理無理無理」


春乃は部屋の隅に体を寄せて、初めて見る俺のナニに恐れ慄いていた。


俺はそのリアクションがあまりにも面白かったので、悪戯心がわき、両手を大きく広げながら獲物を追い詰める快楽殺人者のようにジリジリと近寄った。


「や、やだ!!来ないで!!」


「おいおい〜どうしたんだぁ?俺と初体験を済ますんじゃなかったのか〜?」


「絶対無理!そんなの、入るわけがないよ!!」


「あんな悲壮感溢れるくらいに決意を固めてたじゃな〜い。俺はやる気満々だぜぇ〜」


「断固拒否します!!!!本当に無理だから来ないでください!!!」


「……そんなに拒絶されると落ち込むな」


俺は立ち止まってわざとシュンとした顔を作った。


春乃は幾分、冷静さを取り戻したのか、気まずそうな表情になる。


「あ……ご、ごめんね七海くん。あ、あの七海くんが嫌とかではなく、思った以上にその……あの……」


「春乃」


「な、なにかなー?」


「勃起って知ってるか?」


「ぼっ……こ、コホン。知ってるよ。七海くんの、その、今の状態でしょ?」


「あのな」


「う、うん」


「これ実はな」


「ご……ゴクリ」


「まだ勃起していないんだ」


「…………………………………え?」


「ちなみに勃起したら2倍になる」


「………………………………ほぇ?」


春乃はキョトンとした表情を浮かべたまま、顎にいいパンチを当てられたボクサーのようにストンと崩れ落ちる。


春乃は気絶した。

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